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#救助」の前に。

関谷直也東京大学大学院情報学環総合防災情報研究センター准教授
(ペイレスイメージズ/アフロ)

最近、災害になると「#救助」がニュースに取り上げられます。

ツイッター社では

「110番、119番に電話がかけられない場合、ツイートすることが可能であれば、Twitterを救助要請の通信手段として利用することもできます」としています。そして、

「1.具体的に状況を説明してツイート(例:場所、氏名、人数、状態、要請内容等)」

「2.できれば、ハッシュタグ #救助 をつける」

「3.位置情報をつけるとより正確な通報が可能」

として、救助要請をみつけた側は、

「1.できればTwitterで被災者と連絡をとって状況確認」

「2.代理で電話で119などに救助要請をする」

としています。

https://support.twitter.com/articles/20170080

しかしながら、下記の点をぜひ覚えておいてください。

(1)生命にかかわる緊急を要する通報はまずは119番をしてください

  • 携帯電話やスマートフォンが使える場合、通常の電話がつながりにく状況になったとしても(「通信の輻輳」が発生しても)、119番、110番は輻輳の規制対象外ですので、まずは119番をかけてください。もともと、119番、110番のような緊急通報を行うために通常の通話を規制しているのですから、まずは119番、110番をかけてください。固定電話、携帯電話への通常の電話が通じず、SNSやメールなどが使える場合は輻輳による通話規制の状態だったとしても119番、110番の緊急通報はかかります。
  • GPS機能をONにすると 位置情報(緯度・経度)が通知されるので、消防本部が位置を把握しやすくなります。救助要請の際には、GPS機能をONに。GPS機能が無効またはGPS機能なしの携帯だと、3基地以上の基地局から位置を算出するので位置の誤差が大きくなります(参考:http://www.ishikarihokubu.jp/119nokakekata/keitai119.nitsuite/keitai119.nitsuite.html
  • 基地局が停電、故障による不通の場合は、通話できないだけでなくSNSやメールなど通信も通じません。
  • 災害が大規模になればすぐに救助はきません。災害時の救助は、平時と異なり優先順位がありますし、救助に携わる人も限られています。重病、大怪我の場合はきちんと伝えることも必要ですし、そうでないならば救助を待つことも必要です。

(2)携帯電話、スマートフォン以外の方法も試してください

  • 119番、110番へは、公衆電話が「災害時優先電話」に準じ、最もつながりやすいので、公衆電話を探すのも一つの方法です。
  • 現在は、携帯電話よりも固定電話(IP電話を除く)の方がつながります。携帯電話は他事業者などとの接続の際に通る「関門交換機」というものを経由しますが、NTTの固定電話の場合はこれがないため、よりつながりやすくなります。

(3)Twitterによる「#救助」が有効な場合とは

  • Twitterによる「#救助」が有効なのは、携帯の通話・データ通信が使えず、固定電話の電話も使えない場合で、wifiもしくは、有線の光回線などのみが利用可能な場合に限られます。

(4)そもそも119番、110番などもふくめて緊急通報が意味を持つ場合とは

  • 救急車や消防車などの数、救助側の人員にも限りがあり、平時でも救急車は足りません(東京では1400万人の人口に対して338台しか救急車はありません)。ですので、都市圏など人口の多いところで起こる大規模災害の場合は119番、110番から連絡しても救助できる人数が限られていますので、自分たちで何とかするしかありません。普段から、それを前提に災害に備えておく(軽い傷病は自分たちでなんとかする、まずは自力で消火する、自分たちで救助する)必要があります。

最後の手段としての「#救助」の前に、自分自身、家族の身を守るためには、まず何をすればよいか、覚えておきましょう。

東京大学大学院情報学環総合防災情報研究センター准教授

慶應義塾大学総合政策学部卒。東京大学大学院人文社会系研究科博士課程、東京大学助手、東洋大学准教授(広告・PR論)、東京大学大学院情報学環総合防災情報研究センター特任准教授を経て現職。専門は災害情報論、社会心理学、環境メディア論。避難行動や風評被害など自然災害や原子力事故における心理や社会的影響について研究。東京電力福島原子力発電所における事故調査・検証委員会(政府事故調)政策・技術調査参事、内閣官房東日本大震災対応総括室「東京電力福島第一原子力発電所事故における避難実態調査委員会」委員、などを歴任。著作に『風評被害―そのメカニズムを考える』、『災害の社会心理』。

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