ボールを支配しながら好機が作れない

 2勝2敗で迎えたカタールW杯アジア最終予選第5戦。森保ジャパンは、グループ最下位のベトナムとアウェーで対戦し、0-1で勝利を収めた。

 試合後、キャプテン吉田麻也が「勝ち点3は最低限の課題だったので、クリアできてほっとしています」と語ったように、グループ4位の日本は何とか最低ノルマをクリア。この試合の後に行われた中国対オマーンが1-1のドローで終わったため、第5節終了時点の成績では日本がオマーンと入れ替わり、グループ3位に浮上することとなった。

 ただし、日本が自力で2位以上を確保して本大会にストレートインするためには、依然として1位サウジアラビアと2位オーストラリアとの直接対決で勝たなければならないという状況は変わらない。

 しかも、その両国に得失点差4点を離されていることを考えると、大量ゴールを奪う絶好のチャンスだったベトナム戦を最小得点で終えたことは、後々の痛手となりかねない。その意味では、決してポジティブな勝利とは言えなかった。

 では、なぜ森保ジャパンは5試合で11失点を喫しているベトナムから1ゴールしか奪えなかったのか。なぜ66.9%のボール支配率がありながら、シュートを13本(枠内5本)しか記録できなかったのか。

 今回のベトナム戦を掘り下げてみると、得点力不足の根本的な原因が、前回オーストラリア戦で初めて採用した森保ジャパンのプランD、つまり中盤に3人のボランチを配置する4-3-3にあることが浮き彫りになる。

 まず、この試合で森保監督がチョイスしたスタメンは、そのオーストラリア戦とほぼ同じ。唯一の変更は、負傷欠場の右SB酒井宏樹に代わって山根視来が抜てきされたことだった。

 GK権田修一、4バックは右から山根、吉田麻也、冨安健洋、長友佑都。中盤3枚は、中央に遠藤航、右に田中碧、左に守田英正、そして前線は大迫勇也を1トップに、右に伊東純也、左に南野拓実という11人だ。

 対するベトナムの布陣は、予想通りの5-3-2。

 11月のホームでの2連戦(日本戦、サウジアラビア戦)に向けて国内合宿を張った韓国人パク・ハンソ監督は、「日本には力のある選手が多く、ボールを握られる時間が長くなると思うが、勝ち点を獲得するために最善を尽くす」と前日にコメントするなど、万全の準備で日本に挑んだ。

中央ルートの攻撃が激減した理由

 森保一監督がこの試合で再び4-3-3を採用した背景には、ヨーロッパ組11人の移動でトラブルが発生し、彼らの到着が試合2日前の深夜になったのも影響した。

 実際、全体で練習できたのが試合前日の公式練習1時間しかない状況のなか、森保監督は「選手を変えると絵(イメージ)を合わせるのが難しい」と判断し、右サイドバック(SB)山根視来以外は前戦と変わらぬメンバーで同じ布陣を採用したと語っている。

 いずれにしても、前回のオーストラリア戦で露呈した攻撃面のデメリットが、この試合でも同じ現象として表れた。その象徴が、これまで森保ジャパンの調子のバロメーターとなっていた敵陣でのクサビの縦パスの激減だ。

 この試合で日本が記録した縦パスは、前半がわずか3本(成功1本)で、ボール支配率が上がった後半も5本のみ(成功3本)。しかも、成功4本のなかで敵陣深い位置、つまりアタッキングゾーンで記録したのは、田中碧が遠藤航からの縦パスを受けた前半23分のシーンだけだった。

 それ以外の3本は、いずれもレシーバー(パスの受け手)がミドルゾーンに下がって受けたものである(縦パスの受け手は南野拓実2回、大迫勇也1回)。

 ポストプレーありきの大迫を1トップで起用しながらこの状態では、中央に起点を作れないうえ、攻撃の縦の深みも作りづらい。これは、約3年間かけて積み上げてきた4-2-3-1では起こり得なかった低い数字であり、前回オーストラリア戦でも見られた現象だ。

 4-2-3-1と4-3-3の大きな違いは、前線に配置されるアタッカーの人数だ。さらに、この試合では相手のベトナムが5-3-2を採用していたため、相手が4バックだったオーストラリア戦以上に、縦パスを入れるのが難しい状況が生まれていた。

 ベトナムは、大迫には5バック中央の3番がつき、中央に絞ってくる南野に対しては2番、伊東純也には4番がそれぞれマーク。伊東が大外に立って幅をとる場合には、4番が空けたスペースを主に左ウイングバックの7番が埋めるなどして対応した。

 また、5バックの前には、日本の中盤と同数の3人のMFがパスコースを遮るため、南野や大迫は相手MFの前方まで下がってボールを受けるしかない。縦パスが少なく、受ける場所が低くなった主な原因はそこにあった。

サイドからのクロスは中央が人数不足

 中央ルートを封じられた日本としては、両サイドのルートから攻めるしかない。それによって相手の守備網を広げられれば、少しは中央にスペースも空くはず。ところが、ベトナムが5バックだったことで、サイド攻撃も活性化できなかった。

 日本が前半に記録したクロスボールはわずか5本と、前回オーストラリア戦の10本から半減。後半は、63分の2枚代え(左SB長友佑都→中山雄太、左ウイング南野→浅野拓磨)以降に8本を記録して13本に増加したが、逆に成功数は前半の3本から1本に減少。

 トータル本数はオーストラリア戦の21本から23本に微増したものの、相手の実力の違いを考えれば、この試合で日本のサイド攻撃が機能したとは言い難い。

 これはオーストラリア戦でも露呈した問題だが、中央で起点を作れないままサイドを素早く突破してクロスを入れても、ゴール前の人数が足りないという現象が起こってしまうからだ。

 たとえば右から伊東がクロスを入れる場合、ゴール前に進入するのは1トップの大迫だけ、もしくは中央に絞ってプレーする時間が長い南野を加えた2人しか間に合わない。少し時間をかければ田中や守田英正が相手ボックス内に到達できる可能性もあるが、その時にはすでに相手の守備陣がゴール前でしっかり構えている。

 前半アディショナルタイム49分。日本は伊東のクロスに対して5人が相手ボックス内に飛び込むシーンを1度だけ作った。

 惜しくも守田に届かずフィニッシュには至らなかったが、GK権田修一を起点に始まったその攻撃は、田中が左サイドまで動いて同じレーンの前方に立つ守田にボールをつなげたあと、南野、遠藤を経由して素早く右の伊東に展開したもの。唯一と言ってもいい効果的な速攻だった。

 しかしながら、それ以外に同じような狙いの攻撃が見られなかった点から考えると、選手のアドリブによる攻撃だったと見て間違いない。そもそも田中が左サイドまで動いて守田と同じレーンに入ること自体が稀なプレーであり、残念ながら再現性は低い。

攻撃に多くの問題を抱える4-3-3

 結局、この試合で日本が作った決定機は、決勝点につながった前半17分以外では、立ち上がり6分の南野のシュート(田中の右からのクロス)シーンと、後半アディショナルタイム91分に古橋亨梧が素早く入れたクロスに浅野のヘッドがわずかに届かなかったシーンのみ。

 VARでオフサイドと判定された前半40分のシーンは、布陣や戦術に関係なく、あくまでも伊東が単独突破から放ったシュートだった。

 たとえば、もし日本の布陣が4-2-3-1であれば、状況は違った可能性は高い。中央最前線に大迫が張り、トップ下の選手が相手5バックとMFの間でパスコースを作る位置に立てば、南野と伊東も含めて計4人がターゲットとなり得る。

 両SBに幅をとらせて、ダブルボランチを中心に左右にボールを振って、相手の中盤3人を繰り返しスライドさせれば、縦パスを打ち込むチャンスはぐっと高まるからだ。中央ルートをこじ開ければ、自ずと両サイドのルートを活性化させることもできる。

 しかし、窮地に追い込まれたオーストラリア戦から、4-2-3-1時にボランチでプレーする3人を中盤に配置する4-3-3を採用し続けた結果、それまで掲げてきた攻撃コンセプトも崩壊。

 結果的に、自分で自分の首を絞める恰好となってしまった。少なくとも、オーストラリア相手ならまだしも、大量ゴールを狙いたいベトナム相手に攻撃の駒を減らした布陣を採用したことは、マイナスに作用した。

 仮に4-3-3で攻撃的に戦いたいなら、中盤の人選を変える必要があった。ただし、その選択をする場合、中盤センターにピボーテを配置するスペイン型、日本で言うなら川崎フロンターレ型に舵を切らねばならず、それはコンセプト自体の変更を意味する。

 親善試合を組めないなか、それはかなりハードルの高い作業になる。

 果たして、布陣が変わっても我々のコンセプトは変わらないと言い続けてきた森保監督は、新布陣によって生まれた攻撃面の問題をどのように受け止めているのか。これら問題を解決しない限り、4-3-3で攻撃を組織的に機能させることは難しいだろう。

(集英社 Web Sportiva 11月14日掲載・加筆訂正)