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「(Aチーム+Bチーム)÷2」。戦力底上げのための理想形は?【タジキスタン戦出場選手採点&寸評】

中山淳サッカージャーナリスト/フットボールライフ・ゼロ発行人
(写真:森田直樹/アフロスポーツ)

結果を残したフレッシュな戦力

「誰が(試合に)出ても上手く連係できるのが理想ですが、相手の強度も高く、全体練習を一度こなしただけでパーフェクトに合わせることは難しいと想定していました。その中で、クオリティを上げようと選手たちが粘り強くやってくれました」

 タジキスタンに4-1で勝利した試合後の会見でそう振り返ったのは、森保監督だ。

 主力の一部がU-24代表に合流し、さらに負傷中の大迫もスタンド観戦になったこともあり、この試合のスタメンにはこれまで出場機会が少なかった選手やキャップ数の少ないフレッシュな選手が多く名を連ねた。

 1トップで起用された浅野も含めれば、11人中7人がそれにあたる。特に最終ラインの4枚はこれまでになかった組み合わせで、そういう意味では2次予選で初失点を喫したことも、特筆すべきことではない。森保監督が「想定内」と語ったのも頷ける。

 それよりも、フル出場した中、初ゴールを決めた古橋と川辺、あるいはアシストを含む3ゴールに絡んだ山根、初先発フル出場で及第点のプレーを見せた中谷など、代表経験の浅い選手たちが結果を残したことを、ポジティブな材料として注目すべきだろう。

 その一方で、気になる点もある。それは、2次予選突破を決めた後に「これからは色々トライできる」と語っていた森保監督が、結局、蓋を開けて見ればAチームとBチームに分けるかたちで、選手に経験を積ませようとしている点だ。

 今回スタメンを飾った7人は、レギュラー獲得を狙うバックアッパーの前段階、つまり招集メンバーの当落線上に位置する選手だ。確かにこの試合のパフォーマンスによってバックアッパーたちを脅かす存在になりつつあることは間違いないが、レギュラーを狙うためには、本当の意味での実戦経験がまだ足りないというのが現状だ。

「(今後は)いつ不測の事態が起こるか分かりませんので、選手層に厚みを持たせ、その時々に合ったベストな選手を選んで勝利をつかみ取っていくということは、非常に大切なことだと思っています」

 試合後、そうも語っていた森保監督だが、この試合を見て分かる通り、スタメンの大半がフレッシュなメンバーでは、戦術をそれなりのレベルで機能させるのは至難の業。個人としての経験は積めたかもしれないが、彼らが主力メンバーとの関係性を深め、「不測の事態」に適応するためのプレー環境だったとは言い難いものがある。

 理想は、AチームとBチームを分けるのではなく、Aチームの中に数人のフレッシュな選手をミックスするチーム編成だ。

 このタジキスタン戦でベンチを温めた選手の中には、室屋、長友、鎌田、伊東といった常連組がいた。その半分とフレッシュな選手の半分を入れ替えて、AとBの中間チームのような編成で試合を戦う方が、フレッシュな選手たちにとってはより大きな経験値を手にできたのではないだろうか。

 もちろんそのためには、5月28日からの5連戦の初戦から、そのようなチーム編成の方針をとる必要があるので、もはや今回のシリーズで残されたセルビア戦とキルギス戦で、それを望むことは難しい。

 時計の針は戻せないが、フレッシュなメンバーが予想以上に躍動した試合を目の当たりにして、そこだけが残念に思う。

※以下、出場選手の採点と寸評(採点は10点満点で、平均点は6.0点)

【GK】権田修一=6.0点

プレー機会は少なかったが、安定したプレーを見せた。相手の唯一のシュートが決まり、歴代最長となる連続無失点記録が9でストップ。ただ、GKとしてはノーチャンスの失点。

【右SB】山根視来=6.5点

失点の場面では一瞬の隙を突かれて競り負けたが、攻撃面ではアシストを含め3得点に絡むなど持ち味を発揮した。デビュー戦と比べるとポジショニングの部分で改善が見られた。

【右CB】中谷進之介=6.0点

代表初スタメン出場だったにもかかわらず、最後まで落ち着いたプレーを見せた。対人の強さ、ポジショニングは及第点だったが、フィードの部分はもう少し積極性がほしかった。

【左CB】昌子源=6.0点

特に大きなミスもなく、無難にプレー。ただ、フィードなど攻撃の起点としては物足りなさが残った。故障前のパフォーマンスと比べると、まだ完全に復調したとは言えない。

【左SB】佐々木翔(62分途中交代)=5.5点

左ウイングの原口とのコンビネーションがかみ合わず、攻撃参加の部分で空回りしていた印象。テクニカルなミスも散見され、今回も所属クラブとは異なるポジションで苦戦した。

【右ボランチ】橋本拳人(68分途中交代)=6.5点

後半51分に坂元のクロスを右足でゴール左隅に流し込み、代表初ゴールをマーク。ロシアでの成果が見えた。川辺との関係性も含め、攻撃の起点となるプレーは改善の余地あり。

【左ボランチ】川辺駿=6.5点

代表初スタメンで、後半70分には初ゴールを記録するなど存在感を示した。ラスト15分は左ウイングの位置でプレー。細かいミスはあったものの、上々のパフォーマンスだった。

【右ウイング】古橋亨梧=6.5点

前戦では1トップ下で窮屈そうだったが、右ウイングに入って生き生きとプレー。1ゴール1アシストの活躍を見せた。失点のきっかけとなったボールロストはいただけなかった。

【左ウイング】原口元気(HT途中交代)=5.5点

左ウイングでスタメン出場し、キャプテンマークを巻いた。ただ、プレー内容は低調で、決定的な仕事をできずに前半だけで退いた。格下相手の試合では特徴が出難い現象が続く。

【トップ下】南野拓実(HT途中交代)=6.5点

前半40分にW杯予選7試合連続ゴールを記録。本田圭佑の記録に並んだ。ただし、序盤は相手のマークも影響し、ライン間でパスを受けられず、攻撃にかかわる回数が少なかった。

【CF】浅野拓磨(74分途中交代)=5.5点

大迫が負傷欠場したこともあり1トップで先発したが、日本が押し込む状況では役割を遂行できず。前線で埋もれてしまうシーンが多く、サイドに流れるなど工夫が必要だった。

【MF】鎌田大地(HT途中出場)=6.0点

南野に代わって途中出場し、1トップ下でプレー。ボールをもらって周りを生かすプレーは相変わらずのクオリティだったが、決定的な仕事はできず。メンタルが少し乱れた場面も。

【MF】坂元達裕(HT途中出場)=5.5点

原口に代わって途中出場し、右ウイングでプレー。決定的な仕事はなかったが、デビュー戦と比べると見せ場が増えた印象。次はさらに周囲とのコンビネーションを深められるか。

【DF】小川諒也(62分途中出場)=5.5点

佐々木に代わって途中出場し、右サイドバックでプレー。出場時間の問題もあったかもしれないが、攻撃参加をする場面は少な目だった。守備面では不安定さを見せたシーンも。

【MF】守田英正(68分途中出場)=6.0点

橋本に代わって後半から途中出場し、ボランチでプレーした。最初は川辺と、ラスト15分は谷口とコンビを組んだ。積極的にシュートを狙うなど、意識の高いプレーを見せた。

【DF】谷口彰悟(74分途中出場)=5.5点

浅野に代わって途中出場し、ボランチでプレー。U-24日本代表戦に続いて慣れないポジションでのプレーを強いられたが、特に大きなミスもなく与えられた任務は遂行した。

サッカージャーナリスト/フットボールライフ・ゼロ発行人

1970年生まれ、山梨県甲府市出身。明治学院大学国際学部卒業後、「ワールドサッカーグラフィック」誌編集部に入り、編集長を経て2005年に独立。紙・WEB媒体に寄稿する他、CS放送のサッカー番組に出演する。雑誌、書籍、WEBなどを制作する有限会社アルマンド代表。同社が発行する「フットボールライフ・ゼロ」の編集発行人でもある。

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