今、絶対に見逃せないスーパーデュオ! 無双の領域に突入したネイマール&エムバペが作り出す魅惑の世界

年々進化を続ける名コンビ、パリSGのネイマールとエムバペ(写真:代表撮影/ロイター/アフロ)

現代に誕生した新アタックコンビ

 サッカー界には、歴史に残る名アタックコンビが数多く存在する。

 古くはレアル・マドリードのアルフレッド・ディ・ステファノ&フェレンツェ・プスカシュ、あるいはリバプールの黄金期に輝きを放ったイアン・ラッシュ&ケニー・ダルグリッシュ。

 近年では、マンチェスター・ユナイテッドのアンディ・コール&ドワイト・ヨークに、アーセナルのティエリ・アンリ&デニス・ベルカンプ、そしてバルセロナのリオネル・メッシ&ルイス・スアレス……。

 期間は限られていたものの、代表チームではブラジルの“RORO”コンビ、ロナウド&ロマーリオが強烈なインパクトを残して世界中のサッカーファンに夢を与えてくれた。

 そして今、また新しい異次元のデュオが、サッカー界を席巻している。

 チャンピオンズリーグ準々決勝で、昨シーズンの王者バイエルン・ミュンヘンを打ち負かしたパリ・サンジェルマンのアタックコンビ、“ネイ”ことネイマール・ジュニア&“キキ”ことキリアン・エムバペである。

ネイにインスパイアされたキキ

 2人がフランスの首都に合流したのは、今から4年前の2017年夏のこと。その時、カタール資本のクラブが2人の獲得に投資した金額は、ネイマールに史上最高額の推定2億2000万ユーロ(約290億円)、買い取り条件付きのローンで加入したエムバペに1億8000万ユーロ(約235億円)。2人合わせると、実に4億ユーロにも及んだ。

 もちろん、ネイマールの実力とエムバペの将来性に疑いの余地はなかったが、それでも加入当初は、本当に2人が投資した金額に見合った活躍をするか否かは、十分に議論の余地があった。

 ところが、後にネイマールが振り返っているように、2人は会った瞬間から波長が合うことをお互いが認識。当時まだ18歳だったエムバペは、すでに世界指折りのスター選手だったネイマールを兄のように慕い、逆にネイマールはエムバペのポテンシャルを即座に見抜き、良き相棒として弟のように可愛がった。

 相乗効果が最初に現れたのは、エムバペの方だった。

 もともと規格外のスピードとドリブルテクニックに秀でていたエムバペだったが、ネイマールが見せる独特のラテン系リズムとボールテクニックに感化されると、それを積極的に吸収。狭い局面を打開するための発想、ボールテクニック、ショートパスの使い方など、モナコ時代にはなかった武器を身につけてプレーバリエーションを増やしていった。

 ウナイ・エメリ監督が率いていたそのシーズン、ネイマールはリーグ戦で19ゴール13アシスト、エムバペは13ゴール7アシストを記録。28ゴールでチーム内得点王となったエディンソン・カバーニと合わせると、3人で計60ゴールを量産し、いわゆる“MCN”トリオの活躍を原動力として、リーグタイトル奪回に成功した。

 ただし、ネイマールのフランス国内での評価は、活躍のわりには芳しくなかったのも事実。相手のファウルに対する過剰なアピールや、どこかフランスサッカーを見下しているような言動などが、主な原因だった。

ネイの失墜を救ったキキの計らい

 そして2018年の夏、エムバペがフランス代表としてワールドカップ優勝の原動力となる活躍を見せると、世間の注目は、ネイマールから“ワンダーボーイ”エムバペに集中。そのエムバペも、そのシーズンにトーマス・トゥヘル新監督の下で劇的な成長を遂げて33ゴールをマーク。得点王と年間MVPをダブル受賞した。

 一方のネイマールは、リーグ戦の出場がわずか17試合。15ゴール7アシストを記録したものの、2年連続してシーズン後半戦に右足中足骨を痛めて長期の戦線離脱を強いられるなど、フラストレーションに満ちたシーズンを送る羽目となった。

 そんな中、主役の座を失いかけたネイマールは、2019年夏にバルセロナ復帰を決意。結局、世間を騒がせたその移籍劇は実現せずに終わったが、当然ながらパリ・サポーターが“裏切り者”を許すことはなく、ホームスタジアムでも背番号10番に大ブーイングを浴びせた。

 しかし、そんな総スカン状態の兄を救ったのがエムバペだった。

 ネイマールのパリ残留が決まると、対外的に喜びと歓迎のコメントを積極的に発信すると同時に、チームの輪の中にネイマールを迎え入れ、居場所を確保。すると、ネイマールも弟の粋な計らいにすっかりハートを撃ち抜かれ、2人の絆はそれまで以上に強いものとなっていく。

 すでにピッチ上では阿吽の呼吸でコンビプレーを連発していた2人だったが、デュオ結成3年目の19-20シーズンには、試合の要所で“2人の世界”を作り出し、相手の守備網を次々と破壊。チームメイトでさえも予測不能な変幻自在のコンビプレーで、チームを勝利に導くようになったのである。

 結局、新型コロナウイルス(COVID-19)のパンデミックにより、シーズンが打ち切りとなってしまったが、エムバペは18ゴール5アシストを記録して2年連続の得点王を獲得して連覇に貢献。ネイマールも13ゴール6アシストをマークした。

 そして、そのシーズン最大のトピックは、カタール資本になってから初めてチャンピオンズリーグベスト8を突破し、クラブ史上初めて決勝の舞台に立ったことだった。

 すると、負傷の影響でトップフォームではなかったエムバペに対し、ファイナル8でのネイマールは10番として大活躍。改めてパリ・サンジェルマンの主役であることを証明した。

 ピッチ外でも、ネイマールはいつもチームの中心にいた。アタランタ、ライプツィヒを撃破する中、勝利の度にネイマールを中心に歓喜の輪が出来上がり、過去のパリ・サンジェルマンでは見たことのないような“団結”が生まれたのである。

また進化を遂げたスーパーデュオ

 そして今シーズン、2人の関係にまた変化が見え始めている。ネイマールのエムバペに対する接し方の中に、弟分ではなく、対等なパートナーとして、よりリスペクトするような言動、振る舞いが目立ち始めているのだ。

 たとえばバイエルンとの準々決勝第1戦。それまで入場の際に列の最後尾で“しんがり”を務めていたネイマールは、1つ前に繰り上がり、入れ替わるように最後尾をエムバペに譲るようになったことが、そのひとつ。まるで、パリでチャンピオンズリーグを制するためには、エムバペの活躍をサポートすることが近道であり、自分の使命でもある、と言わんばかりに。

 結成4年目を迎えたスーパーデュオ、ネイマール&キキ・エムバペ。

 ネイマールがエムバペのサポートに救われて現在のチーム内ポジションを確立できた一方、おそらくネイマールとの出会いがなければ、エムバペの驚異的進化も成し得なかったはず。エムバペも、そのことを十分に理解しているから、ネイマールへのリスペクトは揺るぎない。

 バイエルンとの第2戦では、2人のパス交換がチーム最高の15本を記録するなど、“2人の世界”はいよいよ無双の領域に足を踏み入れた印象だ。2人が同時にピッチに立った過去83試合を見ても、ネイマールはエムバペのアシストで18ゴールを記録し、エムバペもネイマールのアシストから同じく18ゴールを量産中だ。

 相手が自陣に引きこもることが多い国内戦では狭い局面の打開で、強豪がひしめくチャンピオンズリーグでは速く美しいカウンターアタックで、2人にしか出来ない魅惑のフットボールを表現する。

 おそらく、過去の名アタックコンビと異なるのは、紆余曲折を経た2人がプレー以外の部分でも強い絆で結ばれていて、同じ物語を共同作業で紡いでいることだろう。

 そういう意味でも、後に振り返った時、“ネイ&キキ”がサッカー史上最高のデュオと評される可能性は高い。

 現地4月28日にパリで予定されるチャンピオンズリーグ準決勝第1戦、対マンチェスター・シティ戦。昨シーズンのリベンジを果たすための一歩をまた踏み出すパリ・サンジェルマンが誇るスーパーデュオは、果たしてどんな“2人の世界”を作り出してくれるのか。

 今から、胸の高鳴りが止まらない――。