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タジキスタン戦で森保ジャパンが苦戦した根本的な原因【タジキスタン戦出場選手採点&寸評】

中山淳サッカージャーナリスト/フットボールライフ・ゼロ発行人
(写真:森田直樹/アフロスポーツ)

勝ち点3以外の収穫はゼロ

 W杯予選のアウェイ戦で0-3の勝利は、申し分のない結果。日本とタジキスタンとの実力差を考えれば、驚きもない。

 ただ、内容はどうだったのかと言えば、一方的に相手陣内で攻撃を繰り返したホームでのモンゴル戦と比べると、明らかに悪かった。

 その原因はタジキスタンの健闘にあったのか。それとも日本のパフォーマンスの悪さにあったのか。この試合を評価するうえで、その視点は欠かせない。

 ホームのタジキスタンは、確かに地元の声援を受けて試合開始からアグレッシブにプレーした。しかし本来であれば、実力で勝る日本は冷静に対処し、彼らの前への勢いをいなし、ボールをキープすることで試合の流れをつかむべきだった。

 ところが、この試合の日本は相手の勢いにのみ込まれ、無理なパスを引っかけてしまい、プレッシャーを感じる中でのトラップもキックも不安定だった。足の動きも鈍く、躍動感なし。インテンシティもタジキスタンに劣っていた。

 それもそのはずだ。

 多くの選手がヨーロッパから遥々日本に帰ってきて、格下のモンゴルと対戦。集中力とエネルギーを使ってホームで圧倒的な強さを見せた後、再び10時間以上のフライトを経てタジキスタンに移動したのだから、それを維持しろというのが無理な話だ。

 とりわけ、経験豊富な吉田や長友にとって、タジキスタン相手にモチベーションを上げるのは至難の業。力半分でも結果を手にする術を身につけているうえ、省エネで勝ち点3を獲得し、早く所属クラブでの試合に備えなければ立場が危うくなることも理解している。

 それでも、しっかりと勝ち点3を積み上げ、最低限の仕事は遂行することができる。アジア2次予選で対戦する相手と日本の実力差を考えれば、予想通りのこと。仮にスコアが0-1の勝利で終わったとしても、大きな問題にもなり得ない。

 そして、畠中、橋本、永井を除く20人は、出番があった者もなかった者も、それぞれヨーロッパに舞い戻る。

 今回の予選2試合で彼らが得たものは何だったのか? 勝ち点3以外にないとすれば、あまりにも効率が悪い。プラスかマイナスかで言えば、明らかにマイナスだ。

 指揮官は、ベストメンバーを組まなければ本当にこの2次予選を勝ち上がれないのかどうか、もう一度よく考えた方がいい。

 現在の日本と、モンゴルやタジキスタンとの間にどれほどの差があるのか。国内の若手や、代表経験の浅いヨーロッパでプレーする選手でメンバーを編成した場合、本当に日本は2次予選を突破できないのか。

 ギラギラした選手がアグレッシブにプレーしたタジキスタンに苦戦した原因を、指揮官はどのように分析するのか。根本的な問題が、そこには潜んでいる。

 2次予選はあと5試合。来年6月まで続く。常にベストメンバーで戦うことの弊害は、ますます顕著になっている。

※以下、出場選手の採点と寸評(採点は10点満点で、平均点は6.0点)

【GK】権田修一=6.5点

ここ2試合はプレー機会が少なかったものの、この試合ではシュートストップを連発。安定したパフォーマンスを見せた。代表戦4試合連続スタメン出場で、序列が上がった。

【右SB】酒井宏樹=6.5点

堂安が空けたスペースを上手く使って攻撃参加。後半56分に南野のゴールを、後半82分には浅野のゴールを右からの絶妙なクロスでアシスト。自らの武器を結果につなげた。

【右CB】植田直通=6.0点

冨安がモンゴル戦の負傷で離脱したため、吉田とのコンビでスタメン出場。相手にやられたシーンもあったが、全体的には及第点。格下相手とはいえ、対人能力の高さを見せた。

【左CB】吉田麻也=5.5点

疲労のためか、いつもに比べるとプレー強度が低く、緩慢な守備で裏を取られるシーンも。セットプレーでは得意のヘディングで相手ゴールを脅かしたが、ゴールには至らなかった。

【左SB】長友佑都=5.5点

モンゴル戦と違って攻撃参加が少なく、守備中心の無難なプレーに終始。物足りなさを感じさせた。中島とのコンビネーションも少なく、右サイドと比べて工夫が少なかった。

【右ボランチ】橋本拳人=6.0点

ボールロストからピンチを招くシーンもあったが、試合を重ねるごとに柴崎との連携が良くなっている。現状、遠藤とのポジション争いでは一歩リードしていることは間違いない。

【左ボランチ】柴崎岳=6.0点

前半は意図したプレーができずにいたが、後半はパス回しの中心となって南野の2点目の起点となるなど、日本の攻撃のリズムを作った。決定的な仕事ができなかったのが残念。

【右ウイング】堂安律=5.5点

ハーフスペースを使ってモンゴル戦で活躍した伊東との違いを見せたが、シュート精度の甘さなど、満足のいくパフォーマンスはできなかった。焦る気持ちがプレーに出ていた。

【左ウイング】中島翔哉(63分途中交代)=6.0点

相手のマークに苦しめられ、ドリブル突破を図ってもロストする場面が目立ったが、後半53分には抜群のクロスで南野の先制ゴールをアシスト。63分に浅野と代わって退いた。

【トップ下】南野拓実(87分途中出場)=7.0点

ゴールチャンスをいくつか逃したが、後半53分、56分と、短時間で連続ゴールを決めた。Aマッチ4試合連続ゴールを決め、カズの記録に並んだ。この試合のMOM的活躍ぶり。

【CF】鎌田大地(80分途中交代)=5.5点

モンゴル戦のゴールで自信をつけ、1トップでスタメン出場。前半は存在感を示せず埋もれていたが、トップ下に移った後半に蘇った印象。しかし決定的な仕事をできずに終わった。

【FW】浅野拓磨(63分途中出場)=6.0点

中島に代わって左ウイングで途中出場。チャンスシーンでシュートをミスするシーンが続いたが、後半82分に酒井からのクロスをヘッドで合わせて、ダメ押しゴールを決めた。

【FW】永井謙佑(80分途中出場)=採点なし

後半80分に鎌田に代わって途中出場。前線でプレーした。プレー時間が短く採点不能。

【MF】久保建英(87分途中出場)=採点なし

後半87分に南野に代わって途中出場。流動的ながらトップ下でプレーした。プレー時間が短く採点不能。

サッカージャーナリスト/フットボールライフ・ゼロ発行人

1970年生まれ、山梨県甲府市出身。明治学院大学国際学部卒業後、「ワールドサッカーグラフィック」誌編集部に入り、編集長を経て2005年に独立。紙・WEB媒体に寄稿する他、CS放送のサッカー番組に出演する。雑誌、書籍、WEBなどを制作する有限会社アルマンド代表。同社が発行する「フットボールライフ・ゼロ」の編集発行人でもある。

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