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ベストメンバーで戦い続けることの弊害は想像以上に大きい【モンゴル戦出場選手採点&寸評】

中山淳サッカージャーナリスト/フットボールライフ・ゼロ発行人
(写真:森田直樹/アフロスポーツ)

完勝したにもかかわらず喜べない理由

 予想通り、ほぼベストメンバーでモンゴル戦に臨んだ森保ジャパンが、これまた予想通りに完勝した。

 スコアは6-0。ボールポゼッションは日本の70%に対して、モンゴルは30%。シュート数は日本が32本で、モンゴルは0本。ついでに言えば、コーナーキックの本数も日本の17本に対して、モンゴルは0本だった。

 確かに日本にとっては申し分のない内容と結果だった。

 しかし、だからといってこの試合の日本をそのまま評価するのはいかがなものか。むしろ、評価の対象外の試合だったとするのが妥当だろう。

「どんな相手に対してもベストを尽くす」。これが森保ジャパンのモットーのひとつだとすれば、この手の試合が今後も続くことは避けられそうにない。繰り返しになるが、だからこそ先月のミャンマー戦後と同じ不安がよぎってしまうのだ。

 たとえば、この試合でスタメン出場を果たした伊東は、3アシストを記録するなど申し分のないパフォーマンスを見せてくれた。それはそれで素晴らしいことだ。

 しかし、これで伊東が自信を深めることができたかと言えば、そうとは言えない。モンゴルのようなレベルの相手にこのようなパフォーマンスを見せることができても、アジア最終予選、もしくはW杯本大会で同じことができる保障はないからだ。

 むしろ、伊東にとっては所属クラブで経験しているチャンピオンズリーグでのパフォーマンスの方が数段重要なはず。それを考えると、モンゴル戦でプレーしたこと自体が、今の彼にとってマイナスになってしまわないかと心配になってしまう。

 それほど、チャンピオンズリーグとモンゴル戦の間には果てしないレベル差がある。両者でプレーする感覚の違い、そのギャップは、マイナス面にしか作用しないと思われる。

 しかもこの試合の冨安のように、6-0で大量リードしているなかで負傷してしまっては元も子もない。単なるアンラッキーでは片づけられない問題としてとらえたほうがいい。

 アジア2次予選は、あと6試合もある。この6試合を、このままの調子でベストメンバーで戦い続けることの弊害は想像以上に大きい。

 仮に最後の1~2試合が消化試合になったとして、そこで大幅にメンバーを変更して新戦力の発掘を試みようとしても、試合環境的には練習試合に近いため、最終予選につながる戦力の台頭や成長は望めない。

 むしろ、相手のレベルは低くとも、緊張感のある中で行われる2次予選突破前の試合にこそ、真の新戦力発掘のチャンスがあるはず。その数少ない機会を逃そうとしている森保監督の采配を見るにつけ、モンゴルに大勝したことを手放しで喜ぶこと自体に無理がある。

 指揮官の考え方が変わらない以上、おそらくこのまま固定メンバーでW杯最終予選を戦い続けることになるだろう。10月15日、次のアウェイでのタジキスタン戦では、負傷者が出ないことだけを願う。

※以下、出場選手の採点と寸評(採点は10点満点で、平均点は6.0点)

【GK】権田修一=6.0点

9月のW杯2次予選初戦のミャンマー戦に続いてスタメン出場。その時は相手のシュートが1本(実質的には0本)だったが、今回は0本。プレー機会がほとんどなかった。

【右SB】酒井宏樹(57分途中交代)=6.0点

伊東とのコンビネーションも上々で、何度も右サイドからチャンスを作った。後半57分に足首を痛めて退いたが、それまでのパフォーマンス自体は合格点だった。

【右CB】冨安健洋=6.0点

守備機会は少なかったが、序盤から積極的にビルドアップに絡み、セットプレー時には惜しいシュートもあった。試合終了間際に負傷交代したことは不幸としか言いようがない。

【左CB】吉田麻也=6.5点

常に最後尾にポジションをとって危なげないプレーを見せた。ビルドアップの起点にもなっていたうえ、前半29分にはコーナーキックのチャンスからヘディングシュートを決めた。

【左SB】長友佑都=6.5点

左サイドから何度もクロスボールを入れたが、アシストはならなかった。しかし前半33分に伊東のクロスに対してゴール前に進入し、自身10年ぶりとなるゴールを決めた。

【右ボランチ】遠藤航=6.5点

後半56分にラッキーなかたちで代表初ゴールをマーク。後半82分には自らのミドルシュートから鎌田のゴールが生まれた。とにかく所属クラブでの定位置確保が最優先事項か。

【左ボランチ】柴崎岳=6.0点

ボランチでコンビを組んだ遠藤の位置を常に確認しながら、バランスをとったポジショニングを維持した。黒子に徹したのか、決定的な仕事はできずに終わった。

【右ウイング】伊東純也=7.0点

相手がモンゴルとはいえ、この試合ではMOM級の大活躍。自らネットを揺らすことはできなかったが、精度の高い右足クロスから3アシストを記録したのは見事のひと言。

【左ウイング】中島翔哉=6.0点

全体的に悪いパフォーマンスではなかったが、決定的な仕事をできずに終わった。チームが完勝したので及第点の出来と言えるものの、個人としては物足りなさを感じさせた。

【トップ下】南野拓実(61分途中交代)=6.5点

前線を縦横無尽に走り回り、相手ディフェンス陣を混乱させた。前半22分には大事な先制ゴールを決め、その後の展開を楽にさせた。永井とのコンビネーションは改善の余地あり。

【CF】永井謙佑(70分途中交代)=6.5点

引いて守る相手ディフェンス陣に対してスピードを生かせない中、流れて受けるなど工夫を見せた。前半40分にゴールを決め、後半47分にもクロスボールで決定機を演出した。

【DF】安西幸輝(57分途中出場)=6.0点

酒井の負傷により緊急出場。インナーラップの動きで右ウイングの伊東と絡むなど、センスの良さを見せた。決定的な仕事ができるようになればスタメンを狙える可能性もある。

【FW】鎌田大地(61分途中出場)=6.5点

途中出場を果たし、永井と2トップを形成。2人のコンビネーションは少なかったが、後半82分には3キャップ目で代表初ゴールをマークした。大型FWとしての期待を膨らませた。

【MF】原口元気(70分途中出場)=6.0点

後半70分に永井に代わって途中出場。展開的には原口が必要な場面ではなかっただけに、試合会場が古巣浦和レッズのホームスタジアムということでの出場だったと思われる。

サッカージャーナリスト/フットボールライフ・ゼロ発行人

1970年生まれ、山梨県甲府市出身。明治学院大学国際学部卒業後、「ワールドサッカーグラフィック」誌編集部に入り、編集長を経て2005年に独立。紙・WEB媒体に寄稿する他、CS放送のサッカー番組に出演する。雑誌、書籍、WEBなどを制作する有限会社アルマンド代表。同社が発行する「フットボールライフ・ゼロ」の編集発行人でもある。

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