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インフル 、胃腸炎…子どもの病気の多さに衝撃・産後の働き方を考える

なかのかおりジャーナリスト(福祉・医療・労働)、早稲田大研究所招聘研究員
子どもが保育園で発熱し、保護者が駆けつける機会は多い(写真:アフロ)

学校や保育園で、病気が流行しています。「姉妹そろってインフルエンザになった」「水ぼうそうの子がいる」…。校内で学級閉鎖の話を聞くと、親は子どものケアと仕事のやりくりを考えて、戦々恐々。最近は、季節を問わず病気が流行りますし、予防接種をしても、かかる時はかかるもの。保育園に入ったばかりの乳幼児はさらに病気が多く、ある日突然に発熱します。子どもの病気について、親も周囲の人も知っておきたい具体例をお伝えします。

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毎月、子どもが病気にー理解ある人ばかりではない

会社勤めをしていたころ、娘が1歳になってすぐに育休から復帰しました。保育園に入ると、次々と病気がやってきて、「子どもの病気が、こんなに多いなんて知らなかった」というのが正直な気持ちでした。子どもは保育園でいろいろな病気をもらい、免疫をつけます。初めて子育てする親が知らないのと同じで、職場の人も、こうした実態を知らない場合が少なくありません。

子どもの発熱や体調不良は、周りの人が「また?」「本当なの」と疑っても仕方ないぐらい、多いのです。娘が1~3歳のときは、月に1回は何かの病気にかかり、月に何回か病気したときもありました。年に5日の看護休暇はすぐなくなるし、有給休暇も使い切り。有休の残りを数えるのも、初めての体験でした。

子どもの熱は、いったん出ると、1日では終わりません。下がったり上がったり、1週間ぐらい不調が続きます。熱があれば、保育園に行けません。発熱して呼び出され、すぐに迎えに行かないと、子どもがかわいそうなだけではなく、保護者の責任が問われます。

さらに、うつる病気の場合、熱が下がって元気になっても、「登園停止」の日数が決まっています。この期間、出かけられずもてあます子どものケアに、保護者は苦心します。権利を主張するわけでもなく、保護者の気分で休ませるわけでもなく、やむを得ないのですね。

「休んでも許される」は甘い?ー万能ではないが必要な病児保育

筆者は育休中、自治体の助成がある病児保育室に行って、登録はしました。そのときは「熱があるのに、わざわざ預けに来るの?」「仕事を休んでも、仕方ないよね…」と思っていました。手続きした看護師さんに「子どもの熱は、3~4日は続く。何日も続けて仕事を休めないから、預けに来る人が多い」と説明されても、実感がわきませんでした。

4月に保育園に入って「慣らし保育」をした後、さっそく子どもの看病と仕事の両方をしなければならない大変さを経験しました。慣れない生活のせいか、娘は毎晩のようにせきこんで吐いていました。泣く娘をなだめ、布団と服をきれいにして、寝かせて、片付け。授乳もしていたし、寝不足で会社へ行きました。

夏は夏風邪ー病気は冬だけじゃないと心得る

夏は夏風邪です。娘が1歳の夏、発熱で1週間ぐらい外出できませんでした。どうやっても薬を飲まなくて、焦りました。その2週間後は、週末に自宅で倒れて熱性けいれんを起こしました。見たことのない激しい症状に、救急車のお世話になってしまいました。夏に流行する「手足口病」が原因だったようだと、後でわかりました。

週明け、登録していた病児保育室に初めて連れて行きました。定員が少ないのでなかなか予約が取れず、電話申し込みに当日朝の小児科受診、とやるべきことが多いです。着替えやタオル、ごはん、飲み物、おやつもすべて持参し、記名します。ここは、自宅や会社から微妙な距離にあり、タクシーを使いました。保育室に連れていかれ、初めてのシッターさんに抱っこされ、「ママ、どこに行っちゃうの?」と不安そうにしていた娘の姿は、今でも忘れられません。

職場の雰囲気・慣習は?ーできれば育休中にシミュレーション

子どもの病気が、親にうつるのも知りませんでした。手足口病の娘にべったり付き添い、寝不足で体力が落ちていたとき、自分も高熱が出て手足に発疹が出ました。娘の看護で会社を休んでいるため、これ以上は休めません。手袋とマスクをつけて出勤でした。

そんなとき、上司に「他のワーキングマザーは休まないのに」と言われ、職場の先輩・同僚の様子を聞いてみると、事情が違ったのです。義理の親が近くにいる、遠方から親が駆け付けてくる、夫が都合のつく勤務体制など、何かしらセーフティネットがあるようでした。我が家は、祖父母が高齢・遠方で、何も頼めませんでした。

頼める身内がいない同僚や、歯科医の友人が、とある病児シッターを利用していると聞きました。復職して半年ほどたって、我が家もその病児シッターの団体に入会しました。申し込みに時間がかかり、説明会の参加も義務付けられ、会費や利用料も高いです。当時は助成があったのと、追い詰められていたので、他の選択はありませんでした。

職場によっても、子どもの病気に対する理解は違います。前もって、職場の雰囲気や慣習を知り、家庭の状況を伝えておく。病気時の具体的なシミュレーションをする。そんなことも、育休中にしておくといいかもしれません。急な病気で何か所も連絡する中、職場に伝えても、大人数の組織では、責任者まで伝わっていない、ということもあります。

けいれんで救急車もー治療方針を明確に

娘は1歳クラス最後の日に、保育園で胃腸炎によるけいれんを起こしました。ぐったりする娘を抱えて救急外来へ。筆者もうつって、親子で点滴を受けました。

2歳の夏も、盛りだくさんでした。ある日の午前中、会社にいると保育園から発熱の連絡。急きょ、職場で半日休のお願いをして、クリニックや翌日の病児保育などに連絡しまくり、お迎えに駆けつけました。それから病院、薬局とはしごし、娘が食べられそうな食料を買い込みます。夜になっても具合が悪く、夜間小児科に連れていきました。

このときは、夏風邪のヘルパンギーナでした。治ったかと思ったころ、せきが出る病気になりました。さらに2週間後には、発熱でけいれんが起きて、2度目の救急車。「フルタイム勤務は限界かな。具合悪い時は、ママがいいよね。サポートが病児保育しかなくて、他人に何日も預けたらかわいそうだし…」と救急車の中で考えても、答えは見つかりませんでした。

いくつかの小児科で意見を聞いた上で、すすめられたけいれん止めの薬を、自宅の冷蔵庫と筆者の通勤バッグに常備しました。薬の使い方についても賛否両論がある中で、親が判断しなければなりません。2歳の9月には、2度目のヘルパンギーナで高熱が出ました。けいれんが起きないかドキドキしながら、クリニックを受診して病児保育をお願いし、出勤しました。ところが、夕方に「熱が40度に上がったので、帰ってきてください」と電話があり、また周りに頭を下げて早退です。

(後編に続く。日経DUALに連載した「39歳で初産 私のキャリアどうなっちゃうの?」をもとに再構成)

ジャーナリスト(福祉・医療・労働)、早稲田大研究所招聘研究員

早大参加のデザイン研究所招聘研究員/新聞社に20年余り勤め、主に生活・医療・労働の取材を担当/ノンフィクション「ダンスだいすき!から生まれた奇跡 アンナ先生とラブジャンクスの挑戦」ラグーナ出版/新刊「ルポ 子どもの居場所と学びの変化『コロナ休校ショック2020』で見えた私たちに必要なこと」/報告書「3.11から10年の福島に学ぶレジリエンス」「社会貢献活動における新しいメディアの役割」/家庭訪問子育て支援・ホームスタートの10年『いっしょにいるよ』/論文「障害者の持続可能な就労に関する研究 ドイツ・日本の現場から」早大社会科学研究科/講談社現代ビジネス・ハフポスト等寄稿

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