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「今も答えは出てません」。それでも、相方を失った「青空」岡が前を向く理由

中西正男芸能記者
今の思いを吐露する「青空」の岡友美さん

 相方・須藤理恵さんが5月に急逝した漫才コンビ「青空」の岡友美さん(45)。親交の深い隅田美保さん、「麒麟」田村裕さんとのトークイベントを12月9日に開催します。相方を失い、止まった時間。そして、再び動き出す覚悟。まだ言葉に置き換えることも難しい思いを、少しずつ吐露しました。

今も答えは出ない

 本当のことを言うとね、もう芸人は辞めようと思っていたんです。

 「もうエエかな」と思ってたんですけど、なんかね、相方のお母さんに会いに行ったんですよ。お葬式も終わって、1カ月、2カ月くらい経って7月頃だったと思います。マネージャー経由でお母さんが私としゃべりたいと言ってくださっていると。心配もしてくださっている。それだったらこちらから会いに行こうと思って。

 そこで「辞めたらアカンで」と言われたんです。全くそんな話をしていたわけではなかったのに、お母さんから、唐突に言われました。お母さんもご体調が万全ではない中だったんですけど、しっかりと言われました。その瞬間、なんなんでしょうね、直感的に「辞めるのをやめよう」と思ったんです。

 ただ、そうは思っても、そこからすぐに「よし、今後はこれをやろう!」と気持ちが進むものでもない。それがリアルなところでした。

 芸人を続けることにはしたけど、もう漫才を仕事にすることはありえない。かといって、一人で何をするのか。どうしたらいいのか。相方が亡くなってからずっと考えてきました。そして、今も答えは出てません。ずっと考えたままです。

 ただ、今回、昔から仲の良かった隅田(美保)と話す中で「何かやろうか」という話が出てきて。だったら二人と仲の良いたむちゃん(麒麟・田村裕)も来てもらって三人でしゃべろうかと。これは自分の中で「やりたい」と思えたので、やらせてもらうことにした。そうやってできるものがあれば、一つ一つ、それをやる。それが今の状況です。

「青空」を続ける意味

 正直、気持ちの整理もまだ全然ついてないです。誰かの漫才イベントの告知をSNSで見るのもつらかったり、テレビで漫才を見るのもしんどかったり。

 そう感じる理由、なんなんでしょうね。「もう、私は漫才できないんだ」ということを再認識するしんどさ。これもあるでしょうし、そこにやっぱり悔しさもあるでしょうしね。

 そうやって相方がいないことをドシンと感じることもあるし、相方がこの世にいないという感覚を忘れている時もあるんです。何かの折に「あの人の名前なんやったっけな…。相方に聞こうか。あ、もういてないんか」みたいなこともあります。不思議な感覚でもあるんですけど。

 本当にいきなりだったんでね。相方の訃報が出た時に(死因が)非公表みたいになっていたので、いろいろな憶測が飛び交うことにもなっちゃったんですけど、自らどうこうとかじゃなくて、本当に突然のことだったので、相方も「なんでや」と思っているくらいだと思います。

 ただね、芸人の世界は本当にやさしいなと思います。分かっていたつもりだったんですけど、改めて身に染みて感じました。

 「ライセンス」の井本君とか「ブラックマヨネーズ」の小杉さん、「海原やすよ ともこ」さん、「シンクタンク」さん、ぼんちきよしさん…。本当にみんな、みんな定期的に連絡をくださって。ありがたいことだなと思います。

 自分の中でもね、少しプラスというか、前向きに考えられる時もあって。「もし誰かとコンビを組んだら、今から『M-1』に15回も出られるんか」とかね(笑)。そんな時間も少し出てきてはいます。

 なんかね、須藤って、一回会ったらすぐに友達みたいな感じになるんですよ。人を覚えるのも早いし、スッと仲良くなるし。

 私はそういうことができないので「それ、相手はホンマに友達って思ってるんか?」みたいなこともありましたけど(笑)、今から思うと、それはそれですごいことやったなと。いろいろ話をしてみたかったなと思いますね。

 須藤とは大阪のNSCの17期生として出会い、互いにコンビが同じ時期に解散したので「だったら、組もうか」となったのが始まりでした。

 ゆくゆくはなんばグランド花月で定期的に出番をもらえるようになって、大きなところで単独ライブもできるようになりたい。そんな話をしていました。

 昔ね、松竹芸能さん所属の大先輩「海原はるか・かなた」さんに言っていただいたことがあったんです。お二人はベテランに差し掛かった頃に世に出られたので「続けてたら、絶対にこういう時が来るから。その時まで頑張りや」と言ってくださってたんです。

 「続けていれば、何かにつながる」。この言葉を糧に、二人で頑張っていたところはあります。女性コンビとして、ずっとしっかりと漫才をやっていたら「いつかなんとかなる」。50歳、60歳になったら、ネタの内容と年齢も合ってくるだろうし、とにかく続けよう。そんな話をしてました。

 私一人になったので、コンビとしての活動はもうできませんけど、今回のイベントみたいにありがたいお話があったり、営業で女性一人の司会がいない時に呼んでもらったり。そんなことがあればさせていただこうと思っています。

 「辞めた」と言わない限り続く仕事なので、誰かから「辞めろ」と言われるまでは続けようと今は思っています。私がやっている以上、漫才コンビ「青空」は続く。「青空」が続く以上、相方の存在がなくなることはないですからね。

 …あんまりコンビでアレコレしゃべることってないんですよ。今さら何をしゃべるんだという気恥ずかしさもあるし(笑)。

 でも、いつか自分もあっちの世界に行ったら、コンビとして何をしたかったのか。どこまで行けると思っていたのか。そんなことも話してみたい。今はしみじみそう思います。

(撮影・中西正男)

■岡友美(おか・ともみ)

1977年12月27日生まれ。奈良県出身。NSC大阪校17期生。同期の須藤理恵さんと97年に「青空」を結成する。2008年に結婚し、09年に長男、14年に二男が生まれる。今年5月、須藤さんが45歳で急逝。12月9日には大阪・道頓堀ZAZA POCKET’sで「麒麟」田村裕、隅田美保とのトークイベント「おかちゃん元気?たむちゃん久しぶり!すみちゃん恋してる?」を開催する。

芸能記者

立命館大学卒業後、デイリースポーツに入社。芸能担当となり、お笑い、宝塚歌劇団などを取材。上方漫才大賞など数々の賞レースで審査員も担当。12年に同社を退社し、KOZOクリエイターズに所属する。読売テレビ・中京テレビ「上沼・高田のクギズケ!」、中京テレビ「キャッチ!」、MBSラジオ「松井愛のすこ~し愛して♡」、ABCラジオ「ウラのウラまで浦川です」などに出演中。「Yahoo!オーサーアワード2019」で特別賞を受賞。また「チャートビート」が発表した「2019年で注目を集めた記事100」で世界8位となる。著書に「なぜ、この芸人は売れ続けるのか?」。

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1999年にデイリースポーツ入社以来、芸能取材一筋。2019年にはYahoo!などの連載で約120組にインタビューし“直接話を聞くこと”にこだわってきた筆者が「この目で見た」「この耳で聞いた」話だけを綴るコラムです。最新ニュースの裏側から、どこを探しても絶対に読むことができない芸人さん直送の“楽屋ニュース”まで。友達に耳打ちするように「ここだけの話やで…」とお伝えします。粉骨砕身、300円以上の値打ちをお届けします。

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