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伊地知大樹が明かす「ピスタチオ」解散の真相と今後への思い

中西正男芸能記者
「ピスタチオ」を5月で解散し、今の思いを語る伊地知大樹さん

 2015年に“白目漫才”でブレークしたお笑いコンビ「ピスタチオ」。今年5月、小澤慎一朗さんが児童福祉系の仕事に転身することをきっかけに解散し、伊地知大樹さん(37)はピン芸人として再出発しました。11月17日から舞台「夜鳥 翔べ~夜を生きる~歌舞伎町ホスト手塚マキ物語」(27日まで、東京・新宿シアターモリエール)にも出演します。解散に至るまでのリアルな思い。そして、今後目指すものとは。

辞めることはないんだな

 昨年9月、相方から解散の話があったんです。YouTube撮影中のことだったんですけど、言われる1秒前まで僕としては解散なんて夢にも思っていなくて。とにかく驚いたというのが唯一の感想でした。

 その日はYouTubeを6本分まとめて収録する予定で、前日にもいろいろ打ち合わせをしていたんです。

 その1本目が収録2日前に相方が誕生日を迎えていたこともあり、サプライズで僕とスタッフさんがお祝いするという企画だったんですけど、収録を終えたタイミングで相方から「もう芸人を辞めようと思っていて」と言われまして。

 こちらがドッキリを仕掛けたはずが、それを遥かに上回るリアルドッキリが返ってきた。そんな形になりました(笑)。

 2017年頃から20年頃までは個人がそれぞれパワーアップする時期だとも話していたんですけど、20年以降はコンビとしてしっかり頑張ろうとしていた真っただ中で、新ネタも作り、一緒にYouTubeもやり、そんな流れがあっただけに、余計にカウンターを食らう形にもなりました。

 ただ、その瞬間の自分の心の動きにも驚いたんです。

 1秒前までは解散なんて全く考えてなかったんですけど、それを言われて1秒後には「だったら、一人でもなんとかやってやる」と思う自分がいたんです。

 もちろん、そこから時間をかけて相方とはいろいろと話し合うことになるんですけど、そうなった瞬間にその思いが込み上げてくるということは、自分はこの仕事を辞めることはないんだろうなと、ある種の実地テストができたように思いました。

ピーク時の4分の1

 “白目漫才”でお仕事をいただき、本当に忙しくさせてもらったのが2015年でした。あらゆるバラエティーにも出してもらって、大みそかはNHK紅白歌合戦で細川たかしさんの後ろで踊ってましたからね(笑)。すさまじい一年でした。

 そこをピークに少しずつ仕事が減っていって、一番しんどかったのが2020年。それまでは少なくなったとはいえ、ピーク時の半分くらいの仕事量で維持していたんですけど、新型コロナ禍でそれがさらに半分になりました。

 ピーク時から考えると、4分の1くらい。相方はちょうどその時期に結婚もしているので、より一層、きつくなったんだと思います。

 相方が自分の意見を出すということはそれまでほとんどなかったんですけど、このことに関しては本当に堅固な意志でした。

 そこからマネージャーとも話を重ねて、この世界は特殊な世界だし、今はしんどくても何かのきっかけでまた「やりたい」と思うことも多分にある世界なので、しばらく様子を見ることを相方に提案したんです。

 平日は相方がやりたいと思っている児童福祉系の現場で経験を積み、週末にコンビとしての仕事をする。そのパターンでやってみて、それでも思いが変わらないなら、その時にまた考えればいいと。

 その状態が約半年続き、今年4月にもう一回思いを尋ねました。そこでもまた「解散したい」ということだったので、それならばそうしようとなったのが解散のいきさつです。

解散からの結婚

 その方向で決定となったら、僕は僕でこれからの時間について考えないといけない。

 もともとギャンブルが好きだったこともあってボートレース関連のお仕事をいただいたり、芸人になる前はホストをしていたので、その時の経験などをもとに恋愛系のお話をさせてもらう講演だとか、そういうものをピンになってからはやらせてもらっています。

 コンビ時代お仕事量を100とすると、今はなんとか80くらいはある感じだと思います。ありがたいことに。

 ただ、今年は本当にいろいろあるというか、一連の流れでつながったというか、僕も解散を決めた4月に結婚したんです。

 もうお付き合い自体も3年くらい経っていたので、そろそろかなというのはあったんです。そんな中で、解散が決まりました。

 もちろん、彼女にもその話はして「これから先、仕事がどうなるかも分からない。当然、収入があるかも分からないし、迷惑をかけるかもしれない。でも、自分は続けたいと思っている」と正直な思いを伝えました。

 そこで「やめてよ、将来のことも考えてよ」という選択肢も思いっきりある中で「やったらいいと思うよ」と背中を押してくれた。それがきっかけになりました。芸人ですから、例えば「M-1グランプリ」で決勝に出るとか、そういう形のきっかけだったら前向きでもあったんですけど、思わぬ形で一歩を踏み出すことになりました。

 これもものすごくリアルな話なんですけど、前にお付き合いをしていた彼女とはそれこそ紅白に出た2015年12月に出会って付き合ったんです。ピークから3年くらいお付き合いして、自分でいうのもアレですけど、スターみたいな時に出会ってそこから仕事が少なくなっていく中で別れました。

 今の嫁は仕事が少なくなったところで出会って、そこからさらにピンチになりそうなところでその言葉をくれた。変に比べるとかそういうことではなく、より一層、ありがたいことだなと思ったのも正直な思いです。

相方への思い

 5月30日に解散してから相方とは連絡をとってなかったんですけど、この前、後輩の「コットン」西村の結婚式で余興を頼まれて久々に会ったんですよ。「ピスタチオ」としてネタをやってくれということでネタ合わせもしないといけないし。

 なんでしょうね、まだ数カ月しか経ってなかったんですけど、昔の元カノに会ったみたいな感覚でした。どう、元気にしてるの?という感じで(笑)。解散の話をする中では悲しみとか苛立ちもありましたけど、会った時にはこれまた驚くほどに、ただただ「お前も頑張れよ」となったんです。それが、本当にリアルな感情でした。

 相方にも今の道で幸せになってほしいし、10年後に「解散しなかったら良かった」みたいな気持ちにもなってほしくない。ただただそう思います。

 そして、僕は引き続き夢を追いかけるしかないですからね。

 いろいろなお仕事をいただけることは本当にありがたいばかりですけど、それを追いかけているだけでは芸人ではなくなる。やっぱり、ネタあっての芸人ですから、ピンとしてのネタを作って単独ライブもやっています。

 相方は相方で頑張っているだろうし、こっちもそうやって時間を積み重ねて、今回の選択が本当に良いものだったと思える未来を作るしかない。そのために、ここからさらに進んでいきたいと思っています。

(撮影・中西正男)

■伊地知大樹(いじち・ひろき)

1985年2月5日生まれ。神奈川県出身。新宿歌舞伎町でホストとして実績を残し、2007年にNSC東京校に13期生として入学。10年に小澤慎一郎とお笑いコンビ「ピスタチオ」を結成する。白目を見せながらキャッチーなフレーズを繰り出す“白目漫才”で15年にブレーク。今年5月末でコンビを解散しピン芸人として活動している。舞台「夜鳥 翔べ~夜を生きる~歌舞伎町ホスト手塚マキ物語」(11月17日から27日まで、東京・新宿シアターモリエール)に出演。

芸能記者

立命館大学卒業後、デイリースポーツに入社。芸能担当となり、お笑い、宝塚歌劇団などを取材。上方漫才大賞など数々の賞レースで審査員も担当。12年に同社を退社し、KOZOクリエイターズに所属する。読売テレビ・中京テレビ「上沼・高田のクギズケ!」、中京テレビ「キャッチ!」、MBSラジオ「松井愛のすこ~し愛して♡」、ABCラジオ「ウラのウラまで浦川です」などに出演中。「Yahoo!オーサーアワード2019」で特別賞を受賞。また「チャートビート」が発表した「2019年で注目を集めた記事100」で世界8位となる。著書に「なぜ、この芸人は売れ続けるのか?」。

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1999年にデイリースポーツ入社以来、芸能取材一筋。2019年にはYahoo!などの連載で約120組にインタビューし“直接話を聞くこと”にこだわってきた筆者が「この目で見た」「この耳で聞いた」話だけを綴るコラムです。最新ニュースの裏側から、どこを探しても絶対に読むことができない芸人さん直送の“楽屋ニュース”まで。友達に耳打ちするように「ここだけの話やで…」とお伝えします。粉骨砕身、300円以上の値打ちをお届けします。

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