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「おはパソ」という重圧、そして“三刀流”への思い。朝日放送・小縣裕介アナウンサーが見出した覚悟

中西正男芸能記者
大先輩からバトンを引き継ぐことになった朝日放送の小縣裕介アナウンサー

 45年続いた関西の名物番組、ABCラジオ「おはようパーソナリティ道上洋三です」が先月で区切りを迎えました。大きな看板を託され、3月28日から「おはようパーソナリティ小縣裕介です」がスタート。スポーツアナウンサーとしてキャリアを積んできた小縣裕介アナウンサー(50)が重圧の中で見出した覚悟とは。

“三刀流”への思い

 去年12月「道上さんの次を」という話をもらいました。ただ、その時はお断りしたんです。

 あくまでも道上さんの体調のことで僕は代打を務めているだけで、道上さんが戻って来られるのを待つのが本流。

 そして、ウチの家は嫁さん(朝日放送・武田和歌子アナウンサー)も働いてますし、その都度、手が空いた方が家のことや子どものことをやってきたので、そこがまわるかも正直心配でした。

 ただ、僕が今の仕事をさせてもらうことにいろいろな意味を会社やスタッフが考えてくれているということを知り、思いが変わっていったんです。

 まず「ラジオパーソナリティだけでなく、これまで通り、スポーツの仕事もやってください」と言われました。祝日や高校野球の時期は番組を休んでスポーツの取材や実況をする。そして月曜から金曜ではなく、木曜までの形を取ることでうまく家のこともやっていく。

 ラジオパーソナリティ、スポーツ実況、そして家のこと。いわば“三刀流”で全てを充実させる。もちろん簡単なことではないですけど、今までの枠組みでは考えられないことを会社も考えてくれている。

 正直な話、働き方改革とか世の中の流れがありますが、仕事の特性上、なかなか具現化しにくかったのがこの仕事でもありました。でも、そこを変えていく。それを会社としても目指していく。僕も大事にしていきたいと思っていたことだったので、やらせていただくことにしました。

 そして、その全てをこの場でしゃべる。ラジオの仕事で得たもの、スポーツの現場で経験したこと、そして、家の中で親の介護をして、子どもの弁当を作って感じたこと。その出しどころがこの番組になる。そんなパーソナリティを目指すのが今僕やスタッフが考えていることでもあるんです。

 僕がそんなスタイルでやっていく中で、ラジオをお聴きの方から「帯番組のラジオパーソナリティなんやから、毎日出るのが筋やろ」といったご意見もいただくかもしれません。

 むしろ、いろいろな声をいただくことが自然だと思いますし、そういった声と向き合う流れの中で感じていただけること、そして僕が感じることもあるんだろなと思ってもいます。

追い求めるもの

 これから番組で大切にしていきたいこと。ひねりのないところで申し訳ないんですけど、これはね、何周かまわって“やさしさ”だと思っています。

 ウチは父は既に亡くなっていて、母が道上さんと同い年なんですけど、ちょっと物覚えが悪くなってきたんです。

 最近は母親の病院についていくことが増えたんですけど、実の親子ですからね…。遠慮がないからなのか、それ自体が甘えなのか、何かあったらすごくイヤなことを言っちゃうんです。そして、言った後は自己嫌悪しかない。言って謝って、言って謝って、その繰り返しです。恥ずかしい話でもあるんですけど。

 妻にも娘たちにも、もっとやさしくすべきところもあると自分でも思いますし、でも、それができていないのも感じます。

 やさしくありたい。すごく思います。ということは、やっぱり今はやさしくできてないんだろうなと。やさしさについて、考えさせられる日々でもあるんです。

 今はまだ全く足りてないからこそ、そこを追い求めていきたい。「おはパソ」という大きな番組の中で、そこは自分にとっての大きなテーマになると思っていますし、その“道中”も正直に話していこうと思っています。

 道上さんがおっしゃっていた言葉で「リスナーは賢者」というものがあります。「分からんことがあったらリスナーに聞け」と。まさに、この部分はこれからもしっかりと引き継がせてもらえたらと考えています。

 道上さんのマネなんてできるわけがないですし、それをやっても意味がない。だからこそ、自分ならではの形を作っていく。そこに向けて邁進するしかない。今、見据えるべきはそこだと強く感じています。

 …とはいえね、やっぱり大きな番組ですからね。どこかで「最初からコケてる場合やない」という思いも強くて。まずは体からやと思って、健康に結びつきそうなことはこれでもかと生活に盛り込むようになりました。

 それこそ、ベタな話ですけど、朝起きたらまず白湯を飲むところから始めて、気づいたら山ほどルーティーンができてて「逆にしんどいわ!」となってます(笑)。

 そういう部分も含め、広く、より良い形を模索していけたらなと。一歩一歩、頑張っていこうと思っています。

(撮影・中西正男)

■小縣裕介(おがた・ゆうすけ)

1971年9月29日生まれ。兵庫県出身。関西学院大学卒業。94年に朝日放送に入社。スポーツアナウンサーとして活動。サッカー、ランニング、水泳、読書、パズルなど多趣味。アスリートフードマイスターの資格を持つ。45年続いたABCラジオ「おはようパーソナリティ道上洋三です」からのバトンを受け、3月28日から「おはようパーソナリティ小縣裕介です」がスタートした。

芸能記者

立命館大学卒業後、デイリースポーツに入社。芸能担当となり、お笑い、宝塚歌劇団などを取材。上方漫才大賞など数々の賞レースで審査員も担当。12年に同社を退社し、KOZOクリエイターズに所属する。読売テレビ・中京テレビ「上沼・高田のクギズケ!」、中京テレビ「キャッチ!」、MBSラジオ「松井愛のすこ~し愛して♡」、ABCラジオ「ウラのウラまで浦川です」などに出演中。「Yahoo!オーサーアワード2019」で特別賞を受賞。また「チャートビート」が発表した「2019年で注目を集めた記事100」で世界8位となる。著書に「なぜ、この芸人は売れ続けるのか?」。

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1999年にデイリースポーツ入社以来、芸能取材一筋。2019年にはYahoo!などの連載で約120組にインタビューし“直接話を聞くこと”にこだわってきた筆者が「この目で見た」「この耳で聞いた」話だけを綴るコラムです。最新ニュースの裏側から、どこを探しても絶対に読むことができない芸人さん直送の“楽屋ニュース”まで。友達に耳打ちするように「ここだけの話やで…」とお伝えします。粉骨砕身、300円以上の値打ちをお届けします。

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