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「周りが寒いほど温かさが増すコタツ」。川嶋あいが語るラジオの力

中西正男芸能記者
ラジオへの思いを軸に胸の内を吐露する川嶋あいさん

 約20年にわたりラジオパーソナリティーを務め、現在もラジオ大阪「明日への扉~いのちのラジオ~」などを担当しているシンガーソングライターの川嶋あいさん(35)。SNSの普及、そして新型コロナ禍など世の中が激しく変化していますが、川嶋さんが語る「その中だからこそ感じるラジオの力」とは。

心がほぐれる

 デビューしてすぐの頃なので、16~17歳の頃からラジオをやらせてもらっています。なので、もう19年、20年も経つんですね。自分でもビックリしますけど(笑)。

 今やらせてもらっているラジオは2番組で、多い時は5~6本ほどレギュラーを持たせてもらっていた時もありました。なんというのか、ラジオは心がほぐれるんですよね。一人しゃべりでも自分の心がほぐれるし、ゲストがいらっしゃった時でもその方の心がほぐれていくスピードが速いんですよね。

 今でも明石家さんまさんとかトップランナーの方々がラジオを続けてらっしゃる意味が、おこがましいですけど、そのあたりにあるような気もしています。

 ニッポン放送「川嶋あいのオールナイトニッポンR」をさせてもらっていた時、それがまさに16~17歳の時だったと思うんですけど、初めてのパーソナリティーで2時間しゃべる。ただでさえしゃべるのが得意ではない自分がその役目を果たせるのか。不安だらけのスタートでした。

 でも、ここがラジオの魅力だと思うんですけど、周りの皆さんが何もできなかった私を導いて助けてくださった。本当に温かくサポートしていただいた。その空気が聴いてくださっている人にも不思議と伝わる。それがラジオなんだと思いますし、心底感謝しています。

 当時のスタッフさんには今でもお世話になっていますし、お父さん、お母さんのように思っています。この感覚は他のお仕事では味わえないものだなと。

いろいろなことがあったからこそ

 それとね、当時の私の状況もあったのかなと思います。15~16歳の頃から路上ライブを始めて、デビューを目指していました。私が10歳の時に父が亡くなり、母は16歳の時に亡くなりました。そこから数カ月くらいかな、その頃が一番しんどかったですね。

 朝から晩まで東京の街をさまよってました。ただ、電車賃がないので、家から近いエリアを歩き回ることになるんですけどね。そして、渋谷で路上ライブをやる。母は私を歌手にしたいと思っていたんですけど、その姿を見せることもできなくなった。生きる意味を奪われてしまった。

 そんな状況の私を救ってくれたのが今も一緒にいる事務所のスタッフです。路上で出会った3人と会社を作って活動を続けています。いろいろなことがあっただけに、人の温かさをより感じられる自分もいる。だからこそ、ラジオという環境により一層、親しみを感じているのかもしれません。

一番信頼できる

 毎週、リスナーさんからたくさんメールをいただくんですけど、その声は私の生活においてとても大きなものになっています。

 例えばライブをやって、それが楽しかったのか、つまらなかったのか。実際、皆さんはどう感じてくださったのか。毎回それを思うんですけど、その時に一番信頼しているのがリスナーさんからのメールなんです。

 私の番組を聴いてくださっているリスナーさんだから、良いことばかりを送ってくださると思われるかもしれませんけど、ラジオの絶妙な距離感というか、根底に愛がありつつも素直な意見をくださるんです。良いものは良い、そうでないものはそうではない。だからこそ、素直に耳を傾けられる。

 この声があるからこそ歌い続けてこられたと思いますし、私が歌う中でラジオに支えられている部分がすごく大きいんです。

 歌手としての人生とラジオパーソナリティとしての人生が常にセットで、まさに両輪なんです。

 どちらかというと、ラジオの方がリスナーさんのイメージがパッと浮かぶので「ラジオを辞めるとなったら、皆さんとのあの場がなくなるんだ」とより具体的にイメージができる。なので、ラジオは私がこの仕事を続ける原動力であり、辞めないストッパーになってくれている気がします。

 いろいろなものが目まぐるしく、激しく変わる時代ですけど、ラジオは不変なんだろうなと。だからこそ、今の時代に温かさを感じやすいし、話す側も、聞く側も安らぎを感じる。

 なんでしょう、コタツみたいなものなんですかね。外が寒ければ寒いほど、コタツの温かさを感じる。コタツの温度は常に同じでも温かさが増すように感じる。

 うまく言うことありきじゃないんですけど(笑)、本当にそういうものだと思います。その場に温めてもらいながら、これから先もその場を持ち続けられるように頑張っていきたいと思っています。

(撮影・中西正男)

■川嶋あい(かわしま・あい)

1986年2月21日生まれ。福岡県出身。本名・川島愛。歌手になることを目指して2002年から始めた路上ライブは05年に1000回に達し「路上の天使」と呼ばれる。2003年に「I WiSH」のボーカルとしてデビューし「明日への扉」がヒット。その後、ソロとして「旅立ちの日に…」「見えない翼」「My Love」などをリリースする。阪神・淡路大震災の被災地での無料ライブや発展途上国の学校建設など社会貢献活動にも積極的に取り組んでいる。「明日への扉~いのちのラジオ~」、「川嶋あい On The Street」と二つのラジオ番組を持つ。自身のYouTubeチャンネルで「旅立ちの日に…」のアニメーションを公開中。

芸能記者

立命館大学卒業後、デイリースポーツに入社。芸能担当となり、お笑い、宝塚歌劇団などを取材。上方漫才大賞など数々の賞レースで審査員も担当。12年に同社を退社し、KOZOクリエイターズに所属する。読売テレビ・中京テレビ「上沼・高田のクギズケ!」、中京テレビ「キャッチ!」、MBSラジオ「松井愛のすこ~し愛して♡」、ABCラジオ「ウラのウラまで浦川です」などに出演中。「Yahoo!オーサーアワード2019」で特別賞を受賞。また「チャートビート」が発表した「2019年で注目を集めた記事100」で世界8位となる。著書に「なぜ、この芸人は売れ続けるのか?」。

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1999年にデイリースポーツ入社以来、芸能取材一筋。2019年にはYahoo!などの連載で約120組にインタビューし“直接話を聞くこと”にこだわってきた筆者が「この目で見た」「この耳で聞いた」話だけを綴るコラムです。最新ニュースの裏側から、どこを探しても絶対に読むことができない芸人さん直送の“楽屋ニュース”まで。友達に耳打ちするように「ここだけの話やで…」とお伝えします。粉骨砕身、300円以上の値打ちをお届けします。

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