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「8.6秒バズーカー」はまやねんが語る、言葉の刃を経ての今

中西正男芸能記者
今の思いを吐露する「8.6秒バズーカー」はまやねんさん

 デビュー直後の2014年に“ラッスンゴレライ”のフレーズで大ブレークしたお笑いコンビ「8.6秒バズーカー」。キャリア11カ月で大阪・なんばグランド花月で単独ライブを行うなど飛ぶ鳥を落とす勢いでしたが、徐々に仕事が減っていく中で感じたこと。そして、インターネット上でのいわれなき言葉の刃を浴びまくった末に至った境地とは。今の思いを吐露しました。

仕事95%減

 芸歴で言うと今で8年目です。ただ、振り返ってみると、これまで本当にいろいろありました(笑)。

 今回の新型コロナ禍も仕事を直撃しました。コロナ禍前の仕事量を100としたら、今は5くらいですかね。

 一番影響があったのが営業です。ショッピングセンターとかでの仕事がほぼゼロになりました。仕事の中で営業が占める割合が7~8割はあったので、そこがゼロになり、他の仕事もちょこちょこ減って結局100が5くらいになりました。

 自分で何かを発信しないいけない。それを否応なく思い知らされました。これまでもその時、その時で一生懸命に頑張ってきたつもりではあったんですけど、今思うと甘えていたというか。それをコロナ禍で感じました。

 簡単に言えることではないですけど、その意味ではコロナ禍での時間は自分にとっては得るものもあったなと思っています。

 売れる売れないではなく、生きるために何をしたらいいのか。ただ、何かを考えたとてすぐお金になるという話でもないし、どこまでも夢物語なのかもしれませんけど、常に先を見る。「絶対に成功できる」と信じる。そうやって心をつなぎとめる。そんな感じになってますね。

「もう飽きた」

 振り返って一番忙しかったのは1年目。そこから2年目、3年目くらいまでは日々忙しくはさせてもらってました。

 今、どこで仕事をしているのかが分からなくなるくらい目まぐるしく働いてましたし、朝起きてまず「今日の仕事は何時に終わるんやろ」と考えるんですけど「今日のうちには終わらんなぁ」ということが毎日のように続いてました。

 そんな生活が半年ほど続いてくると、もう何もやりたくないという気持ちにもなっていったんです。

 もちろん、お仕事をいただくことはありがたいことですし、そうやって忙しくなりたくてこの仕事を始めたんですけど、毎日とにかくバタバタ。その連続で、リアルな話、そう思ってきてしまうんですよね。

 どこに行っても同じものを求められる。一緒のことばかりやることになる。要は“ラッスンゴレライ”をすることになるんですけど、その頃からSNSも普及し始めてて、僕らもそれを見ていました。

 「もう飽きた」とか「これしかないの」とか叩かれてるんです。でも、僕らもその思いを持ってるわけです。それを良しとして仕事にのぞんでいるわけじゃないのに、SNSでは叩かれる。これは精神的につらかったです。

 「誰が何と言おうが、これが自分たちのやりたいことなんだ」と強く思ってやっていることならば、何を言われても真正面から向き合えると思うんですけど、そうではないですからね。「言われんでも、オレらもそう思ってんねん」。その中での言葉はより堪えましたね。

言葉の刃を経て

 1年目が一番忙しくて、2年目も忙しくはさせてもらってたんですけど、そこらへんから“あの人は今”的なことも増えてきました。

 局面が明らかに変わってきたのは3~4年目くらいからですね。分かりやすく仕事量が減っていきました。ただ、それでもちゃんと暮らしてはいけてましたし、僕自身はちょうどこれくらいがありがたいという思いもあったので、周りから思われるほど焦ることはなかったんです。

 それと、これがいいのかどうかは分からないんですけど“叩かれ慣れ”をしたというか。ちょっとやそっとのことで心が揺るがないようになりました。

 デビューした頃は「アンチの人が出てきたら売れた証拠やで」という話をコンビでしてました。ただ、ネット上のいろいろな話の広がり方は、その感覚を遥かに超えるくらい凄まじかったです。

 “ラッスンゴレライ”に関して根も葉もない話が広がっていったというのが一番大きかったんですけど、最初、僕ら自身は気にも留めてなかったんです。

 というのは、完全に“ない話”であり“ウソ”なので広まらないと思ってたんです。逆に「こんなことよう考えるな」と驚いたくらいです。

 ウソだから広まるわけないと思っていたら、それがそれこそウソみたいに広まっていく。そして、いつの間にか都市伝説的に止められないくらい浸透してしまっている。ウソなのに、こんなことになる。この感覚は恐ろしかったですね。

 ただ、そういったことを経て、これも良いのかどうかわかりませんけど、今は何も思わなくなりました。「また言ってるわ」というくらいの感じで。あと、自分の方が幸せな生活してるしという思いで処理しているところもあります(笑)。

 学びなのかどうか分かりませんけど、心に余裕がない人がこの世にはいっぱいいるんだなと思いました。だから、人を傷つける。傷つけやすいところを、傷つけやすい方法で傷つける。

 最初はそういうことに怒りもありましたし、いろいろな感情も沸きましたけど、今は「発散したいならどうぞ」という。僕にそれをやることで発散できてるんやったら、どうぞやってくださいという気になりましたね。

“ラッスンゴレライ”の次

 これまで8年間ほど“ラッスンゴレライ”をやってきて、今回のコロナ禍がある意味のリセットのタイミングにもなったのかなと感じてるんです。

 コロナ禍前でもまだどこに行っても“ラッスンゴレライ”を絶対に求められてました。そこまで知ってもらえるもの、求めてもらえるものができたことは本当にありがたいことなんですけど、逆に言うと、ネタとかフレーズで“ラッスンゴレライ”を超えること、あのパターンの売れ方をするのは難しいんだろうなと。

 ネタで“ラッスンゴレライ”を上書きするのは本当に難しい。なので、あれはあれでありがたいものとして、他のところで何かをプラスできるように努める。それが今やるべきことなのかなと。これも正直な話。

 じゃ、何をやればいいのか。何が“ラッスンゴレライ”の次になり得るのか。これはね、本当に難しいです。

 ただ、そんな簡単な仕事ではないですし、とりあえず自分がやりたいと思ったことはどん欲に何でもやってみる。そして、次へのカギが見つかったらいいなと。

 一つ、それが形になりつつあるのが車で料理を提供するキッチンカーなんです。昔から飲食のアルバイトもしてましたし、飲食への思いも強かったので今年の春あありから動き出して、既に車のデザインもできて、早ければ来年1月末から実際に稼働できればと考えています。

 地域活性というか、地方のホームセンターとかに行って盛り上げられたらなと思ってます。本当に微力ですけど。でも、最初に多くの人に知ってもらえたのがそういうところでは役に立つかなとも思いますし、行く先々を盛り上げられたらなと。

 ゆくゆくはキッチンカーの台数も増やしていきたいですね。そして、僕はバンドがすごく好きなので、洋楽、邦楽含めたフェスみたいなことがいつかできたらなとは思っています。そうなると、そこでキッチンカーも活きてきますしね(笑)。

 もちろん、今は何も始まってないんですけど、そうやって常に前を向いておく。その心意気で、なんとか頑張っていこうと思っています。

(撮影・中西正男)

■はまやねん

1991年3月10日生まれ。大阪府出身。大阪NSC36期生。中学校の同級生・田中シングル(現・タナカシングル)と「8.6秒バズーカー」を結成する。コンビ名ははまやねんの中学時代の50メートル走のタイムとインパクトのあるバズーカーという言葉を組み合わせたもの。2014年のデビュー直後から“ラッスンゴレライ”というフレーズのリズムネタでブレークする。イベント「オシャレ紳士のサンタ・クロース・トゥ・ユー」(12月23日〜26日、よしもと有楽町シアター)に出演する。コンビでのYouTubeチャンネルも展開中。

芸能記者

立命館大学卒業後、デイリースポーツに入社。芸能担当となり、お笑い、宝塚歌劇団などを取材。上方漫才大賞など数々の賞レースで審査員も担当。12年に同社を退社し、KOZOクリエイターズに所属する。読売テレビ・中京テレビ「上沼・高田のクギズケ!」、中京テレビ「キャッチ!」、MBSラジオ「松井愛のすこ~し愛して♡」、ABCラジオ「ウラのウラまで浦川です」などに出演中。「Yahoo!オーサーアワード2019」で特別賞を受賞。また「チャートビート」が発表した「2019年で注目を集めた記事100」で世界8位となる。著書に「なぜ、この芸人は売れ続けるのか?」。

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1999年にデイリースポーツ入社以来、芸能取材一筋。2019年にはYahoo!などの連載で約120組にインタビューし“直接話を聞くこと”にこだわってきた筆者が「この目で見た」「この耳で聞いた」話だけを綴るコラムです。最新ニュースの裏側から、どこを探しても絶対に読むことができない芸人さん直送の“楽屋ニュース”まで。友達に耳打ちするように「ここだけの話やで…」とお伝えします。粉骨砕身、300円以上の値打ちをお届けします。

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