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新型コロナ禍での光明、オンラインライブがあぶり出す現実

中西正男芸能記者
(写真:アフロ)

 新型コロナの感染者数が増え続ける中、エンターテインメントへのダメージもますます深刻になっています。

 その中でも一筋の光明とも言えるのがオンラインイベントです。8月11日、吉本興業のオンラインチケット販売システム「FANY Online Ticket」の上半期チケット売り上げランキングが発表されました。

 同システムでの上半期総販売枚数は約60万枚で、昨年下半期の約44万枚を大幅に上回り約40%の増加となりました。

 今回ランキング1位となった「南海キャンディーズ」山里亮太さんと「オードリー」若林正恭さんのイベントは23173枚を売り上げました。普段、お笑い系のイベントが行われる劇場は最大レベルの大阪・なんばグランド花月でも約860席です。

 劇場のキャパシティーが関係ない上に、遠方の人でも移動ゼロで楽しめる。さらに、多くのイベントは見逃し配信的にリアルタイムでなくても見ることができる。そこがオンラインイベントが普及した大きな要因であることは言わずもがなです。

 ただ、目の前に芸人さんがいて同じ空気を共有する。そんなライブならではの醍醐味はなくなってしまう。その危惧が開催する側にもあったと言いますが、さらに配信ならではの広がりをやってみて痛感した部分もあったと聞きます。

 これまで通常のライブでは、あるライブが爆発的に面白かったとしてもそれはその場で消えるものであり、もう一回見ることはできません。それがライブでもあるのですが、オンラインライブは見逃し配信的なことができるので、イベントが終わってから1~2日、場合によっては1週間ほどチケットを買うことができる。

 となると「このライブ、面白かった!」という評判がツイッターなどで拡散されると、事後の評判をもとにチケットが売れるという現象も出てきています。

 「今年1月にあった『マヂカルラブリー』のライブは当初1000枚ほどだったのですが事後の評判が良く最終的に17555枚が売れ、上半期の売り上げランキング2位となりました」(吉本興業担当者)

 また、劇場でのライブとは違う楽しみも配信にはあると言います。

 「見ている人がリアルタイムでコメントを書き込むことができるので、劇場で見ているよりももっと細かく、深く、ファンの皆さん同士でいろいろな感情を共有できる。それによって、ライブでは味わえない楽しさが生まれている部分はあると思います」(関西を拠点にする構成作家)

 さらに、芸人さんの側にもオンラインライブの普及で変化が訪れてもいます。今年6月、コロナ禍での思いを「中田カウス・ボタン」の中田カウスさんに取材した際、その部分に言及していました。

 劇場にお客さんに来ていただけない。その中で配信ということも始まりました。目の前にお客さんはいてないけど、配信やったらリアルタイムでコメントを書き込んでもらえるじゃないですか。

 僕はね、そのコメントをチェックして舞台に出て行くようにしています。そこで新たなお客さんとのつながり方が生まれているわけですから。

 むしろ、すぐに意見が聞けるから僕は配信が好きだし、生の舞台ではないことがあるわけですから。どんな状況でもやりきって、上を目指すのがプロですよ。

 それとね、無観客での配信は力のあるなしがバレます。

 お客さんがいないと、テンポが速くなるんです。覚えているセリフを互いに言ってるだけで終わらせてしまう。お客さんがいると間をとったり、呼吸をはかったりしやすいんです。でも、いなかったら、万引きで捕まった中学生みたいに早口になりますよ(笑)。ネタが“言い訳”になるんやね。

 力があるかないかはね、こういう時に出るんですよ。ここでやれているコンビは、本当に力があるし、どこよりもネタ合わせをやっているコンビですよ。

 これまではね、人気者であることを競ってたんです。テレビに力がある頃は。でも、これからは芸を競い合う時代になっていきます。本来の吉本の姿になってきたと思います。

 テレビの視聴率やSNSの登録者数などがこれまでは芸人さんの力をはかる指標にもなっていましたが、今はお金が絡んだ数字がはっきり出るオンラインチケットの売り上げ枚数が新たなポイントにもなっています。

 「これまで、劇場に足を運ぶファンと言えば若い女性のイメージが強かったかもしれませんが、オンラインチケットのようにどなたが買っていただいているかが分かりやすいデータを見ると、40代男性が支持してくださっているイベントも多々ありました。『メッセンジャー』あいはらさんが大阪でこじんまりやっているイベントがランクインするなど、各世代が求めるものが事細かに見えるので、お笑いファン=若い女性という構図ではなく、各世代が求めているものをピンポイントで届けるツールにもなっています」(前出担当者)

 悪いことばかりでは面白くない。

 転んでもただでは起きない。

 芸人さんの精神がここにも表れている気がしてなりません。

 7月に「ニューヨーク」の屋敷裕政さんに、こちらもコロナ禍での思いを取材した時の言葉が今も頭に残っています。

 「芸人という種族はね、本当にしぶといですよ。これを根絶やしにすることはできないと強く思います」

芸能記者

立命館大学卒業後、デイリースポーツに入社。芸能担当となり、お笑い、宝塚歌劇団などを取材。上方漫才大賞など数々の賞レースで審査員も担当。12年に同社を退社し、KOZOクリエイターズに所属する。読売テレビ・中京テレビ「上沼・高田のクギズケ!」、中京テレビ「キャッチ!」、MBSラジオ「松井愛のすこ~し愛して♡」、ABCラジオ「ウラのウラまで浦川です」などに出演中。「Yahoo!オーサーアワード2019」で特別賞を受賞。また「チャートビート」が発表した「2019年で注目を集めた記事100」で世界8位となる。著書に「なぜ、この芸人は売れ続けるのか?」。

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1999年にデイリースポーツ入社以来、芸能取材一筋。2019年にはYahoo!などの連載で約120組にインタビューし“直接話を聞くこと”にこだわってきた筆者が「この目で見た」「この耳で聞いた」話だけを綴るコラムです。最新ニュースの裏側から、どこを探しても絶対に読むことができない芸人さん直送の“楽屋ニュース”まで。友達に耳打ちするように「ここだけの話やで…」とお伝えします。粉骨砕身、300円以上の値打ちをお届けします。

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