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「THE W」ファイナリスト「TEAM BANANA」が新型コロナ禍で見つけたもの

中西正男芸能記者
お笑いコンビ「TEAM BANANA」の藤本友美さん(左)と山田愛実さん

 昨年の女芸人No.1決定戦「THE W」で決勝に進出した「TEAM BANANA」の山田愛実さん(33)と藤本友美さん(33)。注目度も急上昇し、本来なら仕事が舞い込むタイミングでの新型コロナ禍で、その流れにもストップがかかってしまいました。5月1日に開催予定だった単独イベント「TEAM BANANA 60分漫才」も延期が決まりましたが、その中だからこそ見えたものもあるといいます。

ファイナリストの意味

藤本:新型コロナ禍でいろいろと仕事に影響は出ています。

日々のライブもなかなかできないですし、リアルなことを言うと、収入に直結していた各地での営業がなくなってしまって、それは生活を直撃してますね。

収入の中で、6割くらいは営業でもらっていたものだったんです。

去年、やっと「THE W」の決勝に出られて、本当だったらいろいろな仕事が入ったり、それこそ営業の本数も増えるところだったのかもしれませんけど、それが今は一切ない状態ですしね。

流れに乗って、一番動いておきたいところで、そんな状況になってしまっています。もちろん、こればかりは仕方ないんですけどね…。

山田:去年の春ごろからの流れで言いますと、もともと、コロナ禍で仕事量はかなり減ってしまっていました。

当然、収入面も困るんですけど、人前でネタをやる機会が激減したことで、自分たちのネタへの確認ができない。果たして、これがきちんとウケるものなのか。そこの不透明さからくる不安というか、そういう思いもありました。

ただ、そんな手探りの状況で決勝に行けたことは、純粋にうれしかったですし、自信にもつながったと思います。

これまでは何も結果を出せないままの芸人人生だったので、自分たちがやっていることへの漠然とした不安と迷いが常にあったんですけど、一つ結果が出たことで、少しは答え合わせみたいなことはできたのかなと。

ちょっとしたことかもしれませんけど、これまでは営業の舞台などで紹介してもらう時に「女性漫才コンビの『TEAM BANANA』さんです」という感じだったんですけど、今は「『THE W』ファイナリストの―」という看板をつけてもらえる。

舞台に出るまでのほんの何秒のことですけど、そこでそうやって紹介してもらえることで、ナニモノでもなかったところから、やっと一歩を踏み出せたのかなと。

その一言を言ってもらえるだけで、お客さんにとっても「あ、そういうところまでは行ってる人たちなんだ」と理解した上でネタに入れるというか。そういう部分の変化みたいなところは感じています。

藤本:そこに甘えるわけじゃないんですけど、ステージに立つまでの空気が変わったなという感覚はありますね。もちろん、まだまだこれからなんですけど。

芸人の喜び

山田:あと、コロナ禍でなかなかお客さんの前で舞台ができない中、お客さんに来てもらうありがたさ。そして、重み。そこを改めて痛感したのも大きかったです。

まだテレビに出してもらうようになって少ししか時間が経ってないですけど、テレビに出る意味というのもすごくあると思います。すごいことでもありますし。

でも、この仕事の基本の基本は、目の前のお客さんに笑ってもらうこと。生の笑い声をもらうということだなと強く思うようになりました。

特に、コロナ禍でライブに足を運んでくださる方は、大変な中、わざわざチケットを買って、時間を使って、外に出て、見に来てくださっている。

何かしら、直接的なメリットがあるわけでもないですし、仕事みたいに絶対にやらないといけないものでもない。それなのに、来てくださるわけですもんね。

藤本:わざわざ来てくださることの意味。これは考えれば考えるほど、ただただありがたいという思いしかありません。

山田:だからこそ、一回一回の舞台で必ずウケる。ウケるように最大限やる。これまでも最大限やっていたつもりでしたけど、さらにマックスを引き上げてやる。

それだけのありがたい思いを受け続けられる芸人でいたいと思いますし、そうでないといけないとも思いますし、当たり前のことなんですけど、一回一回の舞台への思いがさらに強くなりました。

目指すべきもの

山田:そもそもの話、私は新宿の劇場「ルミネtheよしもと」を観に行った時に「この舞台で漫才ができるようになりたい」と思って吉本に入ったんです。

恐縮ながら、それまでテレビでは見たことがない芸人さんたちも舞台に出てらっしゃったんですけど、皆さん、ものすごく面白い。

今から思うと不勉強なことだったんですけど、今まで見たことがなかったような芸人さんたちが最後は必ず大爆笑を取って、舞台を降りていかれる。その流れに驚いたのと同時に、心底、カッコいいなと思ったんです。

藤本:実際に、この世界に入ってから思ったのが、思っていたよりもこの世界は100万倍は難しいところなんだなということでした。

私たちを含め、なかなかテレビには出られない人たちが本当にたくさんいる。なんなら、芸人の中の割合で言うと、そちらの方が圧倒的に多い。そして、その人たちも本当に面白い。いったい、何をどうしたらいいのか。そんな思いにもなりました。

だからこそ、渡辺直美さんとか、その中でウケまくって、売れまくっている方のすごさもより一層、深く刺さるようになりました。

山田:まだまだ今の段階で何を言ってもおこがましいばかりです。

でも、いつか、いつか、劇場でトリを取れる芸人になりたいと思っています。

お客さんに笑ってもらうのがこの仕事の根本だし、それをダイレクトにできるのが劇場。そして、そのラスト。それまでの流れの全てを引き受けて、最後にふさわしい笑いをお客さんに味わってもらって、興行全体を成立させて大きな拍手をもらう。

そこに勝る芸人としての幸せはないのかなと思うんです。

どこまでもおこがましい話なんですけど、なんとか、50代でそんな状況になれていたら幸せだなと。

ただ、もし、そうなれたら、次はトリから外されることが心配になってしまうので(笑)、外されることなく人生を終えられるくらいの年代でなれたら、ベストなのかもしれませんけどね。

幾重にも遥か先のことですけど…、まずはそのスタートラインに立てるよう、今をしっかりと頑張ります。

(撮影・中西正男)

■TEAM BANANA(チームバナナ)

1988年8月15日生まれの山田愛実(やまだ・まなみ)と88年6月28日生まれの藤本友美(ふじもと・ともみ)のコンビ。ともに群馬県出身。桐生市立商業高校の同級生として出会い「M-1甲子園」出場を目指して2005年に結成。06年の「M-1甲子園」で優勝を果たす。高校卒業後、二人でNSC東京校に入学。山田のボケに藤本がつっこむ「ガールズトーク漫才」がメイン。女芸人No.1決定戦「THE W」では2020年に決勝進出。単独イベント「TEAM BANANA 60分漫才」を5月1日に東京・ヨシモト∞ホールで開催予定だったが、新型コロナ禍で延期に。今後の流れなど詳細は同劇場のホームページで随時発表していく。

芸能記者

立命館大学卒業後、デイリースポーツに入社。芸能担当となり、お笑い、宝塚歌劇団などを取材。上方漫才大賞など数々の賞レースで審査員も担当。12年に同社を退社し、KOZOクリエイターズに所属する。読売テレビ・中京テレビ「上沼・高田のクギズケ!」、中京テレビ「キャッチ!」、MBSラジオ「松井愛のすこ~し愛して♡」、ABCラジオ「ウラのウラまで浦川です」などに出演中。「Yahoo!オーサーアワード2019」で特別賞を受賞。また「チャートビート」が発表した「2019年で注目を集めた記事100」で世界8位となる。著書に「なぜ、この芸人は売れ続けるのか?」。

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1999年にデイリースポーツ入社以来、芸能取材一筋。2019年にはYahoo!などの連載で約120組にインタビューし“直接話を聞くこと”にこだわってきた筆者が「この目で見た」「この耳で聞いた」話だけを綴るコラムです。最新ニュースの裏側から、どこを探しても絶対に読むことができない芸人さん直送の“楽屋ニュース”まで。友達に耳打ちするように「ここだけの話やで…」とお伝えします。粉骨砕身、300円以上の値打ちをお届けします。

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