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「捨てられたもの同士のコンビ」。「ウーマンラッシュアワー」村本大輔が語る相方と今後

中西正男芸能記者
相方への思い。そして、今後について語った「ウーマンラッシュアワー」の村本大輔

 今年3月からスタンダップコメディーを追求すべくアメリカに渡ることを公言してきた漫才コンビ「ウーマンラッシュアワー」の村本大輔さん(40)。しかし、未だ具体的な段取りは定まっていません。もちろん、そこには新型コロナの影響もありますが、もう一つの大きな要素が相方・中川パラダイスさんでした。村本さんが内包してきたパラダイスさんへの思い。そして、コンビとしての今後について、ストレートに語りました。

新型コロナで足踏み

 3月からアメリカに行く予定で、その流れありきで、それまでに大きなところで独演会をやっておきたい。そう思って、2月16日に東京、22日に大阪で会場をおさえたんです。でも、渡米の目処が立っていないというのが現状です。

 新型コロナで海外に行くのもハードルが高いし、アメリカのコメディクラブも開いてなかったり、向こうも通常の動きではないので、当面はなかなか難しそうだなと。

 その中でも、できることはやっておかないといけないので、英語は日々勉強しています。向こうのニュースを見て情勢を把握したり、それをもとに話を考えたり。そういったことも続けています。

 ただ、語学力的にはまだまだです。やっぱり、これまで全く勉強してこなかったし、38歳でbe動詞を初めて知ったくらいですから(笑)。なかなか苦戦はしています。

 この前も、週刊誌で僕の女性スキャンダルというか熱愛みたいな記事が出た時に、知り合いから連絡をもらって、その記事を英文で見たんです。

 記事の最後に“break a leg”と書いてあって。純粋に和訳したら“脚を折れ”ということなので、記者の人にメチャメチャ恨まれてるのかと思ったら、慣用句として、むしろ“頑張れ”ということだったらしく(笑)。分からないことだらけながら、その分、楽しさも感じつつ勉強しています。

コンビ解散も

 あと、アメリカに渡るにあたって、コンビとしての今後という部分も固まってなくて。それもすんなりと渡米できない要素になっています。

 これね、ピン芸人だったら結構自由じゃないですか。渡辺直美だったり、ゆりやん(レトリィバァ)だったり。自分が海外に渡っても、困る人がいないというか。

 あと、コンビでも、例えば、あっちゃん(中田敦彦)だったら藤森(慎吾)、綾部(祐二)だったら又吉(直樹)みたいに、相方が自立していると、それはそれで成立するんです。これが、ウチの場合は、まだ乳母車から出てませんので(笑)。

 実際、去年の春から夏くらいにパラダイス、そして、マネージャーと3人でしっかりと話したんです。

 というのも、今仕事の8割以上はコンビでの漫才。劇場だとか、今はコロナ禍で止まってますけど営業だとか。

 3~4年前からテレビの仕事はやらないと決めて、仕事の基本はお客さんの前での漫才。あと、コンビの仕事がない日に僕自身の独演会をやる。基本的には、そういう感じでやってきました。

 なので、去年話し合った時にはパラダイスからド直球みたいな話も出ましたし、同席したマネージャーが号泣するくらい、本音でしゃべりもしました。

 パラダイスいわく、自分には家族もあるし、自分のタイプとしてコンビじゃないと無理だと。新しい相方を探す話もされましたし、コンビ解散という領域の話もしました。それくらい詰めた話でしたし、そこで再確認できたことも多々ありました。

 仮に解散したら、パラダイスが吉本新喜劇に行くという話も出ました。でも、そこは「解散したからといって、新喜劇に行くのは失礼やと思う。そういう受け皿になるために新喜劇はあるわけじゃないんだから」とパラダイスなりに新喜劇へのリスペクトがあるみたいで、しっかりと否定してました。

 ただ、新宿の「ルミネtheよしもと」で大山英雄さんらがやってらっしゃるコメディーショー「SPコメディ」があるんですけど「ま、あそこならエエか…」という空気は出してたんで、パラダイスが「SPコメディ」を軽視してることも再確認できました(笑)。

独演会の理由

 本当に正直な話、そこでかなり入り組んだ話はしたんですけど、それでいうと、2013年に「THE MANZAI」で優勝した時から、コンビでずっと話はしてきたんです。

 そもそも、僕が独演会を始めたきっかけというのが“手に職”という意識だったんです。こういう仕事をしている以上、一人で舞台に立つことになっても、できるものがある。それがすごく大切だと思いまして。

 コンビのどちらかがケガや病気をしても、一人で舞台を受け持つことができる。そうあるべきだし、それぞれが固有の芸を持って、存在感を示して、その二人が漫才という形でぶつかった時には、これまで以上のものができるはず。その思いもあったんです。

 そう考える中で、僕はスタンダップコメディーというものに惚れてしまった。

 一方、パラダイスはそこの危機感がのんびりしているというか…。これは個人の性格に行きつく話ですけど、僕はヤバい!焦る!必死!というタイプ。パラダイスは「そうなったらなった時で…」みたいに考えるタイプなんです。

 僕が独演会にどんどん進んでいったのも、もちろん、僕がやりたかったからでもあるんですけど、僕が走ることで、パラダイスも自立せざるを得ない。一人で仕事になるもの、もっというとお金になるもの。それを作りにかかるんじゃないかと思ったんです。

 こちらが舞台をおさえてパラダイスに定期的にライブをさせたりもしてたんですけど、そこでもゼロから何かを生み出すのではなく、途中から「NONSTYLE」の石田とか、達者なゲストを呼んでイジってもらう中身にしてしまっていた。そうなると、もうやる意味がないですから。

 これはね、本当に度々言ってきたことですし、話し合ってきたことですし、今後も引き続きコンビとしてどうにかしないといけない部分です。

それしかない

 また、パラダイスにそうあってもらうことが、今後の「ウーマンラッシュアワー」にとっても大切なことだという思いもありまして。

 僕がテレビにも出ないし、いわゆる多くの芸人がやっていることと違う動きをするようになったのには、みんなが集まっているところから離れるという目的もあったんです。

 例えば、吉本の若手の劇場にずっといると、知らず知らずのうちにそこにいる者同士が同じように発展して、同じように育っていく。ホンモノとレプリカ、レプリカとホンモノが入り混じりながらオリジナルがなくなっていく。

 僕自身、福井から大阪、大阪から東京、東京から世界と目を向けていく中で、次々と新しい感覚を得てきました。

 そして今、アメリカでスタンダップコメディーをやろうとしている中で、向こうの言葉を知って、文化を知って、向こうならではの自らの体験ベースの笑いを自分に取り込む。差別だったり、偏見だったり、自らが受けたものを笑いにする。

 そんなものを僕がしっかりと身につけて、いつの日かそれを落とし込んだ、これまでにない漫才をやる。パラダイスと。

 いつになるか分からないけど、いつかはやりたい。時間はないようで、実はある。だからこそ、その日までパラダイスにも自分の蓄積をしてもらいたいし、それで生活できるものを見つけてもらいたいし、そこで彼が知ったものを僕も知りたい。50歳同士、60歳同士の僕らがその漫才をするためには、まず互いに自立する。それしかないんです。

捨てられたもの同士

 そもそも、僕らのコンビというのは、捨てられたもの同士が集まったコンビなんです。

 僕は相方10人と解散をしてきて、誰も組んでくれなくなった。そこで、出会ったのが中川パラダイスという人間だった。そして、二人とも「キングコング」とか「オリエンタルラジオ」、「ピース」とは大きく違う。吉本のオーディションでもなかなか上がれない。インディーズライブでも笑いが取れない。そんな二人が集まったコンビなんです。その二人が勝負をかけた。それが大前提です。

 そして、よく芸人が言うことで「『ダウンタウン』をあきらめるのが早いヤツほど勝っていく」という法則があるんです。

 「ダウンタウン」さんにあこがれてマネをする。他にも、強く影響を受けた先輩のマネをする。「『2丁拳銃』の修士さんみたいにつっこんでくれ」だとか「『COWCOW』のよしさんみたいにつっこんでくれ」だとか、それこそ「浜田さんみたいにつっこんでくれ」だとか。お手本とする先輩が多くの場合いるんですよ。

 それは別におかしなことではなく、ひな鳥が初めて親鳥を見るがごとく、近い人のマネをするのは当然なんです。その中で「ダウンタウン」さんとの差を知り、あこがれていたけれどなれないことを知り、自分たちの“勝ち方”を見つけていく。

 そこが、僕らの場合は“強制的に”そうなっていったんです。

 これは僕らにとって、大事というか、大きなことだったんですけど、組んだ時、相方はもう30歳くらいだったんですけど、その時点で福島県を知らなかったんです。僕が福島県の話をしたら、つっこんできたんですよ。「どこやそれ!」と。

 ツッコミというのは、誰よりも常識人でないといけない。でも、この感じからすると、パラダイスにそれは無理だと。

 早々と「〇〇さんみたいな」というツッコミはあきらめたんです。そう彼を見るようになったんです。それが中川パラダイスという人間のカタチだと。

 ボールという時点で無条件にサッカーボールみたいな球体だと思っていたら、実は、いびつな細長いボールだった。そう知った時に「もう、これはラグビーをするしかない」と踏ん切りがつくように、そこで僕らとしての競技の方向性が決まったんです。

 パラダイスじゃないと“バイトリーダー”のネタもできてないし、あれがないと世にも出られてなかったかもしれない。彼が藤森みたいに何でも器用にこなしてたら、今の僕らはいないと思いますし。独特すぎて、早めに気付くしかなかった。それはパラダイスだったからこそできた判断だったんです。

 去年しっかりしゃべってから、お互いに触れないという空気があったというか、深いところの話はほとんどせずにきたんです。実際、コロナ禍もあって先が見えなくなったこともありましたし。しっかりとはしゃべってなかった。正直な話。

 ただ、3月に考えていた渡米がズレたことは伝えないといけない。当面は情勢とか僕自身の状況も見て考えるということを話しました。

 そこで改めて今後のパラダイスについて聞いてみたりもしたんです。これは非常に驚いたんですけど、どうやら、僕がアメリカに行ったら「いきなり!ステーキ」の店長をやりたいらしく(笑)。

 もちろん「いきなり!ステーキ」の店長も何ら悪くはないんですけど「チェーン店の店長は安泰だから」みたいなことを言っていて…。それは僕が思っている流れとは、全く違うなと(笑)。ほんでまた「いきなり!ステーキ」って。今、さらに風当たりが強い方のチェーンに行くんかい!というのもありますし(笑)。

 ま、ただ、それがパラダイスですし、そういう相方と漫才をやりたいのもあります。

 でも、さらにもう一つ、考えていることがあるらしくて。どうやら、ツイッターで風俗に行った時のレポートを書いるみたいで。それが、何の準備になるんだと…(笑)。

 しかも、はるか昔のことのように書いてますけど、ホンマに昔か?と思えるところも多々あって、より生々しいし。奥さんもかわいそうやし。そして、さすがにそれは二人が合わさった時にも、なかなか漫才に落とし込みにくいですし…。そこは極めてシンプルに、方向転換を促しました(笑)。

(撮影・中西正男)

■村本大輔(むらもと・だいすけ)

1980年11月25日生まれ。福井県出身。99年、22期生として大阪NSCに入学。同期は「キングコング」、山里亮太ら。コンビ解散を10回以上繰り返し、2008年にNSCの1期後輩にあたる中川パラダイスと漫才コンビ「ウーマンラッシュアワー」を結成する。コンビとしてABCお笑い新人グランプリ最優秀新人賞など受賞多数。「THE MANZAI2013」で優勝し、一躍全国区の存在になる。自身の考えをスピード感あふれる喋りに乗せて観客に届ける独演会が話題に。2月にも「Without me~おれを排除してみな?お前たちおれなしじゃこの世界はとてもつまらないだろう~」を東京(16日、LINE CUBE SHIBUYA)、大阪(22日、大阪市中央公会堂大集会室)で開催する。また、昨年12月には著書「おれは無関心なあなたを傷つけたい」を上梓した。

芸能記者

立命館大学卒業後、デイリースポーツに入社。芸能担当となり、お笑い、宝塚歌劇団などを取材。上方漫才大賞など数々の賞レースで審査員も担当。12年に同社を退社し、KOZOクリエイターズに所属する。読売テレビ・中京テレビ「上沼・高田のクギズケ!」、中京テレビ「キャッチ!」、MBSラジオ「松井愛のすこ~し愛して♡」、ABCラジオ「ウラのウラまで浦川です」などに出演中。「Yahoo!オーサーアワード2019」で特別賞を受賞。また「チャートビート」が発表した「2019年で注目を集めた記事100」で世界8位となる。著書に「なぜ、この芸人は売れ続けるのか?」。

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1999年にデイリースポーツ入社以来、芸能取材一筋。2019年にはYahoo!などの連載で約120組にインタビューし“直接話を聞くこと”にこだわってきた筆者が「この目で見た」「この耳で聞いた」話だけを綴るコラムです。最新ニュースの裏側から、どこを探しても絶対に読むことができない芸人さん直送の“楽屋ニュース”まで。友達に耳打ちするように「ここだけの話やで…」とお伝えします。粉骨砕身、300円以上の値打ちをお届けします。

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