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世界的タップダンサー・HIDEBOHが語る「吉本坂46」の課題と可能性。そして、ビートたけしのポチ袋

中西正男芸能記者
アイドルグループ「吉本坂46」としても活動するタップダンサーのHIDEBOH

 世界的タップダンサーで、アイドルグループ「吉本坂46」のメンバーでもあるHIDEBOHさん(53)。北野武監督の映画「座頭市」(2003年)では役者として、そして、クライマックスシーンのタップダンス指導でも注目されました。世界各国で経験を積み重ねてきた目から見た「吉本坂46」の課題、そして「無限」と評する可能性について語りました。

ビートたけしとの縁

 僕の職業はダンサーなんですけど、親父が浅草の芸人だったもので、小さい頃から親父の舞台を袖から見ていたんです。

 その時に劇場に出てらっしゃったコンビの一組が「ツービート」さんでした。

 そこから世界各国でタップダンスの経験を積んで、今から20年ほど前にビートたけしさんの番組「たけしの誰でもピカソ」(テレビ東京)に出していただいたんです。

 その時、たけしさんに「実は、親父が芸人でして…。たけしさんとは僕が小さい頃にお会いしてるんです」と話したんです。ウチの親父は、ケリーヒグチという芸名なんですけど、その名前を伝えると「え、ケリーさんの息子さんなの」となりまして。

 そこから、たけしさんのタップダンスのレッスンをさせてもらうことになって、それが2000年頃のことでした。それが進んでいって、映画「座頭市」に繋がっていくんですけど、たけしさんとご縁ができたことで、ご自宅にも頻繁に行かせてもらうようになったんです。

「辞めちゃダメ」

 たけしさんには本当によくしていただいて、年中たけしさんの家に「たけし軍団」の皆さんと一緒に集まって、みんなで鍋を作って食べてました。

 

 たけしさんはタップへの思いが強くて、別の部屋でタップの練習をした人だけ鍋を食べられるシステムなんです。そして、その宴会で、必ず、3万円か5万円が入ったポチ袋を皆さんに渡されるんです。

 それを渡して、照れくさそうに毎回おっしゃることがあったんです。

 「辞めちゃダメだよ。売れるとか、売れないはあるんだけど、辞めない人が一番勝ちだから。辞めたら、そこで終わるんだよな」

 これだけは必ずおっしゃって、ゲームっぽくポチ袋をお渡しになるんです。

 結局、なかなか生活が苦しくて、固定収入がある仕事に流れて行って芸人を辞める。そういう人も多いので、そうさせないためのお金を皆さんに渡してらっしゃったんです。

 もちろん、それ自体はポチ袋であり、お金なんですけど「芸に邁進しなさい」というたけしさんからのメッセージだと僕は思っていて、今でも全てとってあります。

 親父が芸人だったというのもありますし、たけしさんとのご縁もいただきました。そういう文脈もあって、僕は芸人さんの粋な空気がとても好きなんですよね。

 よく「ダンサーなのに、なぜ吉本にいるの?」と聞かれたりもするんですけど、芸人さんに対するリスペクトの念も強いですし、生の芸を見ること、感じることが好きでもあるんです。

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「吉本坂46」の可能性

 僕個人の話になりますけど、上海、北京、香港、マカオ、ソウル、ロス。ヨーロッパでいうと、イタリア、フランス。あらゆる場所でステージに立ってきました。ニューヨークには2年ほど住んでたんですけど、そこで「ブルーマン」であるとか「ストンプ」のステージを見て、こんなにすごいものがあるんだと衝撃を受けました。

 笑えるし、華やかだし、セットもすごい。これが総合エンターテインメントなんだなと。そこが僕の一つの原風景でもありますし、最終的なエンターテインメントの答えは、そこにあるのではとも感じています。

 そして、今「吉本坂46」を見た時に、これだけの芸人さんや才能をお持ちの方が集まっている。僕が考えてきたエンターテインメントを具現化するならば、このグループしかないのかなとも感じているんです。それができる可能性を秘めていると。

 他のアイドルグループにはない人材がゴロゴロいるというか、いろいろな人が交ざっているからこそ、新しい形のエンターテインメントが作れると思うんです。

 ただ、一つ難しいのは皆さんが売れっ子で、すでにお忙しい立場の方が多いので、例えば、1カ月こもりきりでけいこをするとか、そういうやり方がなかなか難しいんですよね。

 テレビの仕事、劇場の出番、それでパンパンのスケジュールの中、なかなか集まれない。だからこそ、皆さん深夜に個人練習でスキルを磨いたりもしてらっしゃるんですけど、1日が24時間しかない以上、そこは正直、難しいポイントだとは思います。

 ただ、だからこそ、それぞれが強烈な個性を持っているわけだし、難しいけれど、こんなグループは絶対にほかにはない。何とか個人の強みを生かすシステムを作れれば、無限の可能性があると僕は感じています。

 先月から僕のプロデュース公演という形で、自分の色を出したステージを東京・よしもと有楽町シアターでさせてもらっています。

 歌とダンスというショーの要素と芝居を組み合わせて、あとは吉本なので笑いもプラスする。そういった形のエンターテインメントを今回は作ったんですけど、こういう中から何か新しいものが生まれないかと模索しているところです。

 たけしさんも辞めちゃダメとおっしゃってましたけど、やっぱりやっていく中で見つかるものもあるはずなので、それを何とか見つけていきたいなと。

 アイドルというくくりなんですけど、村上ショージさんもいらっしゃいますし、私も十分もうオッチャンですし(笑)。いけるところまで、とことんいってみたいと思っています。

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(撮影・中西正男)

■HIDEBOH(ヒデボー)

1967年10月7日生まれ。東京都出身。本名・火口秀幸。吉本興業所属。タップダンサーの父・火口親幸の元で74年からタップダンスを始める。世界各国のステージで経験を積み、タップダンスの第一人者に。北野武監督の映画「座頭市」でタップダンスシーンの振り付けを務め、自らも出演し注目を集める。アイドルグループ「吉本坂46」のメンバーとしても活動。吉本坂46定期公演「吉本坂46ができるまでの全記録~オーディション編~」をプロデュース。会場は東京・よしもと有楽町シアターで、公演日は12月4日、11日、18日。また「吉本坂46」メンバーが総出演するライブ「吉本坂46 誕生祭 2nd Anniversary Live」(12月26日、神奈川・KT Zepp Yokohama)も開催される。

芸能記者

立命館大学卒業後、デイリースポーツに入社。芸能担当となり、お笑い、宝塚歌劇団などを取材。上方漫才大賞など数々の賞レースで審査員も担当。12年に同社を退社し、KOZOクリエイターズに所属する。読売テレビ・中京テレビ「上沼・高田のクギズケ!」、中京テレビ「キャッチ!」、MBSラジオ「松井愛のすこ~し愛して♡」、ABCラジオ「ウラのウラまで浦川です」などに出演中。「Yahoo!オーサーアワード2019」で特別賞を受賞。また「チャートビート」が発表した「2019年で注目を集めた記事100」で世界8位となる。著書に「なぜ、この芸人は売れ続けるのか?」。

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1999年にデイリースポーツ入社以来、芸能取材一筋。2019年にはYahoo!などの連載で約120組にインタビューし“直接話を聞くこと”にこだわってきた筆者が「この目で見た」「この耳で聞いた」話だけを綴るコラムです。最新ニュースの裏側から、どこを探しても絶対に読むことができない芸人さん直送の“楽屋ニュース”まで。友達に耳打ちするように「ここだけの話やで…」とお伝えします。粉骨砕身、300円以上の値打ちをお届けします。

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