お笑いコンビ「フォーリンラブ」のバービーさん(36)。昨年から「FRaU web」でコラムも執筆し、ジェンダーや地域創生などについて語る一面も見せていますが、11月6日には初の著書「本音の置き場所」を上梓しました。執筆を通じて再認識した母親との関係。バービーと本名の自分との葛藤。そして、目指すべき今後。偽らざる本音を吐露しました。

「これを出して、大丈夫かな」

 去年の夏、ラジオに出演することになりまして。(フリーライターの)武田砂鉄さんがパーソナリティーを務めるTBSラジオ「ACTION」だったんですけど、そこで、普段だったらあまり出さないような話をしたんです。

 実は町おこしの活動をやっているとか、ジェンダーについてとか、エンターテインメントと自虐とか、コンプレックスとか。今まで芸人としては表に出してこなかった話をさせてもらいました。

 その時の反響がすごく大きくて、そこからそういった領域の雑誌取材とかが相次ぎまして。今のボディポジティブブームとか自己肯定感ブームともうまくかみ合って、去年の12月から「FRaU web」さんでコラムを書かせてもらうようになりました。そのコラムを元に、加筆して今回本を出すという流れになったんです。

 以前から、自己肯定感的な話はインタビューとかではしてたんです。「美醜は周りの人が決めるものだから、自分でわざわざコンプレックスに思わなくていいよ」みたいな感じで。ただ、なんていうか日の目を見ることはなく、本当に言ってるのか、ボケなのか、スレスレの感覚で受け止められていて(笑)。

 でも、ラジオでしゃべった時は、バービーとしての顔を剥いでしゃべった感じが新鮮だったみたいで、声もバービーっぽくなかったと。だから、余計にインパクトがあったのかなとも思っています。

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母の愛情

 本を出すにあたって、正直、私としてはどこか「これを出して、大丈夫かな」という感覚もあったんです。

 今までの芸人としての活動とは真逆のことを言ってるし、捉えようによっては、バラエティーにたてついてるようにも思われかねない。

 ヒヤヒヤする部分もあったんですけど、実際、読んでもらった方からは、特に女性の方から「言語化してくれてスッキリしました」「救われました」みたいな声をいただきまして。

 私は芸人として「自分の力でゲラゲラ笑かしたい」というよりも、なんかちょっと「クスッとしてもらえて気分転換のきっかけになれたら」と思って活動をしてるんですけど、物を書くということでも、結果、同じようなことが起こったんだなと。

 そう思うと、芸人の仕事で目指していることと最終的な出口は一緒というか、皆さんの反応で書くことのさらなる意義を見つけさせてもらった気がしています。

 原稿を書いていく中で、改めて自分と向き合って、幼少期とか、家族とか、地元とか、そういう部分を掘っていく感覚がありました。だから、そこで今一度気づくことは多かったと思います。特に、母親の愛情の深さ、これは書いていて改めて気づいたことでした。

 私が小学生くらいまでの頃は、今の時代に生きてたら、多分、“ヤバい子”スレスレのボーダーラインの子だったと思うんです。

 それを母親は、今改めて本を書くくらい深く考え見つめ直さなければ気づかないくらい、私に気づかせないでいてくれた。私が“ヤバい子”だと思わせない育て方をしてくれていた。コンプレックスにならないよう、のびのび育ててくれた。不要な傷を与えないというか。

 書いていく中で、母親にそこをストレートに聞いてみたんです。そうしたら「そんなに、気にしてないよ」とは言ってました。ただ、私も今の年齢だから分かりますけど、気にしてたんだろうなという空気は出ていました。そこでも、さらに母親の愛を感じもしました。

バービーと笹森花菜

 この仕事をする中で、バービーというものすごくパブリックなものがある。そして、もう一つ、本名の笹森花菜としてもずっと生きてて、笹森花菜としての思いも小さい頃から変わらず抱えてもいるんです。

 皆さんに知ってもらえているバービーという人格は笹森花菜とは全く違うものです。だから、その差を見た方は驚かれるとは思うんですけど、私自身は変わってないつもりです。

 バービーという人格ができた過程ですか?これはね、テレビ局で作られました(笑)。私はあんまり意図してないというか。昔から、他人の意見とか顔色を汲みすぎるというところはあると思います。いいように言えば、サービス精神という言葉にもなるんでしょうけど。

 それを吸収して、出すという能力には長けてたかもしれないですね。意図を汲んで、内在化させてやっていく作業は。

 家族の中でも、4人きょうだいの中で私が歳の離れた末っ子なので、ギスギスしてるところに私が入って和ませる潤滑油のような役割を積極的にしていたと思うんです。“このコミュニティーで必要な役割に私が回ろう”みたいな意識は小さな頃からあったと思います。

 自分は歳の離れた末っ子だから、その役割をやった時に、より一層みんなが和むし、やる威力が上がるという意識も思いっきりありましたしね(笑)。

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 ただ、そうやって作り出されたバービーと笹森花菜の間の葛藤というか、しんどくなることもありました。厳密に言うと、笹森花菜がしんどくなった。30歳を過ぎた頃だったと思います。

 そこで、笹森花菜が素直にやりたいと思うこと。例えば、急にロンドンに行ってガーデニングのフラワーショーを見たり、バービーの色合いにはない地元の町おこしに参加したり、バービーじゃない自分が本当にやりたいことを、ちゃんと自覚してやるようにする。それをやることで、だいぶ肩の力は抜けたと思います。

 すると、バービーの方にも変化がもたらされるというか、バービーにも人間味が増してきました(笑)。20代の頃のバービーはもっとガチガチでギラギラ。とんがってましたから。30代からは普通の人間の感覚を持ち合わせつつも「ここはガツンといった方がいいな」という部分は残っているという感じですかね。

 ま、時代も、コンプライアンスの意識も違いますけど、20代の頃は普通におっぱいをさわられ、私もさわって、グラビアアイドルも投げまくってという(笑)。女芸人でぶっ飛んだことをと言えば「森三中」さんの次はバービー。その流れに沿ったことをやらないとというのもあったと思いますけど、完全にやりきってました。

“両立”を目指す

 でも、それがあったから、今のバービー、そして、笹森花菜がいるんだと思いますし、その経験も大切なものだと思っています。

 それで言うと、そのムチャクチャやるバービーを作ってくださった瞬間というのがあって。それが2012年11月20日放送の「リンカーン」(TBS)だったんです。

 この頃はバービーとしての方向性が見いだせず、実は「芸人をもう続けられないかな」と思っていた時でもあったんです。

 そんな中、出してもらった「リンカーン」が芸人さんが60人くらい集ってハトヤホテルで宴会をするような企画だったんですけど、それだけの人数もいるし、なかなか前に出られない私に対して「ずん」の飯尾和樹さんが「なんでもいいから、行け!」と背中を蹴り飛ばすくらいの勢いで前に突き出してくれたんです。

 「ダウンタウン」さんが高砂の位置に居て、私は下の下の方の席にいたんですけど、前に出たらもうやるしかないので、そこからグラビアアイドルをなぎ倒し、そこらへんの芸人さんと全員キスをして、最後はハトヤの館長ともキスをして終わるという(笑)。

 その流れのきっかけをくれたのが飯尾さんだったんです。そこで痛感したのが、一歩を踏み出したら、周りは本当に達者な芸人さんばかりですから、あとは皆さんが“レール”を敷いてくれるんだと。「FUJIWARA」の藤本(敏史)さんが「こっちにもキスしたがってるヤツがおるぞ!」と次の展開を作ってくださったり。その瞬間、バービーの方向性が定まりました。

 つい先日、コラムでも書かせてもらったし、本も出るので、改めて飯尾さんにそのお礼を言ったんです。そうしたら、覚えてるのか、覚えてないのか分からない「おぅ…」みたいなリアクションでした。おそらくは、照れ隠しだったんだと思いますけどね。ま、純粋に覚えてなかったなら、それはそれで面白いですけど(笑)。

 こういう本を出したり、コラムでそういうことを書いてると、たまに「政治家になるんですか」とか「もう、文化人に舵を切ったんですか」と言われたりもするんです。だけど、できれば、私はこのまま“両立”が理想だと思っています。

 この二つは二律背反と言うか、どちらかをやったらどちらかがやりにくくなるものだとも思います。だからこそ、それをやってる人も少ない。

 やってる人も「キングコング」の西野(亮廣)さんとか、ボケじゃない人が多いんですよ。私みたいに完全なるボケで、両立という人はいないと思うので、それができたらカッコいいなと思うんです。

 こんなことを言ってても、やっぱり、今でもテレビで事細かに外国人男性とのアバンチュールをしゃべったりもしてますからね(笑)。より一層、どっちなんだということを言われそうですけど、これはねぇ、どっちも私なんです。

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(撮影・中西正男)

■バービー

1984年1月26日生まれ。北海道出身。本名・笹森花菜。ワタナベエンターテインメント所属。東洋大学文学部印度哲学科卒業。2007年、ハジメと男女コンビ「フォーリンラブ」を結成。下着のプロデュースやFRaU webなどでのエッセイ執筆、TBSラジオ「週末ノオト」のパーソナリティーなど幅広く活動。YouTubeチャンネル「バービーちゃんねる」も開設している。11月6日には、初の著書「本音の置き場所」を発売した。