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オンリーワンの二刀流・赤ペン瀧川、仕事が途切れないワケ

中西正男芸能記者
オンリーワンの道を行く赤ペン瀧川

 映画コメンテーターとしてTBS「グッとラック!」など多くの番組に出演する赤ペン瀧川さん(42)。本名の瀧川英次名義で俳優活動も行い、これまでTBS「下町ロケット」、テレビ朝日「ドクターX 外科医・大門未知子」など数々の人気ドラマにも出演してきました。3月14日、15日には連続ドラマ初主演を務めた作品の特別編としてBSフジ「警視庁捜査資料管理室スペシャル~明石幸男、最後の3日間~」が放送されます。まさにオンリーワンの道を行く瀧川さんですが、どの方向を向いても仕事が途切れない。そのワケについて語りました。

「せっかくだから」

 もともと俳優をやりたいとか、演じる仕事に興味があって…みたいな思いは、小さな頃から1ミリもなかったんです。

 道がガラッと変わったのは、高校1年の時でした。地元の駅で中学時代の先輩と久しぶりに会ったんです。今は演劇をされているということで「良かったら、けいこ場を見に来るか?」と言われまして。そこで、うっかり行ってしまったのが始まりでした(笑)。

 「ま、せっかくだから」ということで、完全にひやかしで行ったんです。でも、行ってみると、思っていたより楽しい感じだった。なので、何回かけいこ場に遊びに行ってたら、その劇団が神奈川、大阪、名古屋で公演をすると。

 ちょうど春休みで学校もなかったし「これは…手伝ったらタダで旅行に行けるな」と思ったんです。だから「裏方としてお手伝いできることがあったら、連れて行ってください」と言ったら、知らない間にチラシに出演者として名前が出てまして…。

 高1から高2にかけての春休み。3都市でやって東京に戻ってきたら、別の劇団からのオファーが2~3本入ってたんです。「ま、せっかくだから…」と行ったら、また声をかけていただいて。…気づいたら、今に至るという感じです(笑)。

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 もう一つ、赤ペン瀧川、すなわち映画コメンテーターの仕事なんですけど、こちらも本当にいつの間にかでして…。

 僕が28~29歳の時、今から十数年前ですが、その当時はツイッターとかもなくて、ミクシィを使ってたんです。それを使って、公演の告知をしたり日記をつけたり。

 そんな中、その頃は迷惑メールがすごく多くて、変な迷惑メールをミクシィの日記に載せて、そこに一行ずつツッコミを入れていくということをやり始めたんです。完全な暇つぶしとして。

 というのもね、当時の迷惑メールはクオリティーが高かったんですよ。これは迷惑メール業界ではすごく有名なものなんですけど、タイトルが「夫がオオアリクイに殺されて一年が経ちました」とか「信じられないかもしれませんが私はチンパンジーです」とか、非常にキャッチーで独創的なものがたくさんあったんです。

 だからこそ、ツッコミがいがあると言いますか、一行一行にツッコミを入れて日記にあげていたら、それこそ、あっという間に登録者数的なものが数千まで膨れ上がりまして。

 「へぇ~、こんなに迷惑メールを面白がる人がいるんだ」と思っていたら、急に「ライブをやりませんか」という連絡が来たんです。そんなのやったことがなかったんですけど、これも、ま、誘われたし「せっかくだから…」と。何の知識もなく、パソコンすら持っていない状況でトークライブをやり始めたんです。

 それが立ち見が出るくらいの盛況ぶりで。1年くらい続けたら「DVDを出しましょう」という話が来て、これも「せっかくだから…」と。さらに、DVDを出して3年目くらいに「テレビのレギュラーとして、映画紹介をやってくれないか」と言われまして。それも「せっかくだから」とお受けしてたら、映画コメンテーターになってました(笑)。

 結局、俳優も、映画コメンテーターも、誘われるがままにたどり着いたもので、特に目標もなく、ここまでやってきました。

 なので、映画コメンテーターを始めた頃、俳優仲間から言われました。「いったい、お前は何がしたいんだ?」と。でも、それが一番困るんです…。特にないんだよと(笑)。それでもここまでお仕事をさせてもらってきて、それは本当にありがたいことだと思っています。

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全部やって、それ以上

 仕事が途切れずにきた理由ですか?

 そうですねぇ…。なんだろうなぁ。ま、一つ、自分なりに特徴があるとすると、ものすごく準備は好きなんですよね。準備しないと気が済まないというか。

 俳優の仕事だと、どんなセットで、どんな立ち位置で、どんな状況で本番を迎えるか。それは現場に行って、実際に始まるまで細かくは分からない。だから作らずに臨むという人もいますけど、僕は現場までにあらゆるパターンを想定するんです。

 細かい状況を何パターンも考えて、思いつく限りのことをイメージします。ここは、自分でもちょっとおかしいんじゃないかと思うくらい、考えるんですよね(笑)。

 俳優にしても、映画コメンテーターにしても、基本的には画面の向こう側で見てくださっている方に喜んでもらう仕事なんですけど、画面を通す以上、喜んでくださっている姿をダイレクトに僕が見ることはできないじゃないですか。

 だから、とにかく目の前に実際にいる人。監督であったり、共演者であったり、スタッフさんであったり。そういう直接接する人、反応が分かる人を一人一人オレのファンにしていこう。その気持ちはあります。

 だから、監督が提案することは全部やりたいし、その上で、それ以上のことをやりたい。相手役に対しても、もちろん向こうの芝居を最大限尊重した上で、相手がもっと面白くなるように考える。流儀というと大げさですけど、そんなことは常にイメージしています。

“変な誘い”に乗る準備

 だから、なんていうのかな「どうしてもオレはこれをやりたい」という頑ななものはなくて、むしろ、それを持たない方が何となく楽しいのかなと。

 ブッシュパイロットという小型の飛行機に乗って辺境の地に物資を運ぶ仕事があるんです。その分野で有名で、ドキュメンタリーにもなったシリア・ハンターさんという女性パイロットがいるんですけど、その人が残した言葉で、すごく好きなのがあるんです。

 「人生とは何かを計画した時に起こる別の出来事である」

 これはものすごく腑に落ちる言葉だなと。彼女は本当に危険な場所を飛び回っていたので、もう少しシビアな意味で言ってるんですけど、この言葉には「なるほどなぁ…」とどこまでも納得させられるといいますか。

 自分の夢や目標を追い続けることはとても重要だと思うんですけど、途中でいろいろな寄り道をする。引っ張られて、道を外されていく。そんなことに、何となく魅力を感じるというか。僕の場合は、ですけど。

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 もちろん、俳優として面白い役をやらせてもらえたらうれしいです。面白い映画に出会えてそれを紹介できるのもうれしい。でも、それ以外の“変な誘い”にも、乗りたいなと。その準備はしておこうというのはありますね。

 この準備というのは「無理な発注を受けた時にいじけない」ということ。「明日までにこれだけの脚本を作ってくれ」みたいな絶対にできないことを言われたとしても、いじけたり、不機嫌になったり、投げ出したりせず、より面白いことって何だろうと考える。常にそう頭を流していくクセをつけていくことだと思っています。

 今、コロナウイルスで多くの演劇人が大変なことになっています。公演が中止になって、SNSで文句を書いてる人を見たりもするんですけど、今だからこそ、あらゆるものができない中で、より面白いものを発明する。ムチャな流れを面白く打ち返す。難しいことだけど、それができる、それをしようとする余裕を持っておきたいなと思います。

 だからね、結局、万が一ですよ、また良からぬ人が来て(笑)、何か“三足目のわらじ”を提示された時に、それを履かない自信は一切ないです。

 最近、趣味を作ったんですよ。あまりにも無趣味だったので、40歳を過ぎて、これではいけないんじゃないかと思って。そこで選んだのがサウナと蕎麦。

 本当に好きだし、この2つなら飽きずにずっと好きでいられると思ったんですけど、今はそれを趣味として“守っている”感じです。

 守るというのは“これを仕事にしない”ということです。これで「蕎麦の本でも出しませんか?」となったら、途端に全国の蕎麦屋さんに行かないと気が済まないし、蕎麦好きをうならせるコメントをしたくなるに決まってるし、誰よりも蕎麦に詳しくないと失礼という責任感も生まれちゃう。一気に“準備しないと気が済まないモード”が発動しますから(笑)。そうすると、もうね、趣味じゃなくなるんです。

 趣味を公言した瞬間に「それを仕事にしない」戦いも始まっているというか。このサウナブームの中で公言してしまっているのは、かなり危ない橋を渡っています(笑)。正直、三足目として「サウナ、履きますか?」って言われたら、断る自信はないですもん。

 立ち食い蕎麦の「富士そば」のCMなんて来たらどうしようと、これも不安でしかないです(笑)。そうなったら、とことん富士そばのことを知り尽くそうとするでしょうし、結果“富士そばプレゼンター”的なニッチな謎の肩書を背負うようになったら、もう、完全に手遅れです。絶対に趣味には戻れませんから(笑)。

(撮影・中西正男)

■赤ペン瀧川(あかぺんたきがわ)

1977年12月27日生まれ。神奈川県出身。映画コメンテーター、俳優、演出家。ワタナベエンターテインメントに文化人として所属。俳優活動は本名の瀧川英次名義で行い、これまでTBS「下町ロケット」、テレビ朝日「ドクターX 外科医・大門未知子」、フジテレビ「コンフィデンスマンJP」など人気作品に多数出演。3月14日、15日には2018年に連続ドラマ初主演を務めた作品の特別編としてBSフジ「警視庁捜査資料管理室スペシャル~明石幸男、最後の3日間~」(両日とも午後9時スタート)が放送される。

芸能記者

立命館大学卒業後、デイリースポーツに入社。芸能担当となり、お笑い、宝塚歌劇団などを取材。上方漫才大賞など数々の賞レースで審査員も担当。12年に同社を退社し、KOZOクリエイターズに所属する。読売テレビ・中京テレビ「上沼・高田のクギズケ!」、中京テレビ「キャッチ!」、MBSラジオ「松井愛のすこ~し愛して♡」、ABCラジオ「ウラのウラまで浦川です」などに出演中。「Yahoo!オーサーアワード2019」で特別賞を受賞。また「チャートビート」が発表した「2019年で注目を集めた記事100」で世界8位となる。著書に「なぜ、この芸人は売れ続けるのか?」。

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1999年にデイリースポーツ入社以来、芸能取材一筋。2019年にはYahoo!などの連載で約120組にインタビューし“直接話を聞くこと”にこだわってきた筆者が「この目で見た」「この耳で聞いた」話だけを綴るコラムです。最新ニュースの裏側から、どこを探しても絶対に読むことができない芸人さん直送の“楽屋ニュース”まで。友達に耳打ちするように「ここだけの話やで…」とお伝えします。粉骨砕身、300円以上の値打ちをお届けします。

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