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品川祐を作った“2種類の悔しさ”

中西正男芸能記者
今の思いをストレートな言葉で語った「品川庄司」の品川祐

 映画監督、作家としても活動するお笑いコンビ「品川庄司」の品川祐さん(47)。クラウドファンディングで製作資金を募る映画「リスタート」(来春、沖縄国際映画祭から公開予定)でも監督を務めています。オンラインサロン「シナガワえんためクリエイト」やYouTubeなど新たな手段での発信にも乗り出していますが、品川さんを衝き動かしてきた原動力は“2種類の悔しさ”だと言います。

映画監督と芸人

 中学の頃からレンタルビデオが盛んになってきて、借りてきて映画を見る。高校を中退してからは一日中、映画館にいる。その頃から「いつか映画を撮りたい」という思いはしっかりとありました。

 そんな中、17歳の時でした。「ダウンタウン」さんの漫才を見て、芸人への思いが強烈に出てきたんです。また、ちょうどその時期にビートたけしさんが北野武として映画「その男、凶暴につき」(1989年)を監督された。

 芸人の成功って、たとえば冠番組をもつとか、情報番組の司会をするとか、人によっていろいろな形があると思うんです。それが僕の中では、映画だった。芸人として売れて、映画を撮る。映画と芸人という二つの思いがリンクする、僕にとっての一番の形というか。

“ひな壇”から映画監督

 そう思っていると、ラッキーなことに28歳の時にオムニバスのショートムービーを撮らせてもらったんです。ここで漠然としたものが、より一層、濃くなりました。

 お笑いで言うと、漠然とスターになりたいと思ってNSC入る。そこから実際にテレビ局なんかに出入りできるようになると、スターへの道筋がよりハッキリしてくるというか、現実味が増していく。それと同じでショートムービーを撮らせてもらったことで、映画への思いがより増しました。

 よく言ってるんですけど、いわゆる“ひな壇”から映画を撮ったのはオレだけじゃないかなと(笑)。芸人として自分の番組を持つところまで行って、映画監督というのはありますけど。たけしさんも、松本(人志)さんも、内村(光良)さんも、みなさん早くから自分の番組を持ってらっしゃいますからね。

新たな試み

 今回の「リスタート」は北海道の下川町を舞台にした作品で、資金集めをクラウドファンディングでやるということも含め、吉本興業から打診があったんです。

 最初、話があった時は「また映画を撮らせてもらえるんだ。さらに、新しいこともさせてもらえる!」と思ったんですけど、よく考えたら「資金集めも全部オレがやるっていうことだよな…」と(笑)。

 8月21日から撮影は始まったんですけど、まだ資金集めは続いていて、9月末までは募っています。撮影は始まっているけど、まだお金は引き続き募るという流れがあることも知らなかったし、やってみての発見がいろいろありました。

 クラウドファンディング以外にも、少し前からネット上で人が集うオンラインサロンもやりだしましたし、YouTubeに映像を作ってアップするというのも始めました。それぞれに思いを持った方々が集まってきてくれて、まだ小さいですけど、楽しい感じでプロジェクトがまわりだしたなと感じています。

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悔しさのパワー

 今から十数年前、ブログを始めたり、小説を書いたりした時は、それがどんなに話題になっても、売れても、批判の声が大きかった。仲間は誉めてくれたりもするんですけど、一方で「文化人気取りか」「どこに向かっているの?」みたいな声もあらゆるところから聞こえてきました。

 ま、当時は、バリバリいきがってましたからね(笑)。より、そういうことも言われたんだろうし、こちらもそれをあえて拾いにいくというか、敏感に反応していたところもあったと思います。

 一つ一つの声に怒りもダメージもあるんですけど、やっぱり“悔しい”という思いは、なんだかんだでパワーになるんですよね。

 小説を書いた時も、映画を撮った時もそうですけど、本当に正直な話、そっちで名前を上げてテレビのMCができればみたいなことも考えました。逆輸入的な感じで。

 でも、小説が売れてもMCの話は来ないし、映画撮っても一向にやらせてくれない。まだダメなのか。じゃ、もっとやらないといけないのか。いろいろな思いが交錯する中で、悔しさのパワーでとにかく前に進む。

 この悔しさの根本は、とにかく世に出たい、認められたいという思い。もっと平たく言うと、売れたいという一点です。売れたいけど、ままならない。悔しい。だから、何とかして頑張る。スッと言ってしまうとそういう悔しさの構図でした。ただ、自分としてはすごくしんどい日々でしたけどね。

 今も、悔しさのパワーはあるんです。ただ、若い頃とは種類が違うというか。たとえば、面白いものを見た時に「うわ、こんなのがあるんだ…。オレも面白いものを書かなきゃ」と思う。テレビで面白い人を見たら「オレも面白いことを言いたい」と思う。

 今はクオリティーの高いものへの思いというか、自分がそこができていないならば頑張ってやらないといけない。そこが源の悔しさに、悔しさの質が変化していると感じています。

 もし、昔のオレが今YouTubeをやるとなったら、登録者数だとか、再生回数だとか、そこだけにいっちゃったような気がするんですよね。

 もちろん、それが悪いわけじゃないし、皆さんと一緒にチームとして動画を作ったりしているので、数字が出ない、採算が合わないではいけない。結果も出さないといけないんですけど、まず一番はクオリティーの高いものを作る。今は、そうなりましたね。

今がある意味

 「もう一回人生をやり直すなら」。そんなことをよく言ったりするじゃないですか。あそこでもっとこうしていたらとか、こうなっていたらとか。それも考えないことはないですけど、全てがあっての今だとつくづく思いますね。

 映画も撮らせてもらって、芸人としてもしっかりと汗がかけるようなウエイト重めの企画をまわしてもらえている。さらに、オンラインサロンやYouTubeで好きなこともできている。今は、本当に良い感じでさせてもらえているなと思うんです。

 もし、芸人としていち早く冠番組を持っていたり、ゴールデンタイムでMCをやったりしていたら、映画にはたどり着いていないかもしれない。映画も小説も批判の声を浴びることなく認められていたら、もしかしたら、もう芸人をやっていないかもしれない。

 結果的にですけど、全部が絶妙な塩梅だったというか、その微妙な流れがあったからこそ、今がある。そう考えると、本当に有り難いことなんだなと。

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 今回も監督をさせてもらい、新しいこともたくさんやっているけど「どこに向かっているの?」といった声も耳に入ってこなくなりましたしね。

 SNSやネット的な動きを今はみんながやっているし、時代が変わった。これは間違いなくありますよね。時代の形がそういう声を産まなくなった。

 あとは、年齢でしょうね。歳をとって、オレが気にしなくなったのか。もしくは、実は、山盛り言われているんだけど、純粋に加齢であまり聞こえていないのか(笑)。何にしても、とにかく今は本当に生きやすくなりました。

(撮影・中西正男)

■品川祐(しながわ・ひろし)

1972年4月26日生まれ。東京都出身。NSC東京校1期生。95年、同期の庄司智春とお笑いコンビ「品川庄司」を結成する。品川ヒロシ名義で小説「ドロップ」「漫才ギャング」などを執筆。また、映画「ドロップ」(2008年)、「漫才ギャング」(11年)、「サンブンノイチ」(14年)、「Zアイランド」(15年)で監督を務める。オンラインサロン「シナガワえんためクリエイト」、YouTubeなどにも活動の幅を広げている。来春の沖縄国際映画祭でプレミア上映が予定されている映画「リスタート」では監督に加え、クラウドファンディングでの資金集めにも初挑戦している。クラウドファンディングは9月30日まで行われている。

芸能記者

立命館大学卒業後、デイリースポーツに入社。芸能担当となり、お笑い、宝塚歌劇団などを取材。上方漫才大賞など数々の賞レースで審査員も担当。12年に同社を退社し、KOZOクリエイターズに所属する。読売テレビ・中京テレビ「上沼・高田のクギズケ!」、中京テレビ「キャッチ!」、MBSラジオ「松井愛のすこ~し愛して♡」、ABCラジオ「ウラのウラまで浦川です」などに出演中。「Yahoo!オーサーアワード2019」で特別賞を受賞。また「チャートビート」が発表した「2019年で注目を集めた記事100」で世界8位となる。著書に「なぜ、この芸人は売れ続けるのか?」。

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1999年にデイリースポーツ入社以来、芸能取材一筋。2019年にはYahoo!などの連載で約120組にインタビューし“直接話を聞くこと”にこだわってきた筆者が「この目で見た」「この耳で聞いた」話だけを綴るコラムです。最新ニュースの裏側から、どこを探しても絶対に読むことができない芸人さん直送の“楽屋ニュース”まで。友達に耳打ちするように「ここだけの話やで…」とお伝えします。粉骨砕身、300円以上の値打ちをお届けします。

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