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植村花菜、ニューヨークでの悩みは“上沼ロス”

中西正男芸能記者
ニューヨークを拠点に活動し、昨年アーティスト名をKa-Naに改名した植村花菜

 「トイレの神様」が大ヒットを記録したシンガーソングライターの植村花菜さん(36)。2016年からニューヨークに拠点を移し、昨年アーティスト名もKa-Naに改名しました。結婚・出産も経て、住む環境もガラリと変わりましたが「日本語だからこそ伝わるメロディーがありますし、それを発信していけたら」と晴れやかな笑顔を見せます。そして、意外な“悩み”があることも明かしました。

きっかけはアメリカでのロケ

 今はニューヨークが生活の基盤になっていて、日本には年に2~3回帰ってくる感じです。ニューヨークには2016年のクリスマスから住んでいるんですけど、いろいろな経験を経て、住むことに決めました。

 2011年の夏、NHKの番組でテネシー州にあるナッシュビルに行かせていただいたんです。それが初めてのアメリカでした。実は、私のおばあちゃんとの思い出の曲が「テネシーワルツ」で「トイレの神様」もそういう感じの曲にしたいと思って作ったんです。その話を耳にしたNHKの方が「思い出の曲のルーツを探しにナッシュビルに行きませんか?」と言ってくださいまして。

 実際にナッシュビルに行って、自分でも驚くほど刺激を受けたんです。見るもの聞くもの新鮮で、文化が全然違うのが面白くて。もちろん、その時はお仕事として行かせていただいてますので、ありがたいお話、泊まるところも、食べるものも、言葉も、コーディネーターさんやスタッフさんがいらっしゃって、何の不自由もなかったんです。

 それだけ段取りしてもらった中でもこんなに刺激があるんだったら、一人だけでリアルな旅として来たら、いったいどれだけ刺激があるんだろうと。なので、ロケから帰国してすぐに決めたんです。来年は自分だけで1カ月以上アメリカを旅しようと。そして、実際、翌2012年に2カ月ほどかけてアメリカ横断の旅をしました。

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ニューヨークでの衝撃

 行く先々でストリートライブをやったり、ライブハウスで飛び込み的に歌ったり。そして、旅の最後に着いたのがニューヨークでした。そこで、他の街とは明確に違うことがあったんです。

 というのは、どこの街でも私は日本語で日本の歌を歌っていたんです。その時の自分の実力をストレートに見てもらって、アメリカの人がどんな反応をするのか。それを見たいという思いがありまして。すると、ほとんどの人から「歌もギターも素敵なんだけど、なぜ日本語で歌うの?アメリカなんだから、英語で歌えばいいのに」と言われたんです。

 ただ、ニューヨークではそういうことを一切言われなかった。逆に「君の音楽はアメリカにはないから面白いね」と興味を持ってくれる人が多かった。その時に思ったんです。英語も話せなくて、アメリカについても知らない自分でも道が拓けるチャンスがニューヨークならばあるかもしれない。どこの土地よりも、それがあると思えたんです。

思いと現実

 2カ月の旅を終えて帰国したんですけど、気持ち的にはすぐにでもニューヨークに行きたかったんです。その時で28歳、デビュー7年目。すでにいただいているお仕事もあるし、デビューから10年というのは大きな節目だし、とにかくそこまでは日本で一生懸命頑張ろうと。

 応援してきてくださったファンの皆さんやスタッフの皆さんと10周年のお祝いをしっかりやって、お礼を伝えて、16年のクリスマスに、主人と息子と3人でニューヨークに引っ越したんです。

 ただ、以前一人旅で来た時とは違って、結婚もしているし、当時1歳の息子もいる。これがすごく大きかったですね。もちろんニューヨークにいる刺激もあるにはあるんですけど、とにかく子育てに追われるので、それをするので手いっぱいになる。子育てをしている場所が関西からニューヨークに変わっただけ。そんな感じだったんです。

 子育てはもちろん大事なことだし、そこをおろそかにするつもりはないんですけど、少しは能動的に動ける状況を作らないといけないと思って。引っ越しから3カ月ほど経ってから息子をデイケアみたいなところに週2回だけ預けて、図書館がやっているイングリッシュクラスに通い始めたんです。

自分を上書きする日々

 そこから、やっとニューヨークに住んでいる感覚も強くなっていったんですけど、そうなると、あれもこれもやりたくなる。曲作りもあるし、ライブの準備もあるし、まず英語が全然しゃべれない。なので、息子が寝てから毎日3時間は必ず英語の勉強をする。そんな感じで「これだけは毎日絶対にやる!」ということをいっぱい作ってやっていたら、半年ほど経って体調を崩しまして…。

 そこで踏ん切りがついたというか「これは、やろうとしていることが多すぎるんだ」と考え方を変えたんです。やりたいことが10個あったとしても、その中で「今、本当にやらないといけないことはいくつある?」と改めて自分に問うというか。そうやって、本当にやるべきことだけ上位3つだけ選んで、それ以外はやらないという決断をしたんです。すると、一気に時間ができて、余裕ができて、やっとニューヨークの景色が見られるようになりました。最初の半年ほどは、全てにおいて試行錯誤の日々でしたね。

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 そんな毎日を過ごす中で、いろいろと感覚も変わりました。例えば、ニューヨークって地下鉄が時間通りに来ることがまずないんです。最初は「ちゃんと来てよ」と戸惑いましたけど、それに慣れてくると、時間に寛容になるというか。

 日本は電車が確実に時間通りに来ますよね。だから、例えば午後3時10分の電車に乗るとしたら、遅れそうだったら走るし、それでも間に合いそうになかったらイライラもする。でも、ニューヨークでは「どうせ電車は時間通りに来ないから」という感覚になって「ま、来たのに乗ったらエエか」という思考になるんです。

 すると、いろいろな局面で時間に縛られる感覚が薄れていくというか、心のイライラがだんだん減っていったりもするんです。人との待ち合わせでも、30分くらい待つのは日常茶飯事。なので、待たされてもいいように、待っている間にやることを準備しておくクセもつきました。本を読むとか、送らないといけない仕事のメールを返すとか。日本にいた時とは違う感覚が、やっぱり日々生まれているなと感じています。

 あと、すごく素敵だなと思うのは、息子と一緒に電車に乗ったら、ほぼ100%誰かが席を譲ってくれるんです。ベビーカーを担いで階段を上がろうとしたら、そこでも必ず誰かが「手伝いましょうか」とすぐに声をかけてきてくれる。この空気というのは、素晴らしいと思いますし、大いに吸収すべきところだと思っています。

自分だからできること

 シンガーソングライターの方にもいろいろなタイプがいらっしゃって、いろいろな曲の作り方があります。ただ、私の場合は思いっきり自分の生活が音楽に反映されるんです。なので、環境が変わって自分も変わると曲も変わる。結婚して、出産して、ニューヨークに行って。作る音楽はどんどん更新されていると思います。

 できることなら、最低でも10年はニューヨークで勉強して、自分の変化とも向き合いたいと思っています。と同時に、私のベースというか、もともと馴染んできたJ-POPというものを世界に広めてもいきたい。日本語だからこそ生まれてくるメロディーがあるし、表現できるものがある。日本人として生まれてJ-POPで育った自分だからこそ、ニューヨークで発信できるものがある。そして、ニューヨークで得たものを日本に発信する。そんな2つのことができたらなと考えています。

 ただね、残念なことも一つありまして…。私、上沼恵美子さんが大好きなんです!この世の中の全ての女性の中で一番好きなのが上沼さん。日本にいたら「クギズケ!」(読売テレビ・中京テレビ)、「快傑えみちゃんねる」(関西テレビ)とかをいつも見ていたんですけど、ニューヨークだと、なかなか見られない。これはね、本当に、本当に大きな問題です…。

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(撮影・中西正男)

■植村花菜(うえむら・かな)

1983年1月4日生まれ。兵庫県川西市出身。8歳のときに映画「サウンド・オブ・ミュージック」を見て歌手になることを決意する。路上ライブやライブハウスでの活動を続け、05年にメジャーデビュー。2010年にリリースした「トイレの神様」がロングヒットし注目を集める。同年、日本レコード大賞の優秀作品賞と作詩賞を受賞、NHK紅白歌合戦にも出場する。13年にジャズドラマー・清水勇博と結婚。15年には第1子となる長男を出産する。16年から家族でニューヨークへ移住。昨年、植村花菜からKa-Naに改名。ミニアルバム「Happiness」を今夏リリース予定。またFM COCOLO「PRIME STYLE SATURDAY」(土曜、午前10時~午後2時)内のコーナー「Martin Times〜It’s a Beautiful Day」に2月いっぱい出演する。

芸能記者

立命館大学卒業後、デイリースポーツに入社。芸能担当となり、お笑い、宝塚歌劇団などを取材。上方漫才大賞など数々の賞レースで審査員も担当。12年に同社を退社し、KOZOクリエイターズに所属する。読売テレビ・中京テレビ「上沼・高田のクギズケ!」、中京テレビ「キャッチ!」、MBSラジオ「松井愛のすこ~し愛して♡」、ABCラジオ「ウラのウラまで浦川です」などに出演中。「Yahoo!オーサーアワード2019」で特別賞を受賞。また「チャートビート」が発表した「2019年で注目を集めた記事100」で世界8位となる。著書に「なぜ、この芸人は売れ続けるのか?」。

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1999年にデイリースポーツ入社以来、芸能取材一筋。2019年にはYahoo!などの連載で約120組にインタビューし“直接話を聞くこと”にこだわってきた筆者が「この目で見た」「この耳で聞いた」話だけを綴るコラムです。最新ニュースの裏側から、どこを探しても絶対に読むことができない芸人さん直送の“楽屋ニュース”まで。友達に耳打ちするように「ここだけの話やで…」とお伝えします。粉骨砕身、300円以上の値打ちをお届けします。

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