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瀬戸康史、迷いの6年を支えた2人

中西正男芸能記者
2人の恩人について語る瀬戸康史

キュートなルックスと高い演技力で舞台、映画、ドラマと幅広く活躍する俳優・瀬戸康史さん(29)。現在放送中のフジテレビ系ドラマ「海月姫」(月曜、午後9時)では“女装美男子”を演じています。キャリア初の女装役でさらに芝居の幅を広げていますが、ここに至るには、6年の苦悩、そして、その期間を支えてくれた2人の存在があったと言います。

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初の女装役

今回の「海月姫」を前に、女性のラインを出すため、グッと体重を絞りました。1カ月半で6キロ。1日3食を1食にするという、非常にシンプルな方法で(笑)。最初は空腹がつらくて、つらくて…。結果、つまみ食いとかいっぱいして、トータル一緒という時期もありましたけど(笑)、少しずつ1食に慣れていって、50キロまで削りました。大人になってから、今が一番軽いですね。

ただ、それでも、共演者はほとんど女性なので、パッと自分の姿を見ると、やっぱり骨格が違うんですよ。改めて、自分は男なんだなとも思いました(笑)。しかも、最初、収録が始まった頃は、並行して、武士の役もやっていて…。女装の役と武士の役。両極端なことを同時にやっていたので、より一層、女装をしていても“男感”があったんだとも思います。

でも、そうやって同時にいろいろな役をするくらい、お仕事がいただけるのは何よりありがたいことですし、感謝しかないと思います。

人を遠ざけた6年

ちょっと長くなってしまうんですけど、僕は福岡出身で、17歳で東京に出てきました。福岡にいた時は、自分で言うのもなんなんですけど、とても社交的な人間だったんです。ただ、上京して知り合いもいない。土地勘もない。全てに不慣れ。そんなことが重なって、ずっと一人で殻に閉じこもる。そんなサイクルができあがってしまったんです。

人との接触を避ける。極力、一人の時間に逃げ込む。そういう自分がイヤだったんですけど、一方「これはこれで気楽でいいよな…」という気持ちの落としどころも見いだして…。イヤなんだけど、自分で納得しにかかる。でも、やっぱりそんな自分はイヤ。両方の思いの間を延々と行き来しているような。結果、ほぼ人に心を開かないような時期が6年ほど続きました。

そこから、ターニングポイントと言いますか、一気に風向きが変わったのがフジテレビ系のドラマ「TOKYOエアポート~東京空港管制保安部~」(2012年)だったんです。その収録が本当に楽しくて、スタッフさんともとても仲良くなった。それまでそういう場を避けていたのに、スタッフさんだけの飲み会にも参加してみようかと。行ったら、それがまたすごく楽しかったんです。そこで一気に解放された気分になって、明らかにそれまでの自分とは違う自分が出てきたと思います。

2人の恩人

一気にそちらに導いてくれた「TOKYO―」のスタッフさんにはただただ感謝なんですけど、何とも言えない6年の時間。今考えても、6年、長いなぁと思いますけど(笑)、その時間を支えてくれた方が2人いらっしゃいまして。それが山寺宏一さんと「南海キャンディーズ」の山里亮太さんなんです。

上京してきて、テレビ東京系「おはスタ」という番組に木曜レギュラーとして出してもらうことになりまして。その時にお世話になったのが2人の“山ちゃん”でして。自分の殻に閉じこもっていた時間ながら、2人には正直な自分の思いを聞いてもらっていました。こんな自分はイヤだと思いながら、そこから抜けられず、それでいいと思う自分もいる。家族にすら、いや、家族だからこそ、弱みを見せたくないという思いもあって、家から電話がかかってきたとしても「大丈夫!!」というところだけをアピールして、大丈夫じゃないところは言わない。そして、そこを2人に聞いてもらう。その度にご飯に連れて行ってもらいながら。

「おはスタ」を卒業してからも僕の舞台を観に来てくださったり。そして、その度に山寺さんが言ってくださるんです。僕のことを「誇りに思う」と。あれだけすごい表現者である山寺さんでも、ずっと仕事に対する恐怖心があると。そんな正直な思いも言ってくださった上で、僕のことを「誇りに思う」と言ってくださる。この言葉は、すごく、すごく、すごく、背中を押してくれています。

山里さんとは人見知りという共通点もあるんですけど、ずっと「人見知りは才能だ」と言ってくださって。「人見知りというのは、人よりもいろいろなところにアンテナを張っているからこそのこと。それだけアンテナがあるということは、気を遣える人ということなんだよ。だから、人見知りは決してネガティブなものじゃない」と。ま、この言葉、山里さんはタモリさんからの受け売りだったそうですけど(笑)、本当に力をもらいました。

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6年の意味

今から思うと、あの6年というのは“耐えることを学ぶ時間”だったのかなと思っています。役者をやっていると、毎回、作品・役についての生みの苦しみを味わいます。それに真正面から向き合う忍耐力が6年で培われたのかなと。充実して、楽しい、楽しいの毎日だったならば、今のこの耐久力にはなっていないだろうし。ただ、何の救いもなかったら、6年を待たずして音を上げていたかもしれない。自分を向き合う時間を成立させてくれたのが、やっぱり2人の山ちゃんだったんだなと思っています。

僕ができる恩返しがあるならば、まずは何より活躍するということ。そして、本当にたくさんご飯をごちそうになったので、差し出がましいですけど、こちらが一度くらいごちそうできればなと思います。山寺さんが連れて行ってくれるのは山寺さんの地元・仙台の食材を生かしたお店が多いので、逆に、僕の地元の福岡のものを生かしたお店にお連れするのも良いのかなと。山里さんですか?山里さんはね、どこのお店というよりも、いつも、いつも、ベロベロに酔っぱらって人の悪口を言っているので、そこにとことんお付き合いすることかなと思っています(笑)。

■瀬戸康史(せと・こうじ)

1988年5月18日生まれ。福岡県出身。ワタナベエンターテインメント所属。ドラマや映画、舞台など幅広く活躍中。ドラマNHK連続テレビ小説「あさが来た」やNTV「先に生まれただけの僕」、映画「ミックス。」や舞台「陥没」などに出演。17年、主演舞台「関数ドミノ」で文化庁芸術祭演劇部門新人賞を受賞する。現在はNHK BSプレミアム「幕末グルメ ブシメシ!2」(水曜、午後11時)フジテレビ系ドラマ「海月姫」(月曜、午後9時)に出演中。

芸能記者

立命館大学卒業後、デイリースポーツに入社。芸能担当となり、お笑い、宝塚歌劇団などを取材。上方漫才大賞など数々の賞レースで審査員も担当。12年に同社を退社し、KOZOクリエイターズに所属する。読売テレビ・中京テレビ「上沼・高田のクギズケ!」、中京テレビ「キャッチ!」、MBSラジオ「松井愛のすこ~し愛して♡」、ABCラジオ「ウラのウラまで浦川です」などに出演中。「Yahoo!オーサーアワード2019」で特別賞を受賞。また「チャートビート」が発表した「2019年で注目を集めた記事100」で世界8位となる。著書に「なぜ、この芸人は売れ続けるのか?」。

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1999年にデイリースポーツ入社以来、芸能取材一筋。2019年にはYahoo!などの連載で約120組にインタビューし“直接話を聞くこと”にこだわってきた筆者が「この目で見た」「この耳で聞いた」話だけを綴るコラムです。最新ニュースの裏側から、どこを探しても絶対に読むことができない芸人さん直送の“楽屋ニュース”まで。友達に耳打ちするように「ここだけの話やで…」とお伝えします。粉骨砕身、300円以上の値打ちをお届けします。

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