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家事えもん、成功のカギと葛藤

中西正男芸能記者
家事えもんとしても活動する、ピン芸人の松橋周太呂さん

日本テレビ系「あのニュースで得する人損する人」で、料理や掃除が得意な“家事えもん”としても知られるピン芸人の松橋周太呂さん(32)。「『ダウンタウン』さんと初めて共演したのも、お笑いじゃなくて焼きそばを食べてもらう仕事。『面白い』じゃなくて『おいしい』って言ってもらいました」と苦笑いしつつも、家事関連の仕事で引っ張りだことなっています。家事芸人として一気にブレークしましたが、成功のカギ、そして、今抱える葛藤についてストレートに語りました。

芸人仲間でのノリが…

今、仕事の割合で言うと、家事絡みが99%。お笑いは1%です(笑)。エコフェスティバルとか、デパートの催物会場とかで30分から1時間くらい、家事関連のトークイベントをやるみたいな。それが主な仕事ですね。あとは、取材とか、雑誌に連載を書いたり。

そもそも、母子家庭だったので、家では料理をしてたんです。芸人になって20歳から一人暮らしをするようになって、ま、芸人が集まると、家で鍋とかをやったりするんですよ。その方が外で食べるよりもお金がかからないですしね。その場が僕の家だったりすることが多くて、ずっと鍋を作ってたんですけど、毎回鍋だとさすがに飽きてくる。

なので、ま、ミニコントじゃないですけど、鍋と同じくらいの材料費で、カレーとかは作れるじゃないですか。カレーもルーを変えれば、ビーフシチューにもできる。なので、鍋と思ってカレーやビーフシチューを作ったりするようになったんです。「鍋と思って来たら、ビーフシチューかい!!でも、うまいけど!!」みたいなハーフドッキリ、ハーフうれしいみたいなことをやり始めて。

あと、同期でモスバーガーが好きというヤツもいたので、ま、ハンバーグもそれ自体は大してお金はかからないので、モスバーガーを僕なりに再現して家で待っていたり。そういう料理を使ったボケというか、でも、みんなが喜んでくれること。そういうのをやるようになっていったんです。

ポイントはズボラ

掃除も、僕、もともとだらしなくて、今でも本当にズボラなんです。だから、汚れもためちゃうタイプなんですけど、ためた汚れってなかなか落ちない。だからこそ、ちょっとでも手間がかからず、一気に掃除ができるような洗剤だとか道具を探すんです。そして、芸人って、みんな東急ハンズとかドン・キホーテに異常に行くんですよ。というのは、コントの小道具や衣装を探すために。なので、その帰りに新製品の洗剤を見たりしているうちに詳しくなっていったという感じなんです。

そんな感じで普通に生活をしていたんですけど、それが世に出るきっかけとなったのは、4年ほど前の「アメトーーク!」(テレビ朝日系)でした。若手主体のプレゼン大会。そこに出演することになったんですけど、本当に心から語れることじゃないと付け焼刃ではトークが成立しないなと。じゃ、何が本気で語れるのか。突き詰めて考えると、自分は「主夫になりたい」という思いがあるなと。

当時はトリオ(ジューシーズ)を組んでましたけど、劇場とレギュラー番組で一人暮らしができるくらいは稼ぎがあったので、経済的に相手に依存しっぱなしでなくても良い。ご飯も作って待っている。手際よく掃除もする。芸人をやっているので、もしかしたらいつかドカンと売れるかもしれないという“宝くじ感”もある。キャリアウーマンで自分の仕事をしっかりしたい人にとっては、かなり良い主夫候補じゃないですかと。実際、こうやって掃除をしていますとか、こんな料理を作っていますとか具体的な説明をしてプレゼンをしたんです。それが“掃除大好き芸人”と“おもてなし大好き芸人”につながっていって、そこで家事ができる芸人というイメージを一気に広めてもらったんです。

ストレートに思いを語る松橋さん
ストレートに思いを語る松橋さん

ただ、僕の場合は料理人の経験もないですし、あくまでも料理が好きなだけ。包丁の技術とかも全然ですし。僕より、他の料理が得意な芸人さんの方が純粋に料理が上手ですし、主婦の皆さんの方が確実に僕より上手です。ただ、プロとして基本を積み重ねてきたわけではないので「これとこれを混ぜたら、どうなるかな」とか、そういうことが何の抵抗もなくできる。そして、上手ではない僕がやっているんだから、僕にできて、皆さんにできないことはない。それは自分が家事の仕事をやるにあたり、いつも思っていることではあります。

掃除でも、料理でもそうですけど、要は“どれだけ楽できるか”。僕の行きつくところは、それなんです。例えば、高額な洗剤だったとしても、わずかな量ですぐに汚れが落ちて、薬局に階に行く回数も減ったら、結局、それが楽でお得ということじゃないのかなと。

面白いではなく、おいしい

皮肉なものというか、トリオの時は5年連続「キングオブコント」で準決勝どまり。なかなか突き付け抜けないというか、明石家さんまさんや「ダウンタウン」さんとご一緒する機会もありませんでした。ただ、妙なもので、家の中をきれいにしたり、料理を作るようになったら、共演できるようになりました(笑)。ただ「ダウンタウン」さんの前では焼きそばを作って「面白い」じゃなくて「おいしい」と言ってもらいました。ま、直接誉めてもらっているので、もちろん、うれしいのはうれしいんですけど…という感じです(笑)。

今、考えているのは「芸人なんだから、何とか、今の仕事に笑いの要素を入れられたらなぁ」ということです。今は、例えば「踊る!さんま御殿!!」(日本テレビ系)とかに出していただいても、まず、伝えないといけない家事のお得情報や知識を言うので精いっぱい。そこに笑いを入れ込む余裕がないし、基本的には“情報を伝える”ということで呼んでいただいているのに、そこで中途半端にお笑いをやろうとして失敗したら「いや、そういうことで呼んでるんじゃないから」となる。そうなると本末転倒になりますしね。でも、どこかに笑いを入れたい思いはある。そのせめぎあいです。

やっぱり面白いを入れたい

ただ、芸人として面白いことを言うというのをあきらめたらダメだとも思っています。開きなおったらダメ。情報を伝えるのと笑いがうまく組み合わさったら、また次の景色が見えるのかもしれませんけど、これがね、本当に難しいですね…。

イベントとかでお話をしても、お客さんがみんなメモを取りながら話を聞いてくださるんです。また悲しいのが、そこで多少ボケを入れてみても、お客さんの耳がボケを聞く耳になっていないのか、それとも、こちらのボケの精度の問題か、そのままメモを取られていたりすると、心が折れますけどね(笑)。何とか、次の景色を目指して頑張ります。

■松橋 周太呂(まつはし・しゅうたろ)

1985年1月19日生まれ。東京都三鷹市出身。よしもとクリエイティブ・エージェンシー所属。2006年から15年までお笑いトリオ「ジューシーズ」として活動し、解散後はピン芸人に。日本テレビ系「あのニュースで得する人損する人」に料理や掃除のスキルを活かし“家事えもん”として出演し、人気を博す。「すごい家事 人生の『掃除の時間』をグッと縮める」「一生モノの知恵袋」などの著書も出している。掃除検定士5級やジュニア洗濯ソムリエなどの資格も取得している。また、京都の伝統工芸職人やアーティストと芸人がコラボレーションするプロジェクト「よしもとアーキグラム」の一環として、京都の名店「三味洪庵」とのコラボおせちも発売される。詳細はクラウドファンディングサイトBOOSTERでも見られる。

芸能記者

立命館大学卒業後、デイリースポーツに入社。芸能担当となり、お笑い、宝塚歌劇団などを取材。上方漫才大賞など数々の賞レースで審査員も担当。12年に同社を退社し、KOZOクリエイターズに所属する。読売テレビ・中京テレビ「上沼・高田のクギズケ!」、中京テレビ「キャッチ!」、MBSラジオ「松井愛のすこ~し愛して♡」、ABCラジオ「ウラのウラまで浦川です」などに出演中。「Yahoo!オーサーアワード2019」で特別賞を受賞。また「チャートビート」が発表した「2019年で注目を集めた記事100」で世界8位となる。著書に「なぜ、この芸人は売れ続けるのか?」。

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1999年にデイリースポーツ入社以来、芸能取材一筋。2019年にはYahoo!などの連載で約120組にインタビューし“直接話を聞くこと”にこだわってきた筆者が「この目で見た」「この耳で聞いた」話だけを綴るコラムです。最新ニュースの裏側から、どこを探しても絶対に読むことができない芸人さん直送の“楽屋ニュース”まで。友達に耳打ちするように「ここだけの話やで…」とお伝えします。粉骨砕身、300円以上の値打ちをお届けします。

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