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「INSPi」の奥村伸二、がん告知から手術…そして今を語る!

中西正男芸能記者
向かって左が奥村伸二さん、右がリーダー・杉田篤史さん

6月に有棘(ゆうきょく)細胞がんであることを公表した6人組アカペラグループ「INSPi(いんすぴ)」の奥村伸二さん(36)が再始動します。5年ぶりにリリースする同グループのシングル『エンターテイナー』(来年1月6日発売)のレコーディングに参加し、歌声を披露しています。ブログで、がんの摘出手術を受けたことは明かしていましたが、詳しい病状や今後の活動について、リーダーで盟友の杉田篤史さん(37)とともにすべてを語りました。

心の準備はできていた

奥村「まず、とても基本的なことながら(笑)、患部は鼻なんです。病気を公表した時は、顔の右側とだけ言っていて、鼻とすら言ってなかったんですけど、詳しく言うと、鼻の右側のところにニキビみたいなのができたと。それが今年3月のことでして。ま、最初はできものができたんだなくらいに思ってたんです。市販薬を塗ったりしてたんですけど、いっこうに治らない。そして、決定的だったのがファンの方との握手会。握手会なんで、近くでお会いするじゃないですか。そこで、あるファンの方に『それマズイですね…。すぐに、お医者さんに行った方がいいです』と言われまして。そこから近所のお医者さんに行って抗生物質をもらって2週間飲んだけど治らない。これはおかしいとなって、大学病院で検査をしてもらったら、がんだと分かったんです」

杉田「意外と、本人はあっけらかんと『心の準備はできていた』と言うんですけどね」

奥村「これは、性格だと思うんですけど、僕は何かあると“一番悪いこと”を常に想定するんです。なので、大学病院に行った時点で『これはもうがんやな』と。だから、がんと聞いても『やっぱり、そうやったんや』という感じで、ショックはなかったんです」

杉田「こっちは、しっかりとショックはありましたけどね(笑)」

奥村「ただ、さらに考えると、多分、がんというものを軽いものにしたかったのかなと。『ま、がんって多くの人がなる病気やし、それが、自分のところにも来ただけや』という解釈にしたかったのかもしれませんね」

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変化はおもしろい

杉田「検査結果は本人からのLINEで知ったんですけど、いざ、その病名を突き付けられると、いろいろな思いが頭をグルグル回りました。もちろん、まずは命のこと。そして、今後の活動のこと。やっぱり、奥村伸二の声は『INSPi』の看板ですから。それがない状態で活動ができるのか。残りのメンバーでいろいろと話をしました。そして、出した結論は『活動は休止しない』ということ。これから手術を受けるメンバーに対して、帰る場所があるというのが励みになってほしいという思いで決めました。ただ、いくらこちらが『この方が伸二のためなんじゃないか』と思っても、それが本当に本人のためになるのか。とても大きな事柄だけに、答えのない話し合いが続きました」

奥村「そう聞くと、ただただ、ありがたいし、申し訳ないなと思うんですけど、今思うのは『変化はおもしろい』ということ。失うことの怖さより、変わったことで何が得られるんだろうという方に着目して生きていきたいなと。がんになった時も、がんになって失うことよりも、がんになったことで、例えば、毎日気にもとめていなかった朝日がすごくきれいに見えたり。そちらに思いをめぐらせたんです」

杉田「実際、手術を終えて数日後、直接会って思ったのが『元気やん!!』と(笑)。生命力がみなぎってるというか、まいってないというか。そこで少し安心できました」

メチャメチャ歌いやすい!!

奥村「もう少し、病気のことを言いますと、基本的には、取りきってしまったら、それで一旦終了のがんだと聞いていたんです。なので、手術が終わったら、ひとまず終了という。ただ、僕のがんは成長する速度がかなり速かったらしく、イレギュラーの要素が強いので、手術でとっても再発の可能性が否定しきれない。なので、お医者さんが1年間様子を見させてくださいと。なので、1年間は鼻の再建手術をせずに、そのまま(手術でできた穴を)開けておいてくださいと。1年後に何もなかったら鼻を作り直すんですけど、今はそれを見ている状態です」

杉田「鼻以外は、本人はすごく元気にしているんですけどね」

奥村「あとね、すごい発見がありました!!鼻って、穴が下を向いてるじゃないですか。だから、普通は歌うために肺から出してきた空気を一旦目頭のところまで上げてそこからUターンさせる形で、下向きになった鼻の穴から空気を出すことになる。わざわざ上まで空気を上げて、そして下向きに出すので、遠回りというか、ロスが多いというか。ただ、今の僕は鼻が半分ないので、声帯を通った空気がそのまま上に抜けてくれるんですよ(笑)。だからね、メチャメチャ歌いやすい!!『なんやこれ!?』とビックリしました」

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杉田「レコーディングの時、伸二から『鼻がないと、歌いやすいわ~』という言葉を聞いた時は、衝撃でした(笑)」

奥村「まさか、自分でもそんなことがあるなんて、思いもよらなかったから(笑)。変化は悪いことばかりではないよ」

杉田「それで言うと、年明けに出す『エンターテイナー』という曲は今年1年あったことを書こうと。となると、伸二のことが軸になります。いろいろなことを経験した伸二を加えて、6人でまとまった声をしっかりお聴かせする。まず、それを来年はやりたいなと。そして、来年は15周年でもあるんです。いろいろあった中でも応援してきてくださった皆さんに、ここまで応援してきてよかったなと思ってもらえるものをお届けしたいです」

奥村「今年は、ファンの方にすごく心配をかけた年になったと思います。がんということが、ニュースに大きく出てしまったし。病気を明かしてから、毎日手紙を送ってくださるファンの方がいるんです。申し訳ないというのが最初にありますけど、純粋に、励まされています。とても、とても、ありがたいです。今でも再発の可能性もあるし、まだ自分の中にがんの芽があるかもしれない。もちろん心配です。ただ、がんであれ、なんであれ、そうなった以上は『自分の場合はこうだったよ』というのを伝えていくのが、自分の役割なんだなと強く思うようにもなりました。なので、それを来年も伝えていきたいなと。元気いっぱいに。お酒も、しっかり飲んでますしね。大好きなので、そこはバリバリです(笑)。これも『自分はこうだよ』というご報告の一つです(笑)」

■INSPi(いんすぴ)

大阪大学のアカペラサークルから生まれた6人組アカペラボーカルグループ。ワタナベエンターテインメント所属。1998年に「INSPi」として始動。フジテレビ系「力の限りゴーゴゴー!!」のコーナー「ハモネプ」出演をきっかけに2001年にデビューを果たす。メンバーは、リーダーの杉田篤史、奥村伸二、北剛彦、大倉智之、渡邉崇文、吉田 圭介。長渕剛ら多くの歌手のCDやライブにコーラスとしても参加している。05年からは、日立グループのCM音楽『この木なんの木』のアカペラアレンジバージョンを担当している。今年6月、奥村が有棘細胞癌を公表する。来年1月6日には、5年ぶりのシングルとなる『エンターテイナー』をリリースする。

芸能記者

立命館大学卒業後、デイリースポーツに入社。芸能担当となり、お笑い、宝塚歌劇団などを取材。上方漫才大賞など数々の賞レースで審査員も担当。12年に同社を退社し、KOZOクリエイターズに所属する。読売テレビ・中京テレビ「上沼・高田のクギズケ!」、中京テレビ「キャッチ!」、MBSラジオ「松井愛のすこ~し愛して♡」、ABCラジオ「ウラのウラまで浦川です」などに出演中。「Yahoo!オーサーアワード2019」で特別賞を受賞。また「チャートビート」が発表した「2019年で注目を集めた記事100」で世界8位となる。著書に「なぜ、この芸人は売れ続けるのか?」。

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1999年にデイリースポーツ入社以来、芸能取材一筋。2019年にはYahoo!などの連載で約120組にインタビューし“直接話を聞くこと”にこだわってきた筆者が「この目で見た」「この耳で聞いた」話だけを綴るコラムです。最新ニュースの裏側から、どこを探しても絶対に読むことができない芸人さん直送の“楽屋ニュース”まで。友達に耳打ちするように「ここだけの話やで…」とお伝えします。粉骨砕身、300円以上の値打ちをお届けします。

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