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竹下健人、常に自問自答!デビューの頃の自分に負けてはいないか?

中西正男芸能記者
9月スタートのNHK朝ドラ「あさが来た」に出演する竹下健人

次期NHK連続テレビ小説「あさが来た」(9月28日スタート)への出演が決まり、注目を集めている俳優・竹下健人(たけした・けんと)さん(22)。2012年、オーディションを経て、関西を拠点に活動するワタナベエンターテインメントの演劇集団「劇団Patch(パッチ)」のメンバーになりました。学生時代は空手に明け暮れ、演技経験ゼロから3年で朝ドラ出演へ。チャンスをつかむ原動力となったのは、何も分からないからこそガムシャラに立ち向かっていたデビュー当時の自分に対するライバル心でした。

16年間空手に没頭

今年の4月末でした。マネージャーさんから電話があったんです。「朝ドラが決まった!」と。あまりにも突然の流れだったので、その瞬間、完全に冗談だと思いまして(笑)。ただ、マネージャーさんのトーンがいつまで経っても“ネタばらしモード”にならないので「…え、もしかして、ホンマなん…?」と。

電話がかかってきた時は家にいたんですけど、ウソじゃないと分かってからも、あまりのことにリアクションできずに立ち尽くす僕の隣で、仕事をしていた父親が「エーッ!!ウソやん!!」と使っていたノートパソコンをバターンと閉めて、飛び上がってました。僕の分もひっくるめて、いいリアクションを取ってくれました(笑)。またその横で、お母さんが泣いてくれていたのも、何とも言えず、ありがたい気持ちになりました。

そもそも、子どもの頃から16年ほど空手をやってまして、将来は空手の師範になる夢を描いていたんです。実際、高校を卒業する頃に「オーストラリアか東南アジアに行って指導員をしてもらえないか」という話もいただいてたんですけど、何なんでしょうね、ずっと、漠然とした憧れみたいなものがあったんです。芝居の世界への。といっても、昔から「絶対に役者になるぞ!!」という思いがあったわけではなく、小さな頃からオダギリジョーさんがやってらした「仮面ライダークウガ」が好きで「いつか、こんなことができたらいいなぁ…」と思っていたくらいだったんですけど。

空手の指導員のお話もすごくうれしかったものの、どうしても、その憧れが心の奥底からなくならず、そんな中で見つけたのが「劇団Patch」のオーディションやったんです。

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セリフ1つだけで3時間

漠然とした思いに突き動かされて受験したら、ナント3000人の中から合格して「Patch」のメンバー15人の中に選ばれた。自分でもびっくりするまさかの展開ではあったんですけど、本当に大変なのはここからでした。お芝居なんて、学校の文化祭でちょこっとやったくらい。 ホンマにゼロからのスタートで、半年後には旗揚げ公演「OLIVER BOYS」がある。しかも、ありがたいことなんですけど、そこに主演させてもらうことにもなった。

「『OLIVER BOYS』はご当地ヒーローのキャラクターショーの話だったんですけど、最後はヒーローの衣装を着て、実際にキャラクターショーを20分間ぶっ通しでやらないといけない。それこそ、芝居もしたことない、アクションもやったことない、キャラクターショーもやったことない…。セリフ1つでも、感情を込めて表現するなんてことの何歩も前の話で、台本を見ながら読むこともままならない状況。毎日毎日、できないもどかしさと向き合うだけの日々でした。

中でも、思い出深いのが冒頭シーンで、僕があるアクションクラブの門をたたくんですけど、そこで「お願いします!!」というシーンがあったんです。稽古でこの一言でOKをいただくまで3時間繰り返しました。

もちろん今でも勉強中ですけど、今なら、意味が分かる気はするんです。この場面は、単にアクションクラブに入るためだけの「お願いします!!」じゃなくて、さあ今からこの物語が始まるぞという大きな意味を持った「お願いします!!」だったんで、普通に言うのではなく、この芝居全体を背負うような深くて、強い意味を伴わせた「お願いします!!」じゃないといけない。でも、当時はそれが分からない。何がアカンのかも分からない。何がいいのかも分からない。何とか頑張りたいけど、頑張り方も分からない。もともと細いのに、自分でも驚くくらい、みるみる痩せていきました。

ただ、これは、きれいごとでも何でもなく、本当に、本当に、皆さんの力で何とか旗揚げ公演を行うことができて、たくさんのお客さまにも来ていただけた。自分で言うようなことではないのかもしれませんが、今のモットーが“本当に全力でやれば、何かいいことがある”ということなんですけど、それはこの体験がスタートになっているなと。

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カツラが飛ぶハプニングも!

5月中旬から京都・太秦(うずまさ)でやらせていただいている「あさが来た」の収録でも、ある意味、ありがたいハプニングもありまして(笑)。

幕末からの物語なのでカツラをつけての芝居だったんですけど、僕、カツラをつけるのも初めてでして。カツラ合わせの時に、スタッフさんから「これくらいのサイズで大丈夫?」と言われたものの、よく分からないままに「ちょうどいいです!!」と言ってしまってたんですけど、実はだいぶゆるかったみたいでして…。

僕がやらせてもらってるのは近藤正臣さん演じる両替屋「加野屋」で働いている手代の弥七という役なんですけど、とにかく、元気いっぱいにちょこまか動くような役なんです。なので「とにかく全力でちょこまかしなければ…」と必死に動いていたら、その動きにカツラがついてこられなくなって、カツラがポーンとアーチを描いて飛んで行ってしまったんです…。一瞬、近藤さんや玉木宏さんの顔が「…エッ?」となったんですけど、結果、皆さんそれで爆笑してくださって。

ただ、こっちとしたら「大変なことになってしまった…」と完全に舞い上がってしまっていたので、そこで玉木さんが「瞬間接着剤でアタマとくっつけとけばよかったのに(笑)」と言ってくださったんですけど、乾いた照れ笑いをするしかできず…。

どう考えても、せっかく玉木さんがある意味のボケで和ませてくださってるんですから、何かしらのツッコミなり、返しをしないといけなかったのに。もうね、いっぱい、いっぱいやったんです(笑)。でも、何もかも初めて尽くしの現場だったんですけど、思わぬ形で皆さんと近づくきっかけをもらったなと。

全力の向こうにある何かを…

もちろん“いいこと”をゲットしようと思って全力でやるわけではなく、今は全力でやるしかないから、それをやっているんですけど、全力の向こうにある何かを旗揚げ公演から今に至るまで感じています。

まだ3年ちょっとしかこの仕事をしていませんが、常に心にあるのが「旗揚げ公演の頃のガムシャラさに負けてやしないか」ということ。右も左も分からないからこそ、本当の死にものぐるいでやるしかなかった。その馬力みたいなものと、その時、その時の自分を比べながら、負けないようにやってきたというのはありますね。

…ごめんなさい、なんか、カッコつけた感じになってますかね…?(笑)。別に、そんな気で言ったんじゃないんですけど、なんだか、なんとも、スミマセン…。

■竹下健人(たけした・けんと)

1993年5月23日生まれ。大阪府出身。高校までは空手に没頭し、指導員としての道を模索するが、幼少時から抱き続けた俳優への道を志し、2012年に「劇団Patch」のオーディションを経て、約3000人の中からメンバーに選ばれる。「劇団Patch」旗揚げ公演「OLIVER BOYS」では主演を務める。時期NHK連続テレビ小説「あさが来た」(9月28日スタート)にも出演。特技は空手の型。身長175センチ。また「第4回Patchメンバーオーディション アホでも必死になったらええねん!」も開催。グランプリ受賞者には朝日放送のドラマ出演デビューの特典が贈られる。応募締め切りは8月10日必着。詳しくは「劇団Patch」の公式サイト(http://www.west-patch.com/)を参照。

芸能記者

立命館大学卒業後、デイリースポーツに入社。芸能担当となり、お笑い、宝塚歌劇団などを取材。上方漫才大賞など数々の賞レースで審査員も担当。12年に同社を退社し、KOZOクリエイターズに所属する。読売テレビ・中京テレビ「上沼・高田のクギズケ!」、中京テレビ「キャッチ!」、MBSラジオ「松井愛のすこ~し愛して♡」、ABCラジオ「ウラのウラまで浦川です」などに出演中。「Yahoo!オーサーアワード2019」で特別賞を受賞。また「チャートビート」が発表した「2019年で注目を集めた記事100」で世界8位となる。著書に「なぜ、この芸人は売れ続けるのか?」。

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1999年にデイリースポーツ入社以来、芸能取材一筋。2019年にはYahoo!などの連載で約120組にインタビューし“直接話を聞くこと”にこだわってきた筆者が「この目で見た」「この耳で聞いた」話だけを綴るコラムです。最新ニュースの裏側から、どこを探しても絶対に読むことができない芸人さん直送の“楽屋ニュース”まで。友達に耳打ちするように「ここだけの話やで…」とお伝えします。粉骨砕身、300円以上の値打ちをお届けします。

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