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ラツィオ主将が4歳息子と暴力被害も…会長は「騒ぐな」 セリエA不振&監督辞任で緊張高まる

中村大晃カルチョ・ライター
2023年10月30日、セリエAフィオレンティーナ戦でのラツィオFWインモービレ(写真:ロイター/アフロ)

鎌田大地が所属するラツィオが、非常に緊迫した状況にある。

ここ1カ月のラツィオは、公式戦6試合で1勝5敗と低迷。チャンピオンズリーグではベスト16敗退に終わり、セリエAで9位と苦戦している。

公式戦4連敗となった3月11日のリーグ前節から一夜明け、マウリツィオ・サッリ前監督は辞意を表明。翌日、クラブが辞任を認めて公式発表した。

成績不振を受け、昨季のセリエAでチームを2位に導いた指揮官が去った。さらにその理由が一部の造反と見られたことで、事態はスポーツの範ちゅうにとどまらない深刻さとなっている。主将チーロ・インモービレが、プライベートの場で家族と暴力被害に遭ったのだ。

■キャプテンが被害届へ

イタリア各メディアは3月15日、インモービレ側が被害届を出すと発表したことを報じた。

これによれば、インモービレは3月13日、保育園の前で4歳の息子と一緒のときに、集団から暴言や肉体的な攻撃を受けた。さらに翌日も、妻に同じことが起きたという。選手側は、一部のメディアや記者が伝えたことがヘイトを扇動した結果だと批判した。

これを受け、ラツィオも15日、公式声明でインモービレとその家族に対する連帯を表明。暴力行為を非難している。

■なぜ攻撃の的に?

インモービレに対する行為は、決して許されない。だがなぜ、主将が攻撃の標的となったのか。

もちろん、選手のパフォーマンスは一因だろう。今季公式戦10得点はチーム最多の数字だ。しかし、そのうちの半分はPK。セリエAでは6得点だが、PK以外のゴールは2得点しかない。

ただ、理由はほかにもあると推測される。サッリを退陣に追いやったひとりと見られたのだ。

『La Gazzetta dello Sport』紙によれば、サッリは前節の試合後、自分を望まないならはっきり言えとチームに求めたという。だが選手たちは沈黙し、サッリが「イエス」と受け止めたと報じている。

同紙は、試合翌日に一部主力がサッリを説得しようとしたとも伝えている。また、インモービレ自身、チームと慰留を試みたが翻意させられなかったと明かした。

だが、前節の交代時に明らかな采配への不満を表していたこともあり、インモービレとサッリの関係が悪化していたという見方は絶えなかった。

さらに、クラウディオ・ロティート会長は、14日に「サッリは裏切られた」と口にしている。そこでインモービレやルイス・アルベルトといった中心選手たちの造反が疑われたのだ。

ロティート会長は15日、「裏切られた」発言は「そう感じたとサッリに言われた」のであり、「誰から(裏切られた)かは彼に聞け」と述べている。

■主将の被害に会長は?

これらの一連の出来事から、インモービレ側は「ヘイト扇動」を非難したのだろう。

だが、ロティート会長は15日、報道陣から主将の被害について考えを問われると、「では私に毎日起きていることはどうなる?」と返した。自身は20年前から護衛をつけ、携帯電話には毎日50万通の自分や家族に対する「死の脅迫」が届いているが、騒ぎたてていないと話している。

ロティート会長も様々な被害に遭ってきたことは確かだろう。だがそれでも、インモービレの被害に対するこの発言は驚きを誘う。それだけナーバスになっているということかもしれない。

確実なのは、ロティート会長に対しても、インモービレに対しても、誹謗中傷や暴力をふるう者は、決して「サポーター」ではないということだ。批判と暴力は違う。後者は絶対に許されない。

カルチョ・ライター

東京都出身。2004年に渡伊、翌年からミランとインテルの本拠地サン・シーロで全試合取材。06年のカルチョーポリ・W杯優勝などを経て、08年に帰国。約10年にわたり、『GOAL』の日本での礎を築く。『ワールドサッカーダイジェスト』などに寄稿。現在は大阪在住。

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