Yahoo!ニュース

鎌田大地のセリエA残留に影響は? 「終戦」近いラツィオで監督退任説再燃、クラブは信頼強調

中村大晃カルチョ・ライター
2月22日、セリエAトリノ戦で出場機会がなかったラツィオの鎌田大地(写真:REX/アフロ)

鎌田大地が所属するラツィオは、チャンピオンズリーグ(CL)でベスト16敗退に終わった。

ラツィオにとって、欧州16強は決して悪い成績ではない。だが、シーズン全体の出来を考えれば、健闘をたたえる雰囲気ではないのも確かだ。

3月5日のCLラウンド16セカンドレグで、ラツィオはバイエルン・ミュンヘンに0-3で敗れた。ホームでのファーストレグを1-0と制し、ライバルの現状もあってラウンド突破が期待されたが、敵地では「真のバイエルン」(マウリツィオ・サッリ監督)に力の差を見せつけられている。

■CLで奮闘も不本意なシーズン

アトレティコ・マドリー、フェイエノールト、セルティックとのグループステージを2位で突破し、優勝候補の一角バイエルンにも初戦で勝利。指揮官が「ポジティブ」と評したように、CLに関しては評価に値する結果だったと言えるだろう。

だが問題は、セリエAで苦戦していることだ。27節を消化して勝ち点40のラツィオは9位。来季のCL出場権獲得は難しい状況だ。それどころか、欧州の舞台に立てるかどうかも確実ではない。6位のアタランタには6ポイント差をつけられている。黒星はトップ10で唯一となる2桁だ。

実現していれば雰囲気を一変させていた欧州ベスト8がかなわず、国内では安定感を欠いて中位。来季の欧州への切符も危うく、ラツィオを取り巻く空気は重たくなっている。このまま「終戦」へと向かってもおかしくない。

■サッリズムはラツィオに定着しなかった?

ならば注目はその先、来季以降の体制となる。最大の焦点は、クラウディオ・ロティート会長との関係悪化が報じられているサッリの進退だ。契約は2025年までで、残り1年となる。

今季のサッリは事あるごとに、クラブによる夏の補強が自身の希望に合っていなかったと口にしてきた。実際、今季の新戦力で絶対的な地位を築いているのは、マテオ・ゲンドゥジくらいだろう。

一方で、ロティート会長は「言い訳無用」というスタンスだ。タティ・カステジャノスやグスタフ・イサクセンの獲得に資金を投じ、フリーで手に入れた鎌田大地にはチーム有数のサラリーを用意した。カネを惜しまず補強しており、問題は使いこなせていないサッリにもあるという主張だ。

指揮官は最終的に、チーロ・インモービレやルイス・アルベルトを中心とするこれまでの主力を起用してきた。しかし、そういった主軸の力だけで結果につなげられていないのが今季の結果だ。

また、サッリはメンバー固定を好む傾向にあり、システムも決して変えない。バイエルン戦後もファビオ・カペッロが苦言を呈したように、4-3-3に固執する姿勢に対する批判の声は常にある。だが、サッリは必要ないと強調してきた。バイエルン戦でもシステム変更は「夢にも思わなかった」という。

サッリがそういう監督なのは周知の事実だ。哲学には賛否両論があるだろう。それでも、今季のサッリは結果のために妥協もしてきた。『La Gazzetta dello Sport』紙のセバスティアーノ・ヴェルナッツァ記者は、「サッリズムはラツィオで定着しなかった」と指摘している。

「むしろ、サッリはほとんど信条を捨てたようなものだ。ほかのところでプレー重視の本質を取り戻すほうがふさわしいだろう。おそらく、サッリはラツィオを変えたかった。だがおそらく、ラツィオのほうがサッリを変えたのだ」

ラツィオとサッリの“ズレ”が続き、離別を選ぶべきとの見解だ。実際、会長と監督の関係を伝える報道は後を絶たない。バイエルン戦後、「サイクルの終わりか」と問われたサッリは、クラブに聞くべきとしつつ、「若いチームではないので、何かしら再出発させるべき状況だと思う」と述べた。

これを受け、『La Gazzetta dello Sport』紙や『Il Messaggero』紙、『calciomercato.com』など、イタリアの各メディアは、サッリの退任が近づいていると報道。すでにラッファエレ・パッラディーノやイゴール・トゥードル、ヴィンチェンツォ・イタリアーノやセルジオ・コンセイソンなど、様々な指揮官の名が後任候補とあげられた。一方、サッリもナポリやフィオレンティーナ行きが噂されている。

ラツィオは3月7日、公式声明でサッリに対する「全幅の信頼」を強調。契約は2025年までとし、他の指揮官を巡る報道は「根拠なし」と否定した。

もちろん、今季の戦いはまだ続くだけに当然だ。コッパ・イタリアでは準決勝まで勝ち進んでいる。セリエAでも浮上をあきらめたわけではないだろう。

ただ、インモービレやルイス・アルベルトを軸とするサイクルは今季までとの見方が強まっている。それだけに、新たなサイクルをまだサッリに委ねるのか、指揮官も一新するかの選択は注目だ。

■“契約満了”を迎える鎌田の選択は…

その決断は、鎌田の去就に影響を及ぼすのだろうか。サッリの下で輝くことがほとんどなく、不本意なシーズンを過ごしてきたのは周知のとおりだ。

ラツィオとの契約は、延長オプションつきの1年と報じられている。鎌田が望まなければ、夏に再びフリーで移籍が可能な状況だ。これまで満足にピッチに立てていないだけに、退団は濃厚と言われている。ドイツ復帰を巡るニュースを目にした方も多いだろう。

ただ、サッリが去り、チームが生まれ変わるのだとしたら、イタリアで過ごした1年を糧にするという選択肢もあり得る。厳しい評価を下してきた地元メディアも、基本的に鎌田の選手としてのクオリティーは認めてきた。ロティート会長は残留を望んでいるとも言われる。

移籍の難しさを味わわされた一年を経て、8月に28歳となる鎌田の決断が注目される。

カルチョ・ライター

東京都出身。2004年に渡伊、翌年からミランとインテルの本拠地サン・シーロで全試合取材。06年のカルチョーポリ・W杯優勝などを経て、08年に帰国。約10年にわたり、『GOAL』の日本での礎を築く。『ワールドサッカーダイジェスト』などに寄稿。現在は大阪在住。

中村大晃の最近の記事