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セリエAの判定騒動が誹謗中傷に発展 ミラン選手に「死ね」と卑劣な脅し

中村大晃カルチョ・ライター
2024年3月1日、セリエAのラツィオ対ミランでのペッレグリーニとプリシック(写真:ロイター/アフロ)

セリエAで物議を醸した判定騒動が、許されない行為につながっている。

3月1日に行われた第27節、ラツィオ対ミランの一戦は、1-0でアウェーのミランが勝利した。敗れたホームのラツィオは、フィールドプレーヤーが3人退場。8人で試合を終えている。両軍合計で11枚のイエローカードと、荒れた一戦のレフェリングは議論を呼んだ。

■ラツィオ対ミランの判定騒動

試合が荒れるきっかけとなったのは、前半12分の出来事だ。ミラン守備陣の連係ミスから、GKマイク・メニャンがペナルティーエリア内でバレンティン・カステジャノスを倒すかたちに。しかし、ラツィオにPKは与えられなかった。

前半はカードがないままスコアレスで終了したが、両チームの審判団に対するフラストレーションは明らかだった。そして後半67分、ラツィオのルカ・ペッレグリーニが2枚目のイエローカードを出されて退場となる。この判定が火に油を注いだ。

ラツィオは直前に相手選手との交錯でカステジャノスが顔面を負傷し、ピッチに倒れ込んだ。これを受け、チームメートからの呼びかけもあり、ペッレグリーニはプレーを止め、プレスをかけてきたクリスティアン・プリシックにもアピールする。

しかし、主審の笛は鳴らず、プリシックはプレーを続行。サイドライン際でボールを奪い、決定機をつくりかける。あわてたペッレグリーニはプリシックを引っ張り倒し、2枚目のイエローカードで退場となった。

ラツィオ陣営は猛抗議するが、判定は覆らず。試合はさらに荒れ、終盤に先制を許したラツィオは、アディショナルタイムにアダム・マルシッチが主審への抗議で退場。さらに、マテオ・ゲンドゥジもファウルをされた際にプリシックを突き飛ばし、報復行為で一発退場となったのだ。

■激怒のラツィオ

ペッレグリーニが自分の判断でプレーを止めたことには批判の声もある。ミランのステーファノ・ピオーリ監督も指摘したように、ボールをピッチ外に蹴り出してプレーを止めるべきだったとの見方もあるだろう。

ただ、ラツィオ陣営は激怒している。試合後、クラウディオ・ロティート会長は、公平性が保証されている体制になっていないと批判し、リーグに第三者機関が必要と主張した。

ペッレグリーニはインスタグラムでチームとサポーターに退場を謝罪。そのうえで「次は必ずスタジアムの外までボールを蹴り出す。チームメートが流血して僕がプレーを止めるだけでは主審にとって足りないようだ」と皮肉をまじえつつ、「反スポーツマンシップが勝った」と批判している。

■誹謗中傷被害の選手をミランは支持

そして一部の愚か者は、その怒りの矛先をプリシックに向けた。

『La Gazzetta dello Sport』紙などイタリアのメディアによると、SNSでプリシックに対する誹謗中傷が相次いでいる。

「死ね」

「まったくのピエロ」

「無能。全部戻ってくるからな」

「薬にカネをかけることになれ」

「お前と家族は爆発するかもな」

「今夜お前は尊厳を失った。小さい男だ」

ミランは公式SNSでプリシックの画像を投稿。「君のそばにいる」と、選手支持を強調した。

これを受け、プリシックは「このチームとロッソネーリ(ミラン)・ファミリー全体には愛しかない」と、感謝の意を表している。

判定が問題視されたことは間違いない。『La Gazzetta dello Sport』紙などによると、主審は1カ月ほどの停止処分を科される見込みという。ペッレグリーニの「反スポーツマンシップが勝った」という主張も、一部をさらに先鋭化させたところもあるかもしれない。

しかし、それらすべてを考慮しても、いずれにしても誹謗中傷をする理由にならないことは言うまでもない。イタリア各メディアも「ショック」「恥」と非難している。

判定の問題は判定の問題として、しかるべき組織が対処すべきだ。だがそれとは別に、プリシックへの誹謗中傷は決して許されない。

カルチョ・ライター

東京都出身。2004年に渡伊、翌年からミランとインテルの本拠地サン・シーロで全試合取材。06年のカルチョーポリ・W杯優勝などを経て、08年に帰国。約10年にわたり、『GOAL』の日本での礎を築く。『ワールドサッカーダイジェスト』などに寄稿。現在は大阪在住。

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