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「三笘薫が今季絶望」にイタリアメディアはどう反応? デ・ロッシ就任で復調ローマがELで対戦

中村大晃カルチョ・ライター
2023年12月17日、プレミアリーグのアーセナル戦での三笘薫(写真:REX/アフロ)

三笘薫が長期離脱を余儀なくされる見込みとなった。ヨーロッパリーグ(EL)のラウンド16で対戦予定だったローマの地元メディアは、どう反応しただろうか。

ブライトンのロベルト・デ・ゼルビ監督は2月27日、プレミアリーグ前節を負傷欠場していた三笘について、腰のケガで2~3カ月の離脱が見込まれると明かした。

復帰が3カ月後となれば、三笘の今季中の復帰は絶望的だ。プレミアリーグ最終節は5月19日。EL決勝は同22日、FAカップ決勝は同25日に予定されている。

■三笘薫にまつわる数字

今季の三笘はプレミアリーグで19試合出場の3得点、5アシスト。公式戦では26試合出場の3得点、6アシストという成績だ。41試合出場で10得点、8アシストを記録した昨季ほどのインパクトではないが、ブライトンにとって重要な主力であるのは言うまでもない。

当然、ELラウンド16でローマと対戦することに決まった際も、イタリアのメディアはブライトンを紹介するなかで、三笘を主軸のひとりと伝えていた。『La Gazzetta dello Sport』紙は、デ・ゼルビの頼れる武器のひとつに三笘の「インテリジェンス」をあげ、「あふれ出す発想力」を持つチームのスターと報じている。

実際、イギリス『Sky Sports』によれば、加入以降のブライトンにおける三笘の存在感は確かだ。出場時と不在時を比較すると、勝率は48%と36%で違いは明らか。ゴールは79得点と42得点で大差がついている(1試合平均で2.0得点と1.7得点)。

■三笘離脱を伊メディアはどう伝えた?

当然、それだけ重要な存在である三笘の欠場は、ダニエレ・デ・ロッシ監督率いるローマにとっては“朗報”となる。イタリアのメディアも、こぞって三笘の離脱を報じた。

その多くが、デ・ゼルビのコメントや三笘のスタッツを紹介したものだ。「バッドニュース」(『Corriere dello Sport』紙)、「重要な駒を失った」(『Sport Mediaset』)、「小さくない痛手」(『fanpage』)など、様々な表現でブライトンを襲った災難を伝えている。

『La Gazzetta dello Sport』紙は、三笘が「ブライトン攻撃陣の支えのひとり」と指摘。代わりとなる選手たちを紹介しつつ、三笘の不在が「いずれにしても響くだろう」と報じた。

『fanpage』も「ローマは計算すべき危険が減った」としている。

「日本人選手はブライトン最高の武器のひとつであり、対戦するのが難しい選手で、デ・ロッシの守備陣に多くの問題をつくれていたはずだ」

■デ・ロッシが変えたローマ

だがもちろん、デ・ゼルビが三笘を失ってさじを投げるなどあり得ない。そしてそのデ・ゼルビにインスピレーションを受けているというデ・ロッシが、今回の知らせで楽観することもないだろう。

デ・ロッシがジョゼ・モウリーニョからバトンを引き継いで以降、ローマは生まれ変わりつつある。

システムが4バックに変わり、より攻撃的となったローマは、公式戦8試合で6勝1分け1敗。唯一負けた相手は、セリエAで首位を快走するインテルだ。引き分けたフェイエノールト戦も、サポーター不在の完全アウェーのなか、EL16強進出に前進した試合だった。8試合すべてでゴールを決めており、6試合で複数得点をあげての18得点と見事な数字を残している。

クラブのレジェンドながら、デ・ロッシは来季以降の確約や保証を一切求めず、世界的名将の後任として立て直しを図るという困難に挑み、見事なスタートを切った。『La Gazzetta dello Sport』紙のアレッサンドロ・ヴォカレッリ記者は、2月23日付の記事で大きな賛辞を寄せている。

これらすべてが実現したのは、デ・ロッシがバンディエーラ(旗頭)、非常に偉大な元選手、サッカーを知る者だからというだけでなく、この仕事をする資質を備えていると示したからだ。ほかの人なら、モウリーニョのチームをできるだけいじらず、比較される面倒から身を守っただろう。感情的な反応に賭け、心理的観点からグループ再生を図っただろう。デ・ロッシは違う。デ・ロッシは50日でローマを変えた。アンタッチャブルだった5バックから4バックにシステムを変更した。ディフェンダーをひとり外し、フォワードを加えた。ステファン・エル・シャーラウィは強みとなっている。すべてのエンジンになっているロレンツォ・ペッレグリーニやレアンドロ・パレデスといった選手たちを再生させた。経験豊富なルイ・パトリシオをベンチに置き、控え守護神だったミル・スヴィラールを昇格させた。つまり、完全にチームを変貌させたのだ。そしてそのチームは、リーグ戦5試合で勝ち点12を獲得した(※筆者注:現在は6試合で勝ち点15)。負けたのはインテル戦だけだ。フェイエノールトを沈め、これから2つの目標を目指すことになる。ELと来季のチャンピオンズリーグ出場権獲得だ。一時ははかない望みだったが、もはやそうではなくなっている。

同記者は40歳の青年監督が来季も指揮を執るにふさわしいと主張した。おそらく、それは今後の戦いぶりと結果次第だろう。確かなのは、残念ながら三笘が不在でも、デ・ロッシと彼がリスペクトするデ・ゼルビとの対戦から目が離せないということだ。

カルチョ・ライター

東京都出身。2004年に渡伊、翌年からミランとインテルの本拠地サン・シーロで全試合取材。06年のカルチョーポリ・W杯優勝などを経て、08年に帰国。約10年にわたり、『GOAL』の日本での礎を築く。『ワールドサッカーダイジェスト』などに寄稿。現在は大阪在住。

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