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なぜユヴェントスはセリエA優勝を信じるべき? 天王山で敗れるも「希望の光」となる理由

中村大晃カルチョ・ライター
2月4日、セリエAインテル戦でのユヴェントスFWヴラホビッチ(写真:ロイター/アフロ)

ユヴェントスはセリエAの頂上決戦で敗れた。だが、希望の光はまだ消えていない。

2月4日にサン・シーロで行われた第23節のイタリアダービーで、ユヴェントスはインテルに0-1で敗れた。消化が1試合少ない首位インテルとの勝ち点差は4に広がっている。スクデット(優勝)争いで大きなアドバンテージを許したことは確かだ。

年明けから好調だったエースのドゥシャン・ヴラホビッチは、いら立ちばかりが目立ち、決定機で痛恨のミスも。スコアこそウノゼロ(1-0)だが、チームも試合の大半で支配された。インテルの司令塔ハカン・チャルハノールには、100本ものパスを許している

だが、優勝争いが決着したとするには時期尚早だ。

■日程

今季のユヴェントスの大きなアドバンテージは、国内の戦いに集中できることだ。

コッパ・イタリア準決勝ファーストレグまでの2カ月弱は、リーグ戦の試合しかない。7試合のうち4試合は、ボトムハーフ(11位以下)が相手だ。特に16位ウディネーゼ、17位エラス・ヴェローナ、14位フロジノーネと戦う今後3試合では、連勝が期待されるだろう。

一方、インテルはダニエレ・デ・ロッシ監督が就任してから3連勝のローマと2月10日に対戦。2月28日には未消化のアタランタ戦が待つ。チャンピオンズリーグ(CL)出場権を争う強敵だ。さらに、3月には今季躍進中の6位ボローニャや昨季王者ナポリとの試合も控えている。

なにより、インテルはこの間にCLラウンド16に臨む。欧州有数の強豪アトレティコ・マドリーとの生き残りをかけた2試合で、心身両面の消耗は避けられないだろう。

■過去に優勝も経験の勝ち点

23節を消化して勝ち点53、ユヴェントスの数字は悪くない。ポール・ポグバとニコロ・ファジョーリの長期出場停止というトラブルで計画が狂わされたことも考えれば、十分に立派な成績と言える。

ユヴェントスは2011-12シーズンから9連覇しているが、『La Gazzetta dello Sport』紙によると、このうちの3シーズンを上回るペースという。

1試合平均勝ち点2.3というペースを保った場合、ユヴェントスは勝ち点87で今季を終えることになる。2019-20シーズンのユヴェントスや、2021-22シーズンのミランなど、直近の一部優勝チームの成績を上回る数字だ。

■成長の余地

しかも、現在のユヴェントスには伸びしろがある。若手の活躍が目覚ましいのだ。

『La Gazzetta dello Sport』紙は、26歳のブレーメルや25歳のフェデリコ・ガッティの昨季からの明らかな成長を指摘。ブレイクした18歳ケナン・ユルディズの完全開花や、23歳のアンドレア・カンビアーゾ、20歳のファビオ・ミレッティもさらなる成長が望めると期待した。

加えて、ユーヴェは1月に23歳のチアゴ・ジャロ、21歳のカルロス・アルカラスを獲得している。もちろん未知数の戦力だが、これらの補強がヒットすれば、勢いはさらに増すはずだ。

■監督の経験値

マッシミリアーノ・アッレグリ監督には、かつて劣勢から逆転優勝を果たした経験がある。

大逆転優勝を果たした2015-16シーズンは有名だ。開幕から3試合白星がなく、一時は首位に勝ち点11差をつけられた。だが、10月末から15連勝を達成。26試合で25勝1分けという驚異的な成績を残し、最後はスクデットを手に入れた。

一方で、インテルのシモーネ・インザーギ監督には、直近で逆転優勝を許した経験がある。

就任1年目の2021-22シーズン、勝ち点9差のアドバンテージを手にしながら、2月のミラノダービーで逆転負けしたのを機に、ミランに栄光をさらわれた。

未消化分を含めても、現在のインテルのアドバンテージは決して安全圏ではないということだ。

■OBたちの助言とクラブの哲学

実際、OBのジャンルカ・ザンブロッタは、『La Gazzetta dello Sport』紙で「常に最後まで分からないことがたくさんある」とし、「まだ信じなければいけない」と話した。アレッシオ・タッキナルディも「最後までスクデットを信じる必要がある。サッカーではどんなこともあり得るからだ」と同じ意見だ。

マッシモ・マウロは、「ユヴェントスには絶対屈しないDNAがある」と述べた。インテル有利と認めつつ、そのDNAと直接対決で敗れた怒りに期待するという。

同様に「最後まで絶対に屈しないユヴェントスのメンタリティー」を口にしたフランコ・カウジオは、「スクデットはプロヴィンチャで勝ち取るもの」と話した。いわゆる格下を相手に勝ち点を取りこぼさないことが重要というわけだ。

ユヴェントスのモットーは、「fino alla fine」(最後の最後まで)。ここで白旗を上げるはずがない。アッレグリとユーヴェの再度の奮起が期待される。それはきっと、インテルの警戒心を強め、ひいてはさらに魅力的なタイトルレースへとつながるはずだ。

カルチョ・ライター

東京都出身。2004年に渡伊、翌年からミランとインテルの本拠地サン・シーロで全試合取材。06年のカルチョーポリ・W杯優勝などを経て、08年に帰国。約10年にわたり、『GOAL』の日本での礎を築く。『ワールドサッカーダイジェスト』などに寄稿。現在は大阪在住。

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