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なぜCL敗退危機のミランはケガが多い? 無傷わずか8人、明るい材料は?

中村大晃カルチョ・ライター
2023年11月25日セリエAフィオレンティーナ戦でのミランのピオーリ監督(写真:ロイター/アフロ)

ミランがチャンピオンズリーグ(CL)で敗退危機にある。

11月28日のグループステージ第5節で、ミランはホームでボルシア・ドルトムントに1-3で敗れた。結果次第で決勝トーナメント進出に大きく前進もできたが、逆に最下位に転落している。

ミランは自力で勝ち進むことができなくなった。ベスト16進出には、最終節でニューカッスルに敵地で勝ち、すでに突破確定のドルトムントにパリ・サンジェルマンに勝ってもらわなければならない。

■負傷者相次ぐミラン

10月の代表戦以降、ミランはセリエAでも5戦1勝2分2敗と苦しんでいる。首位インテルに勝ち点6差。得点は9点少なく、失点は7点多い。CLでも5戦3得点は大会ワーストタイの数字。公式戦ここ8試合で、ミランが勝ったのは2回だけだ。

不調の原因のひとつは、ケガ人の多さにある。

ドルトムント戦では、マリック・チャウが左太ももを負傷した。7~10日後に再検査予定だが、「深刻な損傷」が確認されたという。『La Gazzetta dello Sport』紙は、少なくとも2カ月の離脱と報じた。

今季のミランはすでに25回もの負傷に見舞われている。昨季のケガで今季まだ出場がないイスマエル・ベナセルを含めれば26回だ。そしてそのうち18回が筋肉系の故障。ケガ全体における筋肉系の負傷率は、69%にものぼる。

2023年11月30日『La Gazzetta dello Sport』紙参照、筆者作成
2023年11月30日『La Gazzetta dello Sport』紙参照、筆者作成

ここまで“無傷”なのは、アントニオ・ミランテ、アレッサンドロ・フロレンツィ、フィカヨ・トモリ、ヤシンヌ・アドリ、ユヌス・ムサ、トンマーゾ・ポベガ、ティジャニ・ラインデルス、ルカ・ロメロの8人だけだ。

■クラブは監督とスタッフを信頼?

これだけ筋肉系の負傷が多いのは、なぜだろうか。

『La Gazzetta dello Sport』紙は、不運もあったと伝えている。例えばチャウは出産で11月の代表戦に参加しなかったが、リーグ中断期間中にコンディション強化が予定されていたという。だが、風邪で計画が狂ったそうだ。

ただ、これだけ負傷が多ければ、「運」のひと言では片づけられない。直近でもラファエウ・レオン、ノア・オカフォー(代表で負傷)、チャウと、立て続けに3人が大腿二頭筋を痛めている。

『La Gazzetta dello Sport』紙は、サポーターからトレーナーのマッテオ・オスティに対する批判が高まっていると報じた。かつて、ヴィンチェンツォ・モンテッラ体制のミランでも、トレーナーが負傷問題で退任させられた過去があると伝えている。

しかし、同紙によると、ミラン上層部はステーファノ・ピオーリ監督やコーチングスタッフに主な責任があるとはみていない。一因ではあっても、“戦犯”とは考えていないようだ。

オスティは長年にわたってステーファノ・ピオーリ監督と仕事してきたトレーナーだ。キエーヴォ、パレルモ、ボローニャ、ラツィオ、インテル、フィオレンティーナ、ミランと、数々のセリエAクラブで働いてきた。ミランが優勝した2021-22シーズンには、同僚からベストトレーナーに選ばれている。

■苦境続くミランに光明は?

早期の原因究明が期待され、ピオーリも調べると話した。だが、同時に前進もしなければならない。

難しいやり繰りの中で、ダヴィデ・バルテザーギ、ヤン=カルロ・シミッチ、セリエA最年少デビューを飾ったフランチェスコ・カマルダなど、有望な若手への期待も高まるだろう。

だが、やはり経験値のある選手の復帰と活躍が望まれる。シモン・ケアーの復帰が近づき、ベナセルがチームに合流。ドルトムント戦では、今季最高額加入ながらインパクトを残せずに批判も浴びていたサミュエル・チュクウェゼに待望の初得点が生まれた。

CLでの逆転突破をあきらめないことはもちろん、ミランは国内でも苦しい人員体制の中で勝ち点を積み重ねていく必要がある。暗い話題が続くなか、ピオーリとチームは光を見いだせるか。

カルチョ・ライター

東京都出身。2004年に渡伊、翌年からミランとインテルの本拠地サン・シーロで全試合取材。06年のカルチョーポリ・W杯優勝などを経て、08年に帰国。約10年にわたり、『GOAL』の日本での礎を築く。『ワールドサッカーダイジェスト』などに寄稿。現在は大阪在住。

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