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なぜ鎌田大地は“昇格テスト”で「亡霊」に? CLで不振脱却狙うラツィオには何が必要なのか

中村大晃カルチョ・ライター
2023年11月3日、セリエAボローニャ戦での鎌田大地(写真:REX/アフロ)

ラツィオにおける鎌田大地の立場は、より一層厳しくなっている。

11月25日のセリエA第13節で、ラツィオは敵地でサレルニターナに1-2で敗れた。前半終盤にPKで先制しながらも、後半に逆転されての黒星。今季未勝利だった最下位相手の手痛い敗戦だ。

ラツィオは11位に転落し、来季のチャンピオンズリーグ(CL)出場ラインとの勝ち点差は7に広がった。開幕13戦6敗は、マウリツィオ・サッリ監督にとってセリエAでの自己ワーストとのこと。また、13節終了で勝ち点17は、クラブにとって2013-14シーズン以来の低成績という。

当然、サッリも選手たちも大きな批判を浴びせられている。鎌田にとっても、非常に大きな痛手だ。

■鎌田大地、9試合ぶり先発の評価は?

大黒柱ルイス・アルベルトが出場停止のラツィオは、鎌田を左インサイドハーフで先発に起用した。国内リーグでのスタメンは、9月16日の第4節ユヴェントス戦以来。約2カ月、9試合ぶりのことだ。

それだけに、出番が減少している鎌田にとっては大事な試合だった。好印象を残せば今後の機会増も期待できる、いわば“昇格テスト”となる一戦だったのだ。だが、結果は最悪なものとなった。

鎌田は得点やアシストはおろか、目に見えやすいインパクトあるプレーも見せられず。結果論ではあるが、逆に決勝点につながったフリーキックを献上した。アントニオ・カンドレーヴァのロングシュートはスーパーゴールだったが、鎌田の反応が遅れたのも悪い印象を与えたかもしれない。

メディアの評価も散々だ。「亡霊」(『calciomercato.com』)、「空回り」(『TUTTOmercatoWEB』)、「混乱」(『cittaceleste』)など、採点記事では様々な表現でこき下ろされた。

必ずしも、失格のらく印を押したわけではないかもしれない。ラツィオ専門サイト『cittaceleste』は、4点という非常に厳しい採点ながら、「彼が重要なレベルなのは分かっている。近い将来にもっと力を出せるようになることを願う」ともつけ加えた。

鎌田にとって味方との連係が大事なのは周知のとおりだ。しかし、コンビネーションに磨きはかかっていない。『cittaceleste』の評価は、そういった現状を表しているとも言えるだろう。

ただ、その状況が続いていることも確かだ。同じくラツィオ専門サイトの『La Lazio Siamo Noi』は、「スピードとチョイスが効果的でなければ、基礎は平凡になる」とも指摘している。

■チーム全体が不振のラツィオ

採点記事ではないレポートなどに「Kamada」の文字がないのは、存在感がなかったことを裏付けている。しかし、敗因が鎌田だけではないのは明白だ。

ラツィオはルイス・アルベルトに加え、守備の要アレッシオ・ロマニョーリもケガで欠場した。全試合でほぼフル出場してきた中盤と最終ラインの主軸が同時に不在だった影響は大きい。

そしてラツィオはチーム全体として低調な出来に終わった。試合後、サッリは昨季と比べて選手たちがあまりに力を出せていないと指摘。昨季の謙虚さを失ったとの考えも示唆している。

指揮官はクラブに強い対応を要求し、自分のせいなら退任するとまで口にした。強制合宿の可能性も持ちだすなど、精神面で問題があるとも考えているようだ。27日の会見では、キャンプ後から雰囲気に「何か」変化があったとも話している。

■監督続投で迎えるCLセルティック戦

辞任もいとわずというサッリの発言は大きく騒がれた。だが、『La Gazzetta dello Sport』紙などによると、クラウディオ・ロティート会長に監督交代の考えはないという。もともとロティートはシーズン中の路線方向が少ない会長だ。

“ショック療法”に頼らないのなら、現状のまま立て直すほかない。ベテランのペドロは、27日の会見で「自己批判をし、最初に戻らなければいけない」と話した。

「僕が思っているのは基礎的なことだ。もっと走って、もっと意欲を出して、ピッチで集中して…これが必ず自信につながる」

そのうえで、ペドロは「それから常にすべて結果次第」と、結果が出なければプレッシャーからのびのびプレーできないとも述べている。一夜でラツィオのプレーを飛躍的に向上させる魔法はない。難しいが、結果を出すことが最良の薬となるのだ。

28日、ラツィオはホームでのCLセルティック戦に臨む。勝てば他会場の結果次第で決勝トーナメント進出を決められる大事な試合だ。鎌田先発と予想した媒体もある。だが、ベンチスタートとの見方が大半だ。ラツィオと鎌田は、欧州の舞台で悪い流れを変えられるだろうか。

カルチョ・ライター

東京都出身。2004年に渡伊、翌年からミランとインテルの本拠地サン・シーロで全試合取材。06年のカルチョーポリ・W杯優勝などを経て、08年に帰国。約10年にわたり、『GOAL』の日本での礎を築く。『ワールドサッカーダイジェスト』などに寄稿。現在は大阪在住。

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