Yahoo!ニュース

なぜ鎌田大地を使わないラツィオ監督に解任説? 「パーティー」のCLで1カ月ぶり先発なるか

中村大晃カルチョ・ライター
2023年11月3日、セリエAボローニャ戦でのラツィオのサッリ監督(写真:Maurizio Borsari/アフロ)

鎌田大地は出場機会を得られない状況が続いている。だが、ラツィオが好調なわけでもない。

マウリツィオ・サッリ監督のチームは11月3日、セリエA第11節でボローニャに敵地で0-1と敗れた。リーグ戦では4試合ぶりの今季5敗目。順位は10位に転落し、来季のチャンピオンズリーグ(CL)出場ラインとの勝ち点差は5に開いた。

『La Gazzetta dello Sport』紙によると、一部のブックメーカーではサッリ解任のオッズにやや動きがあったという。指揮官の立場に関して暗雲が漂い始めているということなのだろうか。

■なぜサッリがラツィオを去るとの声?

11月6日の会見でも、サッリがシーズン後の退陣希望との噂をでたらめと否定する一幕があった。なぜ、サッリの去就に関する声が聞かれるようになったのか。もちろん、原因は結果にある。

昨季の11節終了時と比較すると、ラツィオは勝ち点8のマイナス(24→16)。得点(23→13)、失点(5→13)、白星(7→5)、黒星(1→4)、無失点試合(7→3)と、多くの項目で成績が落ちているのだ。

サッリのマネジメントを疑う見方もある。

セルゲイ・ミリンコビッチ=サビッチを失ったものの、今季のラツィオは層の厚さが近年でも有数と言われていた。鎌田のほか、バレンティン・カステジャノス、グスタフ・イサクセン、マテオ・ゲンドゥジ、ニコロ・ロヴェッラらを獲得。多くのポジションで複数の戦力をそろえたからだ。

それだけに、サッリが活用できていないとの見方もある。例えば直近で注目されているのが、大黒柱ルイス・アルベルトの起用法だ。

必要不可欠な選手であることは間違いない。だが、ルイス・アルベルトはこれまで公式戦全14試合に出場している。しかも交代したのは3回だけだ。出場時間1170分は、フィールドプレーヤーではチーム2位の数字である。過密日程の中で疲労の蓄積は避けられない。実際、随所で光るものを見せているが、直近のルイス・アルベルトは開幕当初ほどのキレではないとの指摘もある。

ここ数試合のサッリは、中盤のスタメンをルイス・アルベルトとゲンドゥジ、ロヴェッラの組み合わせで固定してきた。直近5試合のうち4試合がこの構成だ。CLフェイエノールト戦も、ゲンドゥジに代えてマティアス・ベシーノを起用するにとどまっている。

当初はこの中盤が最適解とも言われた。「魔法の方程式」と表現したメディアもあったほどだ。だが、公式戦ここ3試合で2敗を喫し、再びサッリ・ラツィオに緊張感が漂い出したのである。

■今後を左右する一週間に?

そんな重苦しい空気の中、ラツィオは極めて重要な一週間に突入した。7日のCLでフェイエノールトと、12日のセリエA次節でローマとのダービーに臨むのだ。

2週間前に敵地でフェイエノールトに敗れ、ラツィオはグループEの3位に転落した。本拠地オリンピコでのリターンマッチは非常に重要となる。最終節でアトレティコ・マドリーと敵地で対戦するだけに、勝ち点3が欲しいところだ。そして当然、ローマダービーの重要性は言うまでもない。

ラツィオのクラウディオ・ロティートは、これまでもシーズン中に監督を解任したことが少ない会長だ。『La Gazzetta dello Sport』紙や『Corriere dello Sport』紙などは、現時点でサッリ解任はないと報じている。内部に亀裂はなく、選手たちは監督を信頼してついていっているとの報道もあった。

だが、この2試合で連敗すれば、サッリとチームへの重圧は計り知れないものとなる。本格的に解任説が騒がれるようになってもおかしくない。この連戦を控えていることも、サッリ解任オッズに影響したのではないか。

■鎌田大地にCLで出番はあるのか

前述のように、サッリはターンオーバーを好まない。だが、この連戦は心身両面でチームを大きく消耗させる。そのため、今度こそメンバーの入れ替えがあるとの予想が多い。

鎌田先発復帰の可能性がより高いと見られるのは、フェイエノールト戦だ。『La Gazzetta dello Sport』紙は、サッリがCLで経験値、ダービーでフレッシュさを重視すると予想した。試合前日時点で、多くの主要メディアが、鎌田とルイス・アルベルト、ベシーノの中盤トリオを予想している。

サッリは前日会見で「CLはパーティー、リーグ戦は仕事」と表現した。安定的なCL出場のために国内での成績が重要ということだ。中盤の構成も、「CLは変更、リーグ戦は継続」が現実的だろう。もちろん、確実ではない。前回のフェイエノールト戦でも、試合前は鎌田先発予想が多かったが、実際にはベンチスタートだった。

ただ、先発復帰の場が欧州最高峰の舞台となれば、本人も望むところだろう。新天地を決める際、鎌田がCLを重視したのは知られている。注目度の高い舞台で、決勝トーナメント進出につながるような活躍を見せれば、状況を好転させる機会となるかもしれない。

カルチョ・ライター

東京都出身。2004年に渡伊、翌年からミランとインテルの本拠地サン・シーロで全試合取材。06年のカルチョーポリ・W杯優勝などを経て、08年に帰国。約10年にわたり、『GOAL』の日本での礎を築く。『ワールドサッカーダイジェスト』などに寄稿。現在は大阪在住。

中村大晃の最近の記事