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久保建英、ELローマ戦のイタリアメディア評価は? 「ソシエダで唯一、最も危険」

中村大晃カルチョ・ライター
2023年3月9日、ELローマ対レアル・ソシエダでの久保建英(写真:ロイター/アフロ)

レアル・ソシエダの久保建英は、イタリアの地で爪痕を残した。ただ、勝利にはつながらなかった。

3月9日のヨーロッパリーグ(EL)、ラウンド16ファーストレグのローマ戦で、ソシエダは0-2と敵地で敗れた。スタメンに名を連ねた久保は75分までプレー。ポストを叩くなど見せ場もつくった。

ソシエダは前半13分にカウンターからステファン・エル・シャーラウィに先制点を許すと、終盤にセットプレーからマラシュ・クンブラに追加点を献上。久保ら攻撃陣は得点を挙げられず、ホームでのセカンドレグを前にベスト8進出が厳しい状況に立たされている。

イングランド代表のクリス・スモーリングやイタリア代表のジャンルカ・マンチーニを擁するローマの守備陣にシャットアウトされたソシエダ。手痛い黒星を喫した一戦で、対戦した国のメディアから、久保はどのように評価されただろうか。

■ローマ戦の久保に対するイタリアメディアの評価

試合前から久保を警戒する声はあった。

対戦が決まった際のイタリアメディアのソシエダ分析でも、多くで久保の名前は挙げられていた。試合当日には、『Ultimo Uomo』が今季のリーガで頭角を現したひとりとして特集している。

『football news 24』は「ローマが必ず気をつけなければいけない」と警戒。得点やアシストの数字は特筆すべきものではないが、「レオナルド・スピナッツォーラのような経験ある強い選手をも脅かすだけのドリブルとステップ」を持つと伝えていた。

そして、試合後の評価も上々だ。

久保は21分に右サイドでローマ主将ロレンツォ・ペッレグリーニの裏を突き、ボックス内に侵入。GKルイ・パトリシオに迫り、ポスト直撃のシュートを放った。28分にはダビド・シルバに向けて好クロスを入れている。スモーリングに阻まれたが、オウンゴールもあり得るという場面だった。

採点記事では、一部で久保がチーム最高と評価されている。

『Mediaset』はチーム最高タイとなる及第点の6点をつけた。

「狭い中でダイナミックかつ活発。だが、ゴール前では具体的でなかった。右サイドからスタートし、攻撃の前線のほぼすべてを動いた。前半にペッレグリーニを抜いてポスト直撃」

また、『Gazzetta dello Sport』紙はチームベストのマルティン・スビメンディと並ぶ6.5点だ。

「サムライはすべてのボールにダイブした。おそらく、相手に仕掛けようとしていた唯一の選手だ。ポスト直撃でしか報われず、後半は低下」

『EUROSPORT』や『TUTTOmercatoWEB』も6.5点だが、こちらはチーム単独トップの採点だった。

前者は「ローマの守備陣に本当に少し混乱をもたらした唯一の選手だった。前半にポスト直撃、後半はクンブラにも何度か困難を引き起こした」と報道。後者は「間違いなくソシエダで最も納得させた選手。前半はハツラツとし、3バックを何度か悩ませ、ポストを叩いた」と伝えている。

■8強に前進でローマ称賛

だが、試合そのものを伝える記事で、久保の名前はあまり見られなかった。

『Repubblica』が「おそらくソシエダで最も危険だった」と評しているが、ほとんどの報道はポスト直撃のシュートを放った事実を伝えるのみにとどまっている。

もちろん、イタリアのメディアだからだが、何よりもローマのパフォーマンスが良かったからでもある。

『fanpage』は「ほぼ完ぺきなローマ」と称賛。Repubblicaは「かなり複雑ではあったが、予想されたよりは危険がなかった試合」と報じた。

年明け以降、ローマは本拠地オリンピコで公式戦9試合8勝と圧倒的な強さを誇っている。しかもこの8勝はいずれも無失点での白星だ。ソシエダも、そのローマのゴールをこじ開けられなかった。

ただ、Gazzetta dello Sportは、ソシエダが本拠地アノエタでのセカンドレグではより積極的な姿勢で臨むはずと強調している。2-0というスコアでローマ有利なのは確かだが、8強進出が決まったわけではない。1週間後のセカンドレグで久保らがどのように巻き返すか注目だ。

カルチョ・ライター

東京都出身。2004年に渡伊、翌年からミランとインテルの本拠地サン・シーロで全試合取材。06年のカルチョーポリ・W杯優勝などを経て、08年に帰国。約10年にわたり、『GOAL』の日本での礎を築く。『ワールドサッカーダイジェスト』などに寄稿。現在は大阪在住。

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