似たような“イイ話”の例は、枚挙にいとまがない。それでも、イタリアのメディアは「寛大な心」「優しい性根」と取り上げた。これまで、彼が何度も同じような善行を繰り返してきたからだ。賛辞を寄せずにはいられない。

6月20日で30歳になったナポリのカリドゥ・クリバリが、誕生日にイタリアから母国セネガルに向けて自費で船便を送った。約1週間でダカールに着く船に載せられたのは、2台の救急車や担架、サージカルガウン、マスクといった医療用具だ。

アメリカのジョンズ・ホプキンス大学の集計によると、セネガルでの新型コロナウイルスの新規感染者数は、約3カ月にわたり1日100人未満。死者は1桁で推移している。だがもちろん、医療資源が少しでも増えるに越したことはない。そもそも、病気は新型コロナウイルスだけではない。

フランス生まれだがセネガルにルーツを持ち、セネガル代表としてプレーするクリバリだけに、母国やアフリカの地に思い入れがあるのは言うまでもない。選手の強い愛情が詰まった船の到着を、セネガルの人々は心待ちにしているだろう。

『fanpage.it』によると、クリバリ本人がセネガルで船を迎え入れるという。欧州ではEURO2020が開催中だが、休暇中のクリバリはアフリカで恵まれない子どもたちのための団体を訪問しているようだ。インスタグラムに、子どもたちとの交流の様子が投稿されている。

クリバリは以前もセネガルの子どもの夢をかなえたことがある。手術のためにナポリに来た少年が自分との対面を望んでいると知り、病院を訪れてユニフォームなどをプレゼントしたのだ。

セネガルやアフリカだけではない。2014年からセリエAで戦うクリバリは、住んで7年となるナポリとその人々への連帯も示してきた。恵まれない人たちへの行動が、たびたび目撃されている。

今年1月には、路上で恵まれない人たちが冬の寒さをしのげるようにコートを差し出した。目撃者はSNSで「ナポリの人間、ナポリのサポーターとして、あなたのことを誇らしく思う」と称賛している。元日に商業施設の前でホームレスに500ユーロ(約6万6000円)を寄付したこともあった。

毎年のように移籍の可能性を騒がれながら、クリバリはナポリで30歳を迎えた。メガクラブを経験しないままベテランの域に達し、中にはステップアップの機会を逃したとの見方もあるようだ。

だが、ピッチでは屈強な肉体と高い知性でチームを支え、ピッチの外では常に他人を思いやる優しい性根を持つクリバリが、周囲から強く愛されてきたのは確か。選手として、人として、歩んできた道に幸せだったかどうか、決めるのはクリバリ本人だ。

今夏も、去就を巡る噂や報道は後を絶たない。移籍市場の世界は、「一寸先は闇」。クラブの意向に左右される可能性もある。だが、なにはともあれ、クリバリ本人の決断を見守りたい。