Yahoo!ニュース

EURO2020は「イタリアの大会」? 代表好調&大会総得点の半数はセリエA選手が記録

中村大晃カルチョ・ライター
6月16日、EURO2020スイス戦で得点を挙げたイタリアのインモービレ(写真:Maurizio Borsari/アフロ)

復権を叫ぶには早すぎる。急いてはいけない。ただ、復活を感じる人は多いはずだ。

6月16日のEURO2020グループA第2節で、イタリアはスイスに3-0と勝利した。トルコとの開幕戦と同じスコアでの快勝で、一番乗りとなる決勝トーナメント進出を決めている。

ロベルト・マンチーニ監督率いるアッズーリ(イタリア代表の愛称)は、29試合連続無敗に加え、10試合連続クリーンシート(無失点)の10連勝という見事な数字を達成した。この10試合で31得点を挙げている。もはや「カテナチオ」「ウノゼロ」が過去なのは、周知のとおりだ。

見事な内容に結果が伴えば、当然評価は右肩上がりとなる。優勝候補に推す声も増えてきた。ただ、当事者たちは謙虚な姿勢を崩さない。実際、戦力的には、最右翼とは言えないだろう。“ホーム”を離れるラウンド・オブ・16で完敗すれば、手のひら返しされるのは想像に難くない。

それでも、イタリアが4年前のワールドカップ予選敗退の屈辱を払しょくしつつあるのは確かだ。そして、雪辱を果たそうと意気込む選手たちが日ごろ鍛錬を重ねてきた場が、セリエAである。

26名のイタリア代表戦士のうち、国外クラブ所属は4人のみ。パリ・サンジェルマン(PSG)のマルコ・ヴェッラッティとアレッサンドロ・フロレンツィ、チェルシーのジョルジーニョとエメルソン・パルミエリだ(※レンタル選手はレンタル先所属の扱い。ジャンルイジ・ドンナルンマはミラン在籍の扱い)。

トルコ戦は、スタメン11人のうち9人がセリエAクラブの選手だった。スイス戦は、その数が10人に増えた。この2試合で途中出場した選手たちも、普段はいずれもセリエAでプレーしている。

6月16日、EURO2020スイス戦のイタリア代表先発イレブン
6月16日、EURO2020スイス戦のイタリア代表先発イレブン写真:代表撮影/ロイター/アフロ

イタリア代表だけではない。今大会では、セリエAのクラブに所属する他国代表の選手たちも活躍中だ。彼らの得点数も、そのひとつの例と言えるだろう。6日目を終えたEURO2020では、15試合で34得点が生まれた。そのうち16得点が、セリエAの選手によるものだ。

イタリア対トルコが行われた初日は、メリフ・デミラル(ユヴェントス)のオウンゴールを皮切りに、チーロ・インモービレ(ラツィオ)とロレンツォ・インシーニェ(ナポリ)が追加点。2日目は、ロメル・ルカク(インテル)が2得点でベルギーを快勝に導いた。

6月12日、EURO2020ロシア戦で得点を挙げたベルギーのロメル・ルカク
6月12日、EURO2020ロシア戦で得点を挙げたベルギーのロメル・ルカク写真:代表撮影/ロイター/アフロ

3日目は、歴史的な初出場を果たした北マケドニアの英雄ゴラン・パンデフ(ジェノア)がメモリアルゴールを記録。4日目は、スロバキアが2-1でポーランドに勝利した試合で、スコアラーが全員セリエAの選手だった。ヴォイチェフ・シュチェスニー(ユヴェントス)のオウンゴールと、カロル・リネッティ(トリノ)、ミラン・シュクリニアル(インテル)の得点だ。

5日目は、ポルトガルのクリスティアーノ・ロナウド(ユヴェントス)が2得点でハンガリーを粉砕。6日目は、アレクセイ・ミランチュク(アタランタ)がロシアに、アーロン・ラムジー(ユヴェントス)がウェールズに初白星をもたらした。そして、マヌエル・ロカテッリ(サッスオーロ)の2得点とインモービレの追加点でイタリアがグループステージ突破を果たしている。

6月15日、EURO2020ハンガリー戦で得点を挙げたポルトガルのC・ロナウド
6月15日、EURO2020ハンガリー戦で得点を挙げたポルトガルのC・ロナウド写真:代表撮影/ロイター/アフロ

なお、その他の18得点のうち、10得点はドイツ、5得点はイングランドのクラブに所属する選手によるもの。それ以外は中国、オランダ、ベルギーのクラブの選手が1得点ずつ挙げている(※ジョルジニオ・ワイナルドゥムはリバプール扱い)。

もちろん、イタリア代表の好調と、セリエA選手の得点が多いというだけで、「イタリアサッカー復権」と言うことはできない(もちろん、2つのオウンゴールが『活躍』ではないのも当然だ)。この流れが、すぐに止まる可能性もある。

ただ、国際舞台で苦しむ近年、セリエAとイタリア代表にはネガティブなイメージがつきまとった。必然的に、カルチョファン以外の注目度は下がりがちとなる。それだけに、主要大会でアッズーリとセリエA選手が目立つのはポジティブ要素だ。

目立って引き抜かれる可能性も十分あるが…まずは、アッズーリとセリエA選手の今後の大会での活躍を期待したい。

カルチョ・ライター

東京都出身。2004年に渡伊、翌年からミランとインテルの本拠地サン・シーロで全試合取材。06年のカルチョーポリ・W杯優勝などを経て、08年に帰国。約10年にわたり、『GOAL』の日本での礎を築く。『ワールドサッカーダイジェスト』などに寄稿。現在は大阪在住。

中村大晃の最近の記事