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パオロ・ロッシの「遺言」を妻が実現、バラの花束に込められた亡き英雄の想い

中村大晃カルチョ・ライター
2018年6月、会見でのパオロ・ロッシ氏(写真:Shutterstock/アフロ)

2020年12月に64歳の若さで亡くなったパオロ・ロッシ氏は、何よりも残される子どもたちの将来を案じていた。そして想いを妻に託した。

5月7日、9歳の誕生日を迎えたロッシ氏の娘に、赤いバラの花束が贈られた。添えられたカードには、こう書かれていた。

「私のお姫さま、おめでとう。ありったけの永遠の愛とともに。パパ」

贈り主は、父親のロッシ氏だった。妻フランチェスカさんが、生前に頼まれたと明かしている。

最後まで病と闘いつつ、ロッシ氏は妻と先のことも話し合っていた。子どもたちのことが気がかりだったからだ。フランチェスカさんは、9日付『コッリエレ・デル・ヴェネト』紙で「子どもたちの成長を見られないこと、特別な時にそばにいられないことが、最大の苦悩のひとつでした」と振り返っている。

特に、11歳の息子以上に娘のことを心配していたというロッシ氏は、妻にあることを頼んだ。毎年の子どもたちの誕生日に、年齢と同じ数の赤いバラの花束をプレゼントしてくれ――と。

9歳の娘の誕生日に、フランチェスカさんはロッシ氏の“遺言”を実行した。娘は父親からの贈り物に涙を流し、母親と抱き合ったという。誕生日パーティーの間、ずっと花束を離さなかったそうだ。フランチェスカさんは「彼女にとっては計り知れない喜び」だったと話している。

「私がいる限り、子どもたちは父親からの祝福メッセージと花束を受け取り続けていきます」。

ロッシ氏の“贈り物”は、花束とメッセージだけではない。子どもたちがスポーツに関心を寄せることを望み、妻に「常に新しいことに挑戦しながら、様々な活動をさせてくれ」と頼んだという。

「娘は乗馬を始めました。パパはきっと、子どもたちを誇らしく思っていることでしょう」

イタリアの英雄は、天から愛する子どもたちを見守り続ける。

カルチョ・ライター

東京都出身。2004年に渡伊、翌年からミランとインテルの本拠地サン・シーロで全試合取材。06年のカルチョーポリ・W杯優勝などを経て、08年に帰国。約10年にわたり、『GOAL』の日本での礎を築く。『ワールドサッカーダイジェスト』などに寄稿。現在は大阪在住。

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