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ミラン、インテル、ユーヴェ…今季はアウェー有利? セリエAで史上初の「地の利消滅」か

中村大晃カルチョ・ライター
2020年12月23日、ホームでのセリエAラツィオ戦で勝利したミラン(写真:ロイター/アフロ)

セリエAの首位を走るミランの快進撃は、開幕当初の予想を覆している。

ロックダウン以降、ミランはリーグ戦で無敗を保っている。それだけの強さを支える要因が様々なのは言うまでもない。ただ、特に大きなポイントのひとつとみられるのが、プレッシャーのなさだ。

ズラタン・イブラヒモビッチら一部のベテランを除き、ミランは若い選手が多いチームだ。決して経験が豊富ではない彼らが躍動している理由のひとつに、無観客試合をあげる声は少なくない。

新型コロナウイルスの影響で、セリエAも無観客が続いている。一時期、わずかな観客が入場を認められたが、感染者数増加で規制が再び強化。すぐに、ファンはスタジアムから再び消えた。

経済的打撃を筆頭に、無観客試合のデメリットが少なくないのは当然だ。ただ、一方で、ブーイングや野次がないことは、選手を心理的に解放するとの見方もある。気負わず、のびのびとプレーできるというわけだ。そしてこれは、ミランに限ったことではないのかもしれない。

『コッリエレ・デッロ・スポルト』紙は1月2日、今シーズンのセリエAはアウェーチームの獲得勝ち点がホームチームを上回っていると指摘した。このままシーズンが終われば、セリエAが現在の全国リーグになった1929年以降、92年目にして初の記録になるという。

2020年12月23日、アウェーでのセリエAエラス・ヴェローナ戦で勝利したインテル
2020年12月23日、アウェーでのセリエAエラス・ヴェローナ戦で勝利したインテル写真:ロイター/アフロ

◆上位ほど重圧から解放?

今シーズン、セリエAのホームチームが獲得した勝ち点が183ポイントなのに対し、アウェーチームの獲得勝ち点は192ポイント。割合にすると、48.8%対51.2%だ。

実際、20チーム中12チームが、ホームよりアウェーで獲得した勝ち点が多い。首位ミラン、2位インテルをはじめ、サッスオーロ、ユヴェントス、アタランタ、ラツィオ、ベネヴェント、サンプドリア、ウディネーゼ、スペツィア、ジェノア、トリノの12チームだ。

興味深いのは、アウェーでの勝ち点のほうが多い12チームのうち、7チームが順位表の左側、つまりトップ10に位置していることだ。さらに絞ると、トップ8のうちの6チームとなる。

筆者作成
筆者作成

ただ、ユヴェントスとアタランタは、ホームでの消化試合数が1試合少ない。このホームゲームで勝利していたと仮定した場合、獲得勝ち点はホームでのそれが上回る。

だが、ユーヴェとアタランタが未消化のホームゲームを勝利しても、アウェーで獲得した勝ち点との差は1ポイント。少なくとも、ホームで圧倒していたり、アウェーで苦戦しているわけではない。

なお、上位からは外れるが、ホーム消化数が1試合多いウディネーゼは、それでもアウェー(8)での獲得勝ち点のほうがホーム(7)より多い。

◆下位はホーム>アウェー傾向

逆に、ホーム開催が2試合少ないカリアリは、それでもホーム(8)でアウェー(6)を上回る勝ち点だ。このカリアリのように、下位のチームは、ホームでの獲得勝ち点が上回る傾向にある。

ボローニャはホーム(10)での勝ち点がアウェー(5)の2倍に達しており、今季唯一アウェーで未勝利のクロトーネも、勝ち点9の大半がホーム(7)で手にしたものだ。

一方で、ホーム(3)で未勝利ながら、アウェー(8)で多くのポイントをあげ、少なくとも現時点で降格圏の上にいるスペツィアのようなチームもある。

2020年12月23日、セリエAアタランタ戦で今季初得点をあげたボローニャの冨安健洋
2020年12月23日、セリエAアタランタ戦で今季初得点をあげたボローニャの冨安健洋写真:Maurizio Borsari/アフロ

◆アウェーチームの姿勢に変化か

かつてはホームで戦うことに地の利があるとされた。特にビッグクラブは大勢の観客からの後押しがあり、中小クラブはアウェーで「勝ち点1で御の字」という姿勢だった。

しかし、『コッリエレ・デッロ・スポルト』紙によると、2014-15シーズン以降は毎年、アウェーでの獲得勝ち点が全体の4割を上回る。アウェーチームの戦い方が変わってきたことを示すひとつのデータと言えるのかもしれない。

同紙は、21世紀に入り、アウェーでの白星がシーズンを通じてなかったのが、わずか6チームしかないと指摘している。バーリ(2000-01)、トリノ(02-03)、アンコーナ(03-04)、メッシーナ(06-07)、カターニア(07-08)、パルマ(07-08)の6チームだ。

このうち、残留したのはカターニアのみという。つまり、アウェーとはいえ、まったく勝てないチームは生き残れないということだ。コロナ禍による無観客開催のみならず、こういった変化も「地の利消滅」に影響しているかもしれない。

1月3日、セリエAは第15節の10試合が開催される。アウェー有利(?)の傾向は、2021年も続くだろうか。

カルチョ・ライター

東京都出身。2004年に渡伊、翌年からミランとインテルの本拠地サン・シーロで全試合取材。06年のカルチョーポリ・W杯優勝などを経て、08年に帰国。約10年にわたり、『GOAL』の日本での礎を築く。『ワールドサッカーダイジェスト』などに寄稿。現在は大阪在住。

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