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9連覇ユヴェントス、地元メディアの“通信簿” C・ロナウド&ディバラ圧倒、安定の高評価選手は…

中村大晃カルチョ・ライター
2019年12月7日、セリエAラツィオ戦でのC・ロナウドとディバラ(写真:ロイター/アフロ)

7月26日、セリエA第36節でサンプドリアを2-1と下し、ユヴェントスが9年連続36回目のスクデット(優勝)を決めた。

今季のユヴェントスは、マッシミリーノ・アッレグリ前監督に別れを告げ、ナポリ時代にスペクタクルなサッカーで世界を魅了したマウリツィオ・サッリ監督を招へい。勝つことに加え、内容でも納得させるための新時代を目指した。

その目標じたいは、達成したと言いがたい。ナポリ黄金期のようなパス回しを見ることはできず、勝利数こそリーグ最多だが、黒星の数も5つを記録。2試合を残して38失点は過去8年と比べて最多で、得点数もアタランタに21ゴール差をつけられている。

だが、新型コロナウイルスの影響でリーグが3カ月中断した異例のシーズンだけに、たとえ絶対王者といえども難しい一年だったことは間違いない。新体制の1年目とあればなおさらだ。

主将ジョルジョ・キエッリーニは、インスタグラムで「どのスクデットにも物語があるが、これがもっとも苦しんだスクデットなのは確かだ。(中略)だから、喜びはさらに大きい」と述べている。

苦しみながらも前人未到の9連覇という偉業を達成したユヴェントスの面々を、地元メディアはどのように評価したのだろうか。『ガゼッタ・デッロ・スポルト』『コッリエレ・デッロ・スポルト』『トゥットスポルト』の3大スポーツ紙、一般紙『コッリエレ・デッラ・セーラ』、テレビメディア『スポーツ・メディアセット』、ウェブメディア『Calciomercato.com』『TUTTOmercatoWEB.com』の採点を見てみよう。

◆ディフェンス

守備陣で各メディアが特に高く評価したのは、守護神のヴォイチェフ・シュチェスニー、今季がセリエ初挑戦だったマタイス・デ・リフト、そして右SBを主戦場として新たな境地を切り開いているフアン・クアドラードの3選手だ。

筆者作成
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前述のように、失点数は38と少なくない。データサイト『Opta』によれば、この失点数でリーグを制したのは、1960-61シーズンのユヴェントス以来、59年ぶりという。

それでも、28試合出場で30失点、クリーンシート11試合を記録したシュチェスニーの評価は高い。失点はチーム全体のプレーに起因するもので、守護神はむしろその数を抑えたという評価だ。

守備の国イタリアに来て1年目のデ・リフトは、前半戦こそ苦しんで浮き沈みがあったが、時間とともに必要不可欠な存在となった。ただ、採点では「9」や「8」と圧倒的な評価をつけたメディアと、「7」「7.5」と“高評価”にとどまったメディアとに分かれている。

筆者作成
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安定して「7.5」以上の高い採点だったのが、サイドバックの層に厚みがないうえに、チームメートたちが負傷で離脱するなか、貴重な貢献を続けたクアドラード。シーズン途中までコーチを務めたアンドレア・バルザーリの指導もあり、守備面も向上した。

◆中盤

サッリ・ユーヴェで最も批判を浴びたのが、プレーの軸となる中盤だ。負傷で離脱を繰り返したサミ・ケディラや冬に退団したエムレ・ジャンを除き、中心選手たちは基本的に及第点(6点)に達している。ただ、“ご祝儀採点”の要素もあるだけに、新加入のアドリアン・ラビオやアーロン・ラムジーの評価は決して高かったと言えないだろう。

筆者作成
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司令塔として期待されたミラレム・ピアニッチも、シーズン半ばから失速した。代わって存在感を見せたのが、23歳のロドリゴ・ベンタンクールだ。アンカーとしてもインサイドハーフとしても高く評価され、もはやユーヴェの中盤で最も欠かせない「顔」に成長した。

◆オフェンス

サッリらしいプレーを構築できなかった今季のユーヴェがタイトルを獲得できたのは、規格外のカンピオーネたちが個の力を見せつけたからという見方は少なくない。

その筆頭が、攻撃陣を担ったクリスティアーノ・ロナウドとパウロ・ディバラだ。2人合計で42得点は、チーム総得点(75)の56%に当たる。彼らがネットを揺らさずに挙げた勝利は、23勝のうち3つだけという数字が、いかにチームをけん引していたかを物語る。

当然、評価は圧倒的だ。10点満点の採点をつけたメディアもあれば、『コッリエレ・デッロ・スポルト』のアルベルト・ポルヴェロージ記者は「彼らのスクデット」と称賛。『ガゼッタ』のルカ・ビアンキン記者は、C・ロナウドが「最も決定的」でディバラが「最もスペクタクル」と賛辞を寄せた。

筆者作成
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一方で、度重なるケガで計算しにくかったドグラス・コスタや、恩師サッリの下で完全に輝きを取り戻すには至らなかったイグアインは格別の評価を得るには至らず。序盤とロックダウン後に出場機会を得たものの1得点に終わったフェデリコ・ベルナルデスキは、一部で厳しい採点だった。

◆指揮官

なお、サッリの採点は『トゥットスポルト』を除き、6メディアのうち4社が「7」。「6.5」と「7.5」が1社ずつだった。C・ロナウドやディバラがほとんど「9」以上だったことを考えれば、指揮官の評価が高いとは言いがたい。

優勝してもなお、内容への批判が聞かれるサッリが騒音を吹き飛ばすには、8月に再開するCLで、クラブの悲願である欧州制覇を成し遂げるしかない。

カルチョ・ライター

東京都出身。2004年に渡伊、翌年からミランとインテルの本拠地サン・シーロで全試合取材。06年のカルチョーポリ・W杯優勝などを経て、08年に帰国。約10年にわたり、『GOAL』の日本での礎を築く。『ワールドサッカーダイジェスト』などに寄稿。現在は大阪在住。

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