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インテルは「ドルトムントの教訓」を生かせるか 監督がクラブを公然批判して賛否両論

中村大晃カルチョ・ライター
11月5日、CLドルトムント戦で逆転負けしたインテルのコンテ監督(写真:ロイター/アフロ)

天国から地獄に突き落とされたショックで感情的になったのか、不可避であろう批判の矛先をチームから逸らそうとしたのか、2カ月後に可能となる補強を自分の希望どおりに進めるためなのか。あるいは、そのすべてなのか。理由は、本人にしか分からない。

11月5日のチャンピオンズリーグ(CL)・グループステージ第4節で、インテルはボルシア・ドルトムントに敵地で2-3と敗れた。ほぼ完ぺきな内容で前半に2点を先行しながら、一方的に押された後半に3失点しての逆転負けだ。

勝っていれば、決勝トーナメント進出を大きく引き寄せていたはずだ。だがこれで、インテルはグループ首位のバルセロナに勝ち点4差、2位ドルトムントに同3差となり、グループステージ突破が厳しくなった

◆コンテがクラブを“口撃”

その試合後、アントニオ・コンテ監督が口にしたのは、前半のリードを保てなかった選手たちへの苦言でも、崩れ落ちる一方のチームを立て直せられなかった自分への批判でもなく、クラブ首脳陣への怒りだった。

以前から選手層の薄さに不満を隠してこなかったコンテ監督は、過密日程の中で戦い続ける選手を「感謝しかない」と擁護。逆に「幹部がメディアの前に出てこい」「もっとうまく計画できたはず」「メルカートが称賛されたが実際は間違えた」と、フロントを痛烈に批判したのだ。

確かに、セリエA で8連覇中の王者ユヴェントスと競い、バルセロナやドルトムントと同組のCLを戦っていくうえで、インテルの選手層は十二分とは言えない。ただ、公の場でクラブを批判すれば、その影響が小さくないのも当然だ。

◆ファンや識者の意見は二分

そのため、コンテ発言は賛否両論を呼んでいる。インテル専門サイト『fcinter1908』によると、SNSではサポーターから様々な意見が飛び出した。

例えば、賛成派は次のようにツイートしている。

「確実なのは、コンテが望む選手を獲れば成功が保証されるということ」

「キツかったかもしれないが、まったく正しい。トッププレーヤーたちが必要」

「蘇寧の野心を試しているのさ。1月にしっかり補強すればスクデットを狙えると信じているんだ」

自分ならこの監督のために戦争にも行く。すでにヘルメットをかぶっているヤツらは、トップを競うのではなく、毎年CLに出るだけで満足なのさ」

一方で、反対派はこのようにコンテを批判した。

「それよりうまく交代枠を使え」

「決して自己批判せず、いつもだれかのせい

「言っていることは間違えていないが、言い方を間違えている

「確かにスカッド改善は必要だが、後半がひどいのはもう3回目。選手層のせいだけか?

「こういう振る舞いが、チェルシー以降にトップクラブがどこも彼と契約しなかったのを示している」

評論家の間で少なくないのは、公の場で怒りをぶちまけたことと、そのタイミングを疑問視する声だ。選手層については指摘どおりだが、ドルトムント戦の敗因ではなく、コンテが欧州での直近8試合のアウェーゲームで6敗していることもあり、クラブだけの責任にはできないという主張だ。

アルベルト・チェルッティ記者は、『calciomercato.com』で「インテルがすべきは厳しい自己批判だけ」「このような試合を落とすことはできない」と批判した。

ファブリツィオ・ボッカ記者も、『レプッブリカ』で「インテルの問題は、もっとうまくマネジメントするだけで勝てた試合を悪く落としたことであり、クラブの計画ミスのせいで負けたとは言えない。選手層に関しては正しい主張かもしれないが、クラブの責任と指摘するのは不当で正しくない」と記した。

『ガゼッタ・デッロ・スポルト』電子版のアンケートでも、2000人を超えるユーザーのうち、約66%が「クラブが正しい」と回答。約20%が「コンテが正しいがクラブを攻撃すべきでない」とし、「クラブは不十分でコンテが正しい」は約14%にとどまっている。

◆重要なのは糧にすること

何より大切なのは、未来だ。ボッカ記者は今後への影響が避けられないと記した。アルベルト・ポルヴェロージ記者も、ゴタゴタがリーグのタイトル争いにも影響すると指摘している。

「どうしていつもユーヴェだけが勝つのかと人は疑問に思うが、その答えをユーヴェだけに求めるべきではない。そのライバルたちに求めるべきだ。ユーヴェはいつものように、感謝するばかりだ」

アルベルト・ダッラ・パルマ記者は、『コッリエレ・デッロ・スポルト』で「(残り2試合で)ドルトムント戦の前半を繰り返せれば、CLは今夜で終わったわけではない。信じて、また消えることがないようにするだけでいい」と、欧州最高峰の舞台での戦いはまだ終わっていないと強調した。

ルイジ・ガルランド記者も、『ガゼッタ』で「ドルトムントの教訓と呼ぼう。全員がそこから学べれば、勝つために計画されたチームの成長の大きな一歩となる。すぐに勝つわけではないかもしれないが」と、長期的にインテルの糧にすることが大事だと訴えている。

インテルはこれまでも、序盤の好調を持続させられず、シーズン途中に失速することがあった。コンテ体制ではその再来を避けたいところだ。

カルチョ・ライター

東京都出身。2004年に渡伊、翌年からミランとインテルの本拠地サン・シーロで全試合取材。06年のカルチョーポリ・W杯優勝などを経て、08年に帰国。約10年にわたり、『GOAL』の日本での礎を築く。『ワールドサッカーダイジェスト』などに寄稿。現在は大阪在住。

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