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63億円をミランにもたらすか、ピオンテクのロナウド&シェフチェンコ超え+新記録に期待

中村大晃カルチョ・ライター
3月9日、キエーヴォ戦でのピオンテク。このポーズを見られるかがCLへのカギ?(写真:ロイター/アフロ)

王者を相手に堂々と戦った。だが、結果は伴わなかった。そして残念ながら、春になると、何よりも結果が重要となる。チャンピオンズリーグ(CL)への切符を争っているなら、なおさらだ。

ミランは4月6日のセリエA第31節で、ユヴェントスに1-2と惜敗した。多くのライバルが勝ち点を落としたおかげで、4位の座はキープ。だが、勝ち点3差に8位トリノまでの5チームがひしめいており、CL出場権レースは大混戦となった。

『ガゼッタ・デッロ・スポルト』は12日、CLに出ればミランは5000万ユーロ(約63億円)の収入を確保できると報じた。財政面からも、4位フィニッシュは絶対命令となる。

UEFAによるファイナンシャルフェアプレー違反の指摘で、欧州の舞台での先行きが不透明だが、まずは出場権を得ないことには始まらない。

◆エースは先輩レジェンドを抜けるか

直近4試合で白星なしと苦しむミランに欠かせないのが、クシシュトフ・ピオンテクのゴールだ。

1月の加入から、新エースは11試合で8得点を挙げてきた。チーム得点数(17)の47%にあたる数字だ。ピオンテクが無得点だった4試合で勝ち点4、得点した7試合では同14と、ミランの平均勝ち点も大きく変わってくる

筆者作成
筆者作成

つまり、ピオンテクのゴールがCLへの扉を開けると言っても過言ではないだろう。そして、本人にとっても、得点量産はレジェンド超えの大記録樹立へとつながる。『ガゼッタ』によると、ピオンテクは、セリエ初年度の外国人選手得点記録を更新できるかもしれないのだ。

ミラン加入後、ピオンテクはリーグ戦で105分おきに1得点を挙げている。このペースを保てば、残り7試合で27得点の計算だ。東欧出身でミランのレジェンドとなった先輩アンドリー・シェフチェンコ(24得点)や、元インテルの“怪物”ロナウド(25得点)を上回る。

さらに、1957-58シーズンのジョン・チャールズ(ユヴェントス)や1958-59シーズンのジョゼ・アルタフィーニ(ミラン)が記録した28得点も抜くチャンスがある。実現すれば、セリエAで60年ぶりとなる新記録達成だ。

◆上位勢に弱いミラン

もちろん、ピオンテクが得点すれば、ミランが必ず勝つというわけではない。特に13日の次節ラツィオ戦は、ミランが苦手としている上位勢との直接対決だ。今季のミランはトップ8との12試合で、2勝5分け5敗と勝ち点11しか挙げていない

前半戦ではラツィオと引き分けており、直接対決の成績で優位に立つためにも、ミランとしては勝利が欲しいところ。そもそも、負ければ、他クラブの結果次第では8位転落の恐れもある。

上位勢に弱いミランだが、それ以外の19試合では、12勝5分け2敗で勝ち点41を手にしている。残り7試合で対戦するトップ8は、ラツィオとトリノ(34節)のみ。ポイントを計算できる試合が少なくないということだ。

◆データではラツィオに有利

だからこそ、ラツィオ戦はシーズンの出来を左右しかねない大一番となるが、ミラニスタにとって朗報なのが、12日に『ガゼッタ』が紹介したデータだ。

サン・シーロでは75試合43勝23分け9敗(150得点、71失点)と、ミランはラツィオに大きく勝ち越している。1989年9月以来、約20年も負けていない。

2019年4月12日ガゼッタ・デッロ・スポルト参照、筆者作成
2019年4月12日ガゼッタ・デッロ・スポルト参照、筆者作成

さらに、ジェンナーロ・ガットゥーゾはラツィオのシモーネ・インザーギと5回対戦し、2勝3分けと無敗。イタリアで4回以上対戦した監督たちの中で、ガットゥーゾはインザーギだけには一度も負けていないのだ。

◆監督はCL出場でもクビ?

ただ、ラツィオ戦からの7試合で目標を達成しても、ガットゥーゾがCLで指揮を執るかは分からない内紛も噂されているミランは、監督交代説が後を絶たないのだ。

例えば、アルベルト・チェルッティ記者は、『Calciomercato.com』で、最終順位にかかわらず、ガットゥーゾ退任は既定路線と主張している。

その理由は、ガットゥーゾは現経営陣が選んだ人材でなく、イメージ重視の現代サッカー界の監督に必要なカリスマ性やエレガントさ、選手起用・システム変更における柔軟性を欠き、レオナルドと対立しているからだ。ルーカス・ビグリアとフランク・ケシーが口論した際、試合後にクラブの人間がガットゥーゾだけに説明を委ねたのは、その良い例としている。

それでも、チェルッティ記者は、CL出場権獲得とともにシーズンを終えることが、「全員にとってより良い未来」を待ちつつ、理想的であるはずと指摘。そのためにガットゥーゾは全力を尽くすはずとも記した。

長かったシーズンも、いよいよ最後の直線を迎える。ガットゥーゾとミランは、夏を「より良い未来」にすることができるのか。まずはラツィオ戦に注目だ。

カルチョ・ライター

東京都出身。2004年に渡伊、翌年からミランとインテルの本拠地サン・シーロで全試合取材。06年のカルチョーポリ・W杯優勝などを経て、08年に帰国。約10年にわたり、『GOAL』の日本での礎を築く。『ワールドサッカーダイジェスト』などに寄稿。現在は大阪在住。

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