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ユーヴェ、C・ロナウド復帰より「重く響く」主将欠場…それでも「マドリーと同じ轍は踏まない」?

中村大晃カルチョ・ライター
C・ロナウド復帰とキエッリーニ不在はどちらが決め手に?(写真:ロイター/アフロ)

この大会に自分が出ないわけにはいかない――おそらく、彼は強くそう感じていたことだろう。

戦列を離れていたユヴェントスのクリスティアーノ・ロナウドが、チャンピオンズリーグ(CL)準々決勝ファーストレグという大事な試合で復帰を果たした。4月10日のアヤックスとの一戦を前にした会見で、マッシミリアーノ・アッレグリ監督が、エースの先発出場を明言している。

3月の代表戦で太ももを負傷したC・ロナウドだが、試合後に宣言したとおり、2週間で戦列復帰を遂げた。アトレティコ・マドリーとの決勝トーナメント1回戦でも、セカンドレグのハットトリックでチームを8強へ導いた背番号7の帰還を、ユーヴェとそのファンが喜んだのは言うまでもない。

◆CR7、準々決勝で圧巻の数字

もちろん、それはC・ロナウドの大舞台における強さを知っているからだ。

C・ロナウドはCL準々決勝を11回戦っているが、22試合のうち20試合に出場して23得点を挙げている。ハットトリックも2回記録。何より、一度も敗退していない。マンチェスター・ユナイテッドもレアル・マドリーも、C・ロナウドのチームは、ベスト8まで進めば必ず準決勝に進んでいるのだ。

10日付『コッリエレ・デッロ・スポルト』によると、CL通算125得点のうち、月別の内訳では4月(29得点)に最も多くのゴールを記録しており、いかに大事な時期にネットを揺らしているかが分かる。

『ガゼッタ・デッロ・スポルト』によると、アヤックスとの12試合では7得点をマークしており、そのうち5得点は敵地で挙げている。もちろん、復帰直後だけにコンディションへの懸念は残るが、今回のアウェーゲームでも得点への期待は大きい。

◆主将欠場がS・ラモスを思わせるとの声も

だが、エース復帰の朗報をかすませるようなバッドニュースが、主将ジョルジョ・キエッリーニの負傷欠場だ。ふくらはぎを痛めた背番号3は、16日のセカンドレグに間に合うかもまだ分からない。

レオナルド・ボヌッチとの鉄壁コンビで、ジョゼ・モウリーニョに「ハーバードで講義できる」とまで言わしめたキエッリーニだけに、その不在はあまりにも大きな痛手だ。

ファビオ・カペッロは『スカイ・スポーツ』で「守備統率のタイミングの取り方は世界屈指。ボヌッチはいつ守備すべきか忘れてしまうことがある」と、キエッリーニの重要性を指摘している。

アルベルト・ポルヴェロージ記者も、『コッリエレ』のコラムで、「C・ロナウドを別にして、今のユーヴェで最高の選手」であるキエッリーニの不在は、「チームから確実さを取り除く」とし、「想像以上に重く響く」と懸念を表した。

ジャンカルロ・パドヴァン記者は、『Calciomercato.com』で、代役のダニエレ・ルガーニではリーダーであるキエッリーニの穴を埋めることができないと主張。キエッリーニはマドリーにおけるセルヒオ・ラモスと同じ存在であり、そのS・ラモスが“辞退”した決勝トーナメント1回戦セカンドレグで、マドリーがアヤックスに屈したことから不安を綴っている。

試合当日に始まった『メディアセット』のアンケートでも、3000人を超えるユーザーのうち、64%と多くのファンが、C・ロナウド復帰以上にキエッリーニ欠場が決定的な要素になると回答した。

◆代役にとってターニングポイントにも?

実際、『ガゼッタ』のデータを見る限り、ルガーニ出場時のユヴェントスは失点率が増えている。ルガーニがいなかった26試合では14失点と1試合平均0.5失点だが、ルガーニが出場した16試合では15失点で1試合平均0.9失点と、2倍近くの失点を記録しているのだ。

しかし、ルガーニ本人は前日会見で自信と意気込みをあらわにした。「イタリアの未来を担うセンターバック」との期待を背に、王者ユーヴェに加入して3年。伸び悩みが指摘される24歳にとって、キエッリーニ不在の大一番で活躍すれば、キャリアのターニングポイントとなるかもしれない

アヤックスには、バルセロナやユヴェントスからの関心が取りざたされる19歳のマタイス・デ・リフトがいる。オランダの名門でキャプテンマークも巻いた5歳年下に負けたくないという気持ちもあるだろう。

『ガゼッタ』のフィリッポ・コンティチェッロ記者は、「あちら(デ・リフト)のように8000万ユーロの価値はないだろう。だがきっと、今夜から、多くの人が彼のことを新しい目で見るようになるはずだ」と、ルガーニに期待を寄せた。

イタリアサッカー界の重鎮アッリーゴ・サッキは、『ガゼッタ』で「アヤックスはマドリーがプレゼントしたスペースや緩いマークを目にすると思わないほうがいい。ユーヴェとはまったく別になるはずだ」と、イタリア王者の守備は欧州王者のそれとは違うと記している。

キエッリーニという大黒柱が不在でも、ユヴェントスの守備に綻びは生じないのか。そして、C・ロナウドにとって12回目のCLベスト8に向けて前進できるのか。キックオフまで、もうすぐだ。

カルチョ・ライター

東京都出身。2004年に渡伊、翌年からミランとインテルの本拠地サン・シーロで全試合取材。06年のカルチョーポリ・W杯優勝などを経て、08年に帰国。約10年にわたり、『GOAL』の日本での礎を築く。『ワールドサッカーダイジェスト』などに寄稿。現在は大阪在住。

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