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インテルの練習場に吸血鬼が再来? 7連勝後の完敗は悪癖のはじまりなのか

中村大晃カルチョ・ライター
11月11日、セリエA第12節でアタランタに屈してうなだれるインテルのイカルディ(写真:ロイター/アフロ)

バルセロナとの差は歴然としていた。それでも、カンプ・ノウで敗れた2週間前と違い、サン・シーロで勝ち点1をもぎ取ったのは大きな成果だ。

改善点は少なくない。だが、チャンピオンズリーグ(CL)でベスト16に進む道が見えてきた。それだけに、セリエAで7連勝していたインテルとそのサポーターの心をさらに躍らせる1ポイントだ。

しかし、わずか5日後、インテリスタは冷や水を浴びせられた。11月11日のセリエA第12節で、アタランタに敵地で1-4と屈したからだ。一度は同点に追いついたが、守護神サミル・ハンダノビッチの神がかったセーブの数々がなければ、さらなる大差をつけられてもおかしくない完敗だった。

◆「許されない負け方」は「深刻な病気」の兆候?

データサイト『Opta』によれば、前半だけで16本のシュートを打たれたのは、2013年2月以来約5年半ぶりのことだ。攻撃でも、マウロ・イカルディのPKを除いてチャンスはほぼなかった。

ステファーノ・バリジェッリ記者は、『ガゼッタ・デッロ・スポルト』で「負けるにも負け方がある、ビッグチームの負け方ではない」と、伝統あるインテルにとって「許されない」黒星だったと批判している。

「バルサ戦の疲労は当然影響したが、情状酌量には値しない。負けることはあっても、1分もプレーしないで負けるのはあり得ない。枠内シュートはイカルディのPKのみ。インテルほどのポテンシャルを持つチームがそれではいけない」

さらに、バリジェッリ記者は「勝つには継続性が必要。それが見つけられないなら、思っている以上に深刻な病気だ」と、インテルの安定感のなさを指摘した。『コッリエレ・デッロ・スポルト』のイヴァン・ザッザローニ編集長も「この点を改善しなければいけない」と、同様の指摘を口にしている。

◆崩れだすと止まらない悪癖

実際、近年のインテルにとって「継続性」は修正必須の大きな課題となっている。大勝や連勝後、スランプに陥ることが多いのだ。格下相手でも負けることはある。だが、まるで雪崩に巻き込まれたかのように、そのまま転がり落ちていくケースが少なくない。

2011-12シーズンは、12月から1月にかけて7連勝したにもかかわらず、レッチェに負けたのをきっかけに7試合白星から遠ざかり、クラウディオ・ラニエリが解任された。最終結果は6位。CL出場権を逃し、ヨーロッパリーグ(EL)の切符を手にするのみに終わっている。

その翌シーズンも、序盤戦で7連勝を飾りながら、敵地でアタランタに黒星(このときも11月11日だった)。すると、ホームでカリアリと引き分け、続くパルマ戦でも敗れるなど、格下相手に勝ち点を落とし、最終的には9位でフィニッシュ。CLどころかELにも出られなかった。

2015-16シーズンは、ロベルト・マンチーニの下で前半戦に躍進。ユヴェントスと同じ勝ち点の2位で折り返しを迎えたが、前半戦最後のサッスオーロ戦で敗れてから7試合で1勝と低迷。またもCL出場権を逃している。

ステーファノ・ピオーリが16節から22節まで7連勝(公式戦9連勝)を記録し、序盤の不振から立て直した2016-17シーズンも、3月にアタランタを7-1と粉砕した直後から8試合白星なしの勝ち点2と絶不調。残り3試合でピオーリは解任され、7位でシーズンを終えた。

そしてルチアーノ・スパレッティを迎えた昨季、12月のキエーヴォ戦で5-0と大勝するなど、開幕から16試合無敗で首位にも立ったが、その後8試合白星から遠ざかって転落。4位に滑り込み、7年ぶりにCLへのチケットを手にしたが、それは出場枠の拡大もあったからだ。

◆インテルに巣食う吸血鬼

5日、サン・シーロでのバルセロナ戦を前にした会見で、スパレッティは昨季のスランプに言及した際、「ピネティーナ(練習場)のヴァンパイアが我々の血、そしてクオリティーを吸い取った」と表現している。

グイド・デ・カロリス記者は『コッリエレ・デッラ・セーラ』で「監督や選手が変わっても、連勝後に気を抜いてしまう悪癖を治すことができない」と批判した。

「インテルは負けるときに、確実だったことをすべて疑問視させるような完敗をしてしまう。昨季はウディネーゼ戦から8戦白星なしで、立ち上がるのが大変だった。同じことが恐れられる」

インターナショナルウィークが明けると、インテルはサン・シーロに19位フロジノーネを迎える。その後は16強進出が懸かるCLトッテナム戦、そしてローマ、ユヴェントスとの厳しいアウェー連戦だ。トッテナム戦の結果次第では、続くPSV戦も重要度の高い試合となり得る。フロジノーネ戦で白星を取り戻さなければ、デ・カロリス記者が指摘したように、近年の悪癖が繰り返される恐れもある。

今季も7連勝やジェノア戦の大勝(5-0)など、ファンを興奮させてきたインテル。その中で訪れたアタランタ戦の大敗は、「ピネティーナのヴァンパイア」の再来を意味するのか。それとも…

カルチョ・ライター

東京都出身。2004年に渡伊、翌年からミランとインテルの本拠地サン・シーロで全試合取材。06年のカルチョーポリ・W杯優勝などを経て、08年に帰国。約10年にわたり、『GOAL』の日本での礎を築く。『ワールドサッカーダイジェスト』などに寄稿。現在は大阪在住。

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