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ミラン、セリエの監督解任組で「一人負け」 ELが一発逆転への希望?

中村大晃カルチョ・ライター
2017年12月7日、ELリエカ戦でのガットゥーゾ監督(写真:ロイター/アフロ)

ウディネーゼ、サッスオーロ、ジェノア、カリアリ、ベネヴェント。セリエAのこの5クラブは、今季途中の監督交代で成績を改善することに成功した。一方で、前任者を解任してからも数字が上向いていないのは、ミランだけだ。ヨーロッパリーグ(EL)が、彼らの希望となるのだろうか。

◆監督交代も結果は上向かず

イタリア『ガゼッタ・デッロ・スポルト』は現地時間10日、今季のセリエで指揮官が代わった8クラブのうち、ミランとクロトーネだけが成績を落としていると報じた。新体制になってから1試合あたりの平均勝ち点が以前より下がっているのは、この2クラブしかない(トリノは新体制になって1試合のため考慮せず)。

だが、前任のダヴィデ・ニコラが辞任したクロトーネと違い、ミランはヴィンチェンツォ・モンテッラ前監督を解任してジェンナーロ・ガットゥーゾ監督をプリマヴェーラ(ユース)から昇格させた。「解任組」の中では、「一人負け」の状態だ。

11月27日に就任したガットゥーゾ監督は、開幕14連敗とワースト記録を更新していたベネヴェントと初陣で対戦。白星発進が期待されたが、後半アディショナルタイムにGKのゴールで追いつかれる屈辱の形で引き分け、最下位チームに初勝ち点を献上した。

出だしでつまずいた形の新体制は、リーグ戦の6試合で2勝2分け2敗、勝率33.33%、平均勝ち点1.33という成績。モンテッラ体制は勝率42.86%、平均勝ち点1.43だったため、若干ではあるが、数字が落ちている。

「監督交代組」で最も成功しているウディネーゼと比べると、その違いは明白だ。現役時代にミランでプレーしたマッシモ・オッドが就任してからのウディネーゼは、初戦こそナポリに敗れたが、その後破竹の5連勝。7試合で勝率71.43%、平均勝ち点2.29と絶好調で大きな賛辞を浴びた。

ミランはエラス・ヴェローナに0-3と完敗し、強制合宿後を経て臨んだアタランタ戦でも0-2とホームで敗れた。ただ、その後はインテルとのダービーを制してコッパ・イタリア準決勝に進出し、新年初戦のクロトーネ戦も制すなど、公式戦3試合で2勝1分けとようやく結果が出つつある。

だが、20節を消化して勝ち点28の11位という成績は、首脳陣が最低目標ラインとしていたチャンピオンズリーグ(CL)出場権獲得にはほど遠い。現在4位のラツィオには、勝ち点12差をつけられている。しかも、ミランは消化が1試合多い。

◆CLへの切符につながるEL

このままモチベーションを失えば、大量補強で顔ぶれが大きく変わったチームが空中分解する恐れもある。絶好調のインテルには及ばないが、昨季と比べて上向いたサン・シーロの観客動員も維持することはできないだろう。

そんな最悪の事態を回避するための刺激となり得るのが、グループ首位で決勝トーナメント進出を果たしたELだ。優勝すれば、来季のCLへの切符を得られるからである。

実際、昨季もマンチェスター・ユナイテッドがリーグで苦戦し、ジョゼ・モウリーニョ監督がEL経由のCL出場を狙って見事にその目標を達成している。また、10日付の『コッリエレ・デッロ・スポルト』は、ミランが2006-07シーズンのCLを制したときのことも指摘した。

このシーズンのミランは、カルチョーポリ(不正スキャンダル)の処分で勝ち点マイナスからスタート。インテルが圧倒的な強さを見せていたリーグでは4位に終わったが、予選プレーオフから出場したCLで7度目の欧州制覇を果たしている。

今季の新戦力のひとり、アンドレ・シウバの“外弁慶”ぶりも、ミランがEL優勝を目指す後押しとなるかもしれない。セリエAでいまだノーゴールと苦しんでいるポルトガルの若きストライカーだが、ELでは6試合で6得点とゴールを量産している。

2月15日にファーストレグが行われる決勝トーナメント1回戦で対戦するのは、ブルガリアのルドゴレツ。国内リーグでは首位に立つが、いわゆる「格下」とあり、イタリアのメディアはミラン有利とみている。パオロ・コンドー記者など、CL出場につながるELを重視すべきとの声もある。

◆一発逆転への険しい道

ただし、昨季のマンチェスター・ユナイテッドと違い、現在のミランにELを制覇するだけの戦力はないという見方が少なくないのも事実だ。

イタリア勢だけみても、ELにはナポリ、ラツィオ、アタランタと、リーグでミランを上回るチームたちが残っている。ましてや、アーセナル、アトレティコ・マドリー、ボルシア・ドルトムントといった欧州を代表する強豪がいるのだから、それも当然だろう。

国内での挽回を目指すのか、ELで一発逆転を狙うのか。それとも…10月にヘッジファンドへの負債返済も迫る2018年、ミランの経営陣が選ぶ道が注目される。

カルチョ・ライター

東京都出身。2004年に渡伊、翌年からミランとインテルの本拠地サン・シーロで全試合取材。06年のカルチョーポリ・W杯優勝などを経て、08年に帰国。約10年にわたり、『GOAL』の日本での礎を築く。『ワールドサッカーダイジェスト』などに寄稿。現在は大阪在住。

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