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ミラン首位、強豪は軒並み高評価 総額1350億円超えのセリエ、夏の補強の採点

中村大晃カルチョ・ライター
顔ぶれが大きく変わった17-18季のミラン(写真:ロイター/アフロ)

現地時間8月31日、イタリア・セリエAの夏の移籍市場が終わった。「ネイマール・バブル」で移籍金が跳ね上がったこの夏のマーケット。各クラブのチーム運営はどう評価されただろうか。

9月1日付のイタリア『ガゼッタ・デッロ・スポルト』によると、この夏のセリエAの補強総額は10億3773万ユーロ(約1358億6000万円)と、ついに10億ユーロの大台を突破した。主要リーグではプレミアリーグに次ぐ数字という。

この6年間でセリエの“消費”が最も冷え込んだ2014年の補強総額は、3億3500万ユーロ。それからわずか3年で、補強額は3倍以上に跳ね上がったこととなる。昨年(7億735万ユーロ)と比べるだけでも、今年のバブルぶりは一目瞭然だ。実際、移籍金のクラブレコードを更新したセリエ勢は9クラブにものぼった。

中でも目立ったのは、もちろんミランだ。新経営陣は2億ユーロ(約261億8000万円)以上をつぎ込み、11選手を獲得。レギュラーの大半を入れ替えた。あのルート・フリットとマルコ・ファン・バステンを獲得した1987年ですら、補強額は現在のレートで1610万ユーロ(約21億1000万円)だった。時代が違うとはいえ、投資額と改革の大きさは明らかだ。

特に、4000万ユーロ(約52億4000万円)で王者ユヴェントスからレオナルド・ボヌッチを引き抜いたのは、今夏のセリエのマーケットで最大のサプライズだったと言えるだろう。フランク・ケシーにはすでに大きな賛辞が寄せられている。紆余曲折の末にだが、ジャンルイジ・ドンナルンマと契約延長にこぎ着けたのも大きい。

一方で、ボヌッチを引き抜かれたユーヴェも、ドウグラス・コスタとフェデリコ・ベルナルデスキを獲得。目標だったサイドの強化に動き、中盤にもマッシミリアーノ・アッレグリ監督が望んでいたブレーズ・マテュイディを加えている。市場の終盤に、最終ラインをどこでもこなせるベネディクト・ヘヴェデスを確保したのも、選手層に厚みをもたせるうえで大きかった。

派手な補強ではなかったが、インテルも評価は悪くない。期待されたビッグネームこそ加わらなかったが、ボルハ・バレロやマティアス・ベシノ、ミラン・シュクリニアルといったセリエでの実績を持つ選手たちを獲得。課題のサイド強化でも、ダウベルトとジョアン・カンセロを加え、昨年時点ですでに評価が高かったチームのさらなる充実を実現させている。

南の雄たちも負けていない。ローマはモハメド・サラーとアントニオ・リュディガーを失ったが、マーケット終盤にメディカルチェックでのトラブル発覚からユーヴェ移籍が破談となったパトリック・シックを獲得。マンチェスター・シティから加わったアレクサンダル・コラロフは、元ラツィオの肩書を早くも忘れさせつつある。ラジャ・ナインゴランとケヴィン・ストロートマンとの契約延長にもこぎ着けた。

補強よりも、主力を残留させたことで称賛されているのがナポリだ。ドリース・メルテンスを筆頭に、主軸を全員残すことに成功。市場閉幕を目前にパリ・サンジェルマン移籍が騒がれた守護神ペペ・レイナも、最終的には残留した。「今年こそスクデット」を合言葉に選手たちを団結させ、そこにアダム・ウナスとマリオ・ルイを加えて層に厚みを持たせたクラブへの評価は高い。

そのほか、ドゥバン・サパタに1800万ユーロ(約23億4000万円)、エムバイェ・ニアンに1700万ユーロ(約22億3000万円)を投じたサンプドリアやトリノも高評価。及第点を下回ったのは、ボローニャ、キエーヴォ、クロトーネ、ジェノア、サッスオーロ、ウディネーゼ、ヴェローナの7クラブだ。

『ガゼッタ』による各クラブのマーケット採点は以下のとおりとなっている。

ガゼッタ・デッロ・スポルト紙の17年夏の補強採点
ガゼッタ・デッロ・スポルト紙の17年夏の補強採点

なお、『コッリエレ・デッロ・スポルト』の採点では、ミランが8.5点、ユヴェントスが8点、ナポリが7.5点と、それぞれ『ガゼッタ』を上回る評価。インテル、ラツィオ、ローマは『ガゼッタ』同様に7点だった。同紙で及第点を下回ったのは、キエーヴォ、ジェノア、サッスオーロ、ウディネーゼの4クラブだけだ。

また、『ガゼッタ』による各クラブの支出・収入・収支額はこちらのとおり。

単位は100万ユーロ
単位は100万ユーロ
単位は100万ユーロ
単位は100万ユーロ
単位は100万ユーロ
単位は100万ユーロ

収支を見ると、やはりミランの赤字が目立つ。マルコ・ファッソーネCEOが強調するように現オーナーが経営を続けられるのかが注目される。ただ、少なくともピッチで改革の成果が出始めているのも事実だ。純粋な戦力的観点からも、ミランのチームづくりは高く評価されているのかもしれない。

そのミランを含め、大金を投じた多くのクラブの投資は吉と出るのだろうか、それとも…?

カルチョ・ライター

東京都出身。2004年に渡伊、翌年からミランとインテルの本拠地サン・シーロで全試合取材。06年のカルチョーポリ・W杯優勝などを経て、08年に帰国。約10年にわたり、『GOAL』の日本での礎を築く。『ワールドサッカーダイジェスト』などに寄稿。現在は大阪在住。

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