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寂しい現状に引退決意? 「こんな終わりはトッティにふさわしくない」との声も

中村大晃カルチョ・ライター
4日のコッパ・イタリア準決勝セカンドレグでのトッティ(写真:ロイター/アフロ)

2月からの2カ月半で、わずか242分。4月に入ってからは17分、8分、5分、4分…ローマ主将フランチェスコ・トッティのプレータイムである(アディショナルタイムを除く)。仕事をするには少なすぎる時間と言わざるを得ない。このままユニフォームを脱ぐとしたら、あまりに寂しい終わり方だ。

◆同じアタランタ戦だが…

現地時間15日のセリエA第32節で、ローマはホームでアタランタと1-1で引き分けた。残り6試合で首位ユヴェントスとは勝ち点8差。6連覇と3冠に意気込むユーヴェを逆転しての優勝は難しい。試合終了の笛を聞くやいなや、トッティは足早にロッカールームへ引き揚げた。

ほぼ1年前のアタランタ戦。当時も「契約延長か引退か」と騒がれていたトッティは、78分から途中出場すると、85分に同点弾を奪ってチームを敗戦から救った。続くトリノ戦でも、86分間からの出場にもかかわらず、逆転勝利に導く2得点をマーク。チャンピオンズリーグ(CL)出場権獲得へのけん引役となったカピターノ(主将)は、1年の契約延長を勝ち取った。

◆大事な場面で起用されず

しかし、デビューから25年目の今季、CL予選プレーオフでは出場機会がないままチームが敗退。セリエA第3節サンプドリア戦で1得点1アシストを記録し、第5節クロトーネ戦ではフル出場したが、追い風があったのはここまでだった。

もちろん、9月に40歳となり、フィジカルコンディションの維持は容易でなく、負傷欠場も少なくない。だが、2月に入って試合の重要度が増すにつれ、存在感の低下はより顕著になっていく。

負傷欠場した2試合を除き、グループステージ4試合のうち3試合でフル出場していたヨーロッパリーグでは、決勝トーナメントに入ってから1回戦、2回戦ともにファーストレグで出場機会なし。初戦で4-0と快勝したラウンド32こそ、セカンドレグでフル出場したが、リヨンに屈したラウンド16のセカンドレグでは、チームが絶望の淵にあった84分からの出場に終わった。

コッパ・イタリアでも、2部チェゼーナとの準々決勝ではフル出場。だが、ラツィオとのダービー準決勝では、ファーストレグ(86分)、セカンドレグ(82分)ともに終盤からの出場だった。リーグ戦も、インテルやナポリとの重要な連戦で出番なし。4月のエンポリ戦、ボローニャ戦と、起用されたのはともにチームの勝利が濃厚になってからだ。

15日のアタランタ戦は、久しぶりに勝敗が決していない状況下での出場だったが、いくらワンプレーで試合を変える力を持つトッティとはいえ、わずか4分で結果を残すのは至難の業。ハビエル・サネッティに並ぶセリエA通算615試合出場という記録はつくったが、逆転勝利の可能性がほぼ消滅したとあり、トッティ自身は祝う気になれなかっただろう。

◆トッティにふさわしい結末は?

タイトルの望みが薄くなり、「お披露目」程度の出場が続いているとあってか、『コッリエレ・デッロ・スポルト』は16日、トッティが不本意ながら引退を決意した様子と報じた。現役続行を望み、肉体的に続ける自信も失っていないものの、ルチアーノ・スパレッティ監督が続投せず、新指揮官によほどの説得力がない限りは、望まない決断を下すというのだ。

これがラストシーズンなら、残り試合は引退への「花道」となる。だが、勝ち点2差の3位ナポリとCL本戦出場権を争うローマだけに、スパレッティ監督がトッティを起用するかは分からない。とはいえ、彼ほどの選手がこの状況のままスパイクを脱ぐのは、あまりに寂しい終えんだ。『コッリエレ』のロベルト・マイダ記者は、「今のような終わり方はトッティにふさわしくない」と主張している。

また、引退後の幹部就任が保証されているトッティだが、その役割は明らかになっていない。テクニカル部門の幹部とされるが、具体的には決まっていないとも言われ、引退するにしても、将来への不透明感が残る。

ローマとトッティの物語は、偉大なるカンピオーネにふさわしいエンディングを迎えるのか。現在の契約が満了するまで、すでに2カ月半を切っている。

カルチョ・ライター

東京都出身。2004年に渡伊、翌年からミランとインテルの本拠地サン・シーロで全試合取材。06年のカルチョーポリ・W杯優勝などを経て、08年に帰国。約10年にわたり、『GOAL』の日本での礎を築く。『ワールドサッカーダイジェスト』などに寄稿。現在は大阪在住。

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