Yahoo!ニュース

「不可能はない」? 好調維持のミラン、タイトルへの夢を後押しする5つの要素

中村大晃カルチョ・ライター
ミラン復活の一因と称賛されるモンテッラ監督(写真:ロイター/アフロ)

今季もスクデットはユヴェントスで決まり――そんな声も少なくなかったセリエAだが、第14節を終えて首位ユーヴェのアドバンテージはわずか4ポイントしかない。ローマと並んで王者を追うのが、復活がさけばれているミランだ。ヴィンチェンツォ・モンテッラ監督率いるチームは、開幕前に誰もが予想しなかったタイトル奪還という夢を追い求めることができるだろうか。

開幕から3試合で1勝2敗と、決して良い船出ではなかったミランだが、以降の11試合では8勝2分け1敗と堂々の成績を残している。10月22日の第9節では、ユヴェントスとの直接対決も制した。この結果は、最終勝ち点で並んだ場合に有利に働くかもしれない。

多くの若手、それもイタリア人の若手が開花したこともあり、評価を高める一方のミラン。イタリア『コッリエレ・デッロ・スポルト』は、そんな彼らがスクデットを信じるべき5つの理由を挙げた。

◆情熱

まずは、メンタル面の充実ぶりだ。『コッリエレ』は、現在のミランにはプライドやクラブへの忠誠心、何よりも情熱があると指摘する。その空気が、近年冷め切っていたサン・シーロのスタンドにも“伝染”しているというのだ。また、タイトルを獲得した選手が少ないことはモチベーションにつながる。

◆リーグに集中できる環境

今季のミランは欧州のカップ戦に出場していない。それは、1週間を通じてトレーニングに集中できる環境があるということだ。さらに、負傷や遠征による疲労の蓄積を避けることもできる。CL出場だけが理由ではないが、例えばユヴェントスは負傷に悩まされている。

◆若き力

ジャンルイジ・ドンナルンマを筆頭に、マッティア・デ・シリオやアレッシオ・ロマニョーリ、マヌエル・ロカテッリ、スソ、エムバイェ・ニアン…現在の主力が若手中心であることは、これまでも何度も言われてきた。特にイタリア人の若手がチームの核となるのは、シルヴィオ・ベルルスコーニが強く望んできたことだ。この傾向が続き、「勝利の哲学」になれば、その先にはスクデットという夢が待っているかもしれない。

◆モンテッラ効果

『コッリエレ』によれば、モンテッラ監督が当初求められていたのは、最低でもEL出場権獲得にトライすることだったという。それも、多大なる期待はかけられていなかったそうだ。だが、今ではモンテッラ監督も自らの力に自信を感じている。

◆クラブが一致団結

3年前にオーナーの娘であるバルバラ・ベルルスコーニが商業部門のCEOに就任したミランだが、技術部門のアドリアーノ・ガッリアーニCEOとの「二頭体制」は混乱を招いた。これが近年の不振の一因とも言われている。だが、『コッリエレ』によると、今季のミランはオフィス内でようやく一致団結したという。つまり、「ミランのために」が合言葉になっているというのだ。

もちろん、5連覇中の絶対王者ユヴェントスが圧倒的に有利であることは言うまでもない。対抗馬となるのもローマという意見が大半を占める。上記の5項目だけで「ミランはスクデットの夢を追える」と断じるのは早計だ。

実際、ミランは得点(25)がリーグ5位、失点(18)が同10位タイと、圧倒的な強さを誇っているわけではない。OBのダニエレ・マッサーロも「少し落ち着くべき」と慎重な姿勢を示した。だが、同じOBのマウロ・タソッティは「不可能なことは何もない」とも話している。

気になるのは、12月13日に予定されているクラブ売却取引の完了(クロージング)の雲行きが怪しくなっている点だ。ここまで、モンテッラ監督はクラブに関する喧騒からチームを隔離し、ピッチでの仕事に選手たちを集中させてきた。だが、確実と言われていた身売り話が長引けば、悪影響を及ぼす危険が高まるかもしれない。

カルチョ・ライター

東京都出身。2004年に渡伊、翌年からミランとインテルの本拠地サン・シーロで全試合取材。06年のカルチョーポリ・W杯優勝などを経て、08年に帰国。約10年にわたり、『GOAL』の日本での礎を築く。『ワールドサッカーダイジェスト』などに寄稿。現在は大阪在住。

中村大晃の最近の記事