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中国・青島ビール「放尿事件」で衝撃広がる 「もうビールは飲みたくない」と消費者の声

中島恵ジャーナリスト
中国のSNSで拡散された現場(中国メディアより筆者引用)

中国を代表するブランド、青島(チンタオ)ビールを巡り、中国で衝撃が広がっている。発端となったのは10月19日、中国のSNSに「ある動画」が投稿されたことだった。

それは、青い作業服を着た男性が、大きな原料倉庫と見られるものの中に放尿しているシーンだ。その動画はたちまち拡散され、中国で騒動となった。

放尿した男性を逮捕

19日から20日かけて、中国のSNSには、男性が「放尿」している場面が続々と投稿され、「気持ち悪い」「もう一生、青島ビールは飲みたくない」「中国の食品の安全性が改めて問われる事件だな」などのコメントが相次いだ。

また、「これは同業者がわざとやったことでは?」などの憶測も飛び、微博(ウェイボー)などでも「小便事件」などというワードで注目を集めた。

こうした事態を受けて、青島ビール(山東省青島市)は地元公安に事件を通報。地元市場監督庁が調査チームを立ち上げた。その結果、男性が放尿していたのは原料倉庫ではなく、ある物流運送業者の輸送車両の車庫だったことが判明。さらに、放尿していた男性は同社の作業員ではなく、外部企業の労働者であることがわかった。

青島ビールは同事件が同社の第3工場の一角で発生したことを認め、現場はそのままの状態で保存して、捜査に協力すると発表した。

21日、地元公安が放尿した男性と映像撮影者を逮捕した。今後、どのような経緯でこのような事件が起きたのかが明らかになっていくと思われるが、青島ビールの株価は下落し、動揺はいまだに収まっていない。

中国を代表するビールブランド

中国で青島ビールといえば、最も著名なビールブランドだ。1903年、山東省青島市で製造が始まった。青島は1898年にドイツの租借地となり、ドイツの投資家が製造技術を指導し、ここでビールの製造を始めたのが由来。

青島ビールは中国で20年連続してビール業界の首位に立っており、2008年には北京オリンピックの公式スポンサーになった。世界100ヵ国以上で愛飲されており、世界ブランド500強にも選出されている。

日本では、池光エンタープライズ(東京都港区)が総代理店となっており、同社ホームページには「日本向けに出荷されている青島ビールは、世界の名水のひとつとして名高いラオ山の湧き水を使用し、青島市にある第一工場で醸造される中国国内では飲めない貴重なビール」と紹介されている。

中国で起きた事件は第3工場なので、日本で販売されている青島ビールとは無関係だが、日本の中華料理店などでも青島ビールは人気のドリンクのため、波紋は日本のビールファンの間にも広がっている。

中国ではインフルエンサーなどがアクセス数を無理に増やそうとして、過剰な演出をすることもあり、衝撃的な動画は、日本人の想像を絶するほどのスピードで拡散される。

今回の事件がどのような経緯で起きたのかはまだ不明だが、中国では以前から食品の安全性について敏感な消費者が多いだけに、青島ビールが受けた影響は計り知れない。

ジャーナリスト

なかじま・けい ジャーナリスト。著書は最新刊から順に「中国人が日本を買う理由」「いま中国人は中国をこう見る」(日経プレミアシリーズ)、「中国人のお金の使い道」(PHP研究所)、「中国人は見ている。」、「日本の『中国人』社会」、「なぜ中国人は財布を持たないのか」「中国人の誤解 日本人の誤解」、「中国人エリートは日本人をこう見る」(以上、日経プレミア)、「なぜ中国人は日本のトイレの虜になるのか?」、「中国人エリートは日本をめざす」(以上、中央公論新社)、「『爆買い』後、彼らはどこに向かうのか」、「中国人富裕層はなぜ『日本の老舗』が好きなのか」(以上、プレジデント社)など多数。主に中国などを取材。

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