海外で賞賛 WBC 侍ジャパンが見せた日本人の心 相手への「リスペクト」
WBC準決勝、侍ジャパンは村上宗隆選手のタイムリーヒットで、メキシコ代表に6―5と逆転サヨナラ勝ちし、決勝に進出した。
試合後、歓喜した選手たちだったが、しばらくして三塁線上に一列に整列。脱帽して、観客席にいる日本のファンに丁寧にお辞儀をした。また、一塁側のメキシコのファンにも同じように深々と頭を下げた。
この様子を米メディアはツイッターで「リスペクト以外の何ものでもない」と表現し、賞賛した。
選手たちだけではない。観客席にいた日本のファンは、すぐ隣に立っていたメキシコのファンに気づき、そのファンとハグをして、お互いを労り合ったところが、たまたま中継された。
思えば、今大会は侍ジャパンの選手たちや日本人ファンが見せた相手への「リスペクト」がとくに注目された大会だった。
日本文化が愛される理由
一次リーグ、チェコとの対戦では、佐々木朗希投手がエスカラ選手に死球を与えたが、マウンド上ですぐに脱帽した。高校野球などでは必ず行われるので、日本人は見慣れているが、海外チームの投手からはあまり見られない光景だ。
エスカラ選手が一塁に出て、試しに少し走ってみた際は、観客席にいた日本人ファンから大きな拍手が沸き起こった。これも相手選手への「リスペクト」といえるだろう。
翌朝、佐々木投手はお詫びのため、「ロッテ」のお菓子を持参してチェコ選手を訪問。誠意のある行動はチェコ選手を感激させた。
侍ジャパンが渡米した際、マイアミの空港で大谷翔平選手がチェコの帽子を被っていたこともチェコで大きく報じられた。大谷選手は会見で「対戦相手としてリスペクトを感じたし、すばらしい選手たちだった」と語っていたが、それを体現した形だ。
準々決勝のイタリア戦では、3ランを打った岡本和真選手が、帽子を脱いで観客の声援に応えたが、これも米メディアで報道され、「これが、私たちが日本文化を愛してやまない理由のひとつだ」と紹介されたこともあった。
日本人のすばらしいところ
日本人にとってお辞儀は礼儀のひとつであり、相手への敬意を表したり、お詫びをしたり、挨拶をしたりするときに行うものだ。
日本文化でもあり、私たちは幼い頃から、それを親にしつけられたり、学校で教えられたりして、大人になるまでの間に身につける。中学・高校のクラブ活動などでも、そうしたことを教わる。
日本人にとっては「当たり前」のことで、習慣化しているが、海外から見れば、それは「当たり前」のことではなく、「リスペクト」に値することだと映る。
それはお辞儀や脱帽などの所作だけではない。
大谷選手が会見の際、必ず相手チームのことも褒めたり、認めたり、尊重したりする発言をしていたが、筆者が専門とする中国でも、取材先から「日本人のすばらしいところ」として、「お互いを尊敬、リスペクトしているところ」という話を聞いたことがある。
都内に住む、ある中国人は筆者にこう語っていた。
「がんばっている人は誰でも尊敬、尊重されるのが、日本のすばらしいところだと、以前から思っていました。
日本人はとくに意識していないかもしれませんが、日本では、人と人との間に信頼感がある。それは相手に対するリスペクトから生まれるものだと思います」
その中国人によると、中国では職業や出身地による差別、富裕層の貧困層への差別など、あらゆるところに差別があり、日本人のように、フラットにつき合うことは難しいという。
彼らの目から見ると、日本は公平な社会、思いやりのある国で、それが誰かに敬意を表すことともつながっていると話していた。
アメリカとの決勝戦はどんな戦いになるかわからないが、最後まで、日本人らしく、さわやかに戦ってほしいと思う。