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またゼロコロナの犠牲か?中国貴州省の山奥で、なぜ深夜2時に濃厚接触者を移送する?SNSで批判が続出

中島恵ジャーナリスト
貴州省の山間部(写真は本文と直接関係ありません)(写真:ロイター/アフロ)

9月18日、深夜2時40分ごろ、中国貴州省の省都、貴陽市から山間部の自治州に向かって走行していたバスが横転した。乗車していた47人のうち27人が死亡、20人が負傷するという痛ましい事故が起きた。

乗車していたのは新型コロナウイルスの濃厚接触者で、隔離施設まで200キロ以上の道程を移送される途中だった。

SNSでは「なぜ、わざわざ真夜中に隔離施設に移動する必要があるのか?」「これはコロナのために起きた人災だ」といった批判が噴出しているが、一部の報道は規制されていて閲覧できなかったり、報道はあってもコメント欄が閉じられたりしており、ゼロコロナ政策を推進する当局は神経を尖らせている。

運転手は防護服にゴーグル着用、視界不良か?

現地の報道によると、事故は貴陽市から山間部のケン南プイ族ミャオ族自治州方面に向かう高速道路沿いで起きた。

地元警察によると、事故が起きた原因は調査中でまだ不明とのことだが、9月17日時点で新規感染者が170人以上と増加していた貴陽市では、19日までにゼロコロナを達成する必要に迫られており、1万人以上の濃厚接触者を隔離施設まで移送することになっていた。

そのため、市は17日にバス20台、運転手40人を確保。事故が起きたバスは深夜0時過ぎに出発し、2時間半後に横転した。

報道では、バスの運転手は白い防護服とゴーグルを身に着けていたという。身動きがとりにくいので運転しづらく、また、通気性の悪い防護服で眠気が起きやすい状況だった。

深夜にゴーグルを着けているので視界も悪く、高速道路で運転ミスが生じた可能性がある。

深夜2時~5時まで運転を停止せよという現地の看板(百度新聞の報道より)
深夜2時~5時まで運転を停止せよという現地の看板(百度新聞の報道より)

横転したのは高速道路だが、途中には険しい山間部もある。昼間であっても、注意を要するような地理的環境だった。

死亡した人々の一部は家族で、コロナ感染者の濃厚接触者とされていたが、健康状態にまったく問題はなかった。

中国では2020年、公安により、長距離バスの運転は深夜2~5時まで禁止する通達を出しており、そのことがSNSで拡散すると、「道路交通の通達を無視してまで、深夜に隔離施設に移送する必要が一体どこにあるというのか?」といった批判が噴出した。

「政府のせいで殺されてしまう」「私も隔離施設に移送されたことがあるが、10時間以上、飲まず食わずで死にそうになった。ひどすぎる」といったコメントもあった。

ジャーナリスト

なかじま・けい ジャーナリスト。著書は最新刊から順に「中国人が日本を買う理由」「いま中国人は中国をこう見る」(日経プレミアシリーズ)、「中国人のお金の使い道」(PHP研究所)、「中国人は見ている。」、「日本の『中国人』社会」、「なぜ中国人は財布を持たないのか」「中国人の誤解 日本人の誤解」、「中国人エリートは日本人をこう見る」(以上、日経プレミア)、「なぜ中国人は日本のトイレの虜になるのか?」、「中国人エリートは日本をめざす」(以上、中央公論新社)、「『爆買い』後、彼らはどこに向かうのか」、「中国人富裕層はなぜ『日本の老舗』が好きなのか」(以上、プレジデント社)など多数。主に中国などを取材。

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