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中国でなんと約3億5000万人が観た 香港出身アンディ・ラウのコンサートの驚異的な視聴率

中島恵ジャーナリスト
熱唱するアンディ・ラウ(中国メディア・大楚網より引用)

9月3日、中国のショート動画アプリ、抖音(ドウイン、Douyin)で、香港出身の歌手・俳優のアンディ・ラウ(劉徳華)がコンサートを開催。なんと約3億5000万人が視聴し、中国のオンラインコンサートの最多視聴記録を塗り替えたことがわかった。

中高年の女性を中心に熱狂

中国メディアの報道によると、9月3日、夜7時55分、抖音(ドウイン)上にはすでに3000万人が待機しており、午後8時のコンサート(演唱会)開始から10分後には約6000万人が視聴。30分後に約1億人を突破し、コンサートが終了する午後10時ごろには3億5000万人が視聴していたという。

中国の人口は約14億人なので、視聴者が中国国内だけだとして換算すると、約4人に1人の中国人が視聴した計算になる。

コンサート終了後から翌朝にかけて、中国の検索サイト「百度」の検索ランキングで上位に入り、SNS上では「永遠の男神!」「彼は私の青春そのものだ!」(曲名にかけて)「華仔(ファーザイ=アンディ・ラウの中国語の愛称)、私もあなたを1万年愛しているよ」などの言葉が画面上に飛び交った。

視聴したのは主にアンディ・ラウの全盛期にファンだったとされる50代前後の中高年女性が多いと見られているが、20~30代の若者や、60代以上の女性も多かったと中国メディアでは分析されている。

スーツに身を包んで登場したアンディは冒頭「今日は直接、皆さんの顔を見ることはできないが、皆さんとともにこの時間を共有できてうれしい」とあいさつ。

自身のヒット曲である「17歳」「愛你一万年」「忘情水」「氷雨」などを次々と熱唱した。途中で人気司会者の李好氏とのトークも盛り上がり、2人で抱擁する場面もあった。

中国のSNS画面より筆者引用
中国のSNS画面より筆者引用

抖音の画面上には視聴者が次々と「感動した!」「永遠のアイドル」「若い頃の思い出が蘇ってきた」「全能のアイドル、劉徳華」「60代になっても大好きだよ」などのコメントがたくさんのハートマークとともに書き込まれた。

90年代から第一線で活躍

アンディ・ラウといえば、1980年代後半以降、主に香港を中心に活躍した歌手であり、俳優としても名高い。とくに活躍したのは1990年代で、香港映画『欲望の翼』などを始め、大ヒット作の『インファナル・アフェア』(無間道)、中国映画の『LOVERS』(十面埋伏)、最近では『唐人街探偵 東京MISSION』などにも出演している。

90年代、香港で張学友(ジャッキー・チュン)、郭富城(アーロン・クオック)、黎明(レオン・ライ)の3人とともに「四大天王」と呼ばれ、香港だけでなく、当時、香港への憧れが強かった中国人女性や、日本人女性の間でも非常に人気が高かった。

かつて人気を博した香港の四大天王。アンディは一番右(中国メディア・猫目専業版より引用)
かつて人気を博した香港の四大天王。アンディは一番右(中国メディア・猫目専業版より引用)

アンディは現在も歌手活動を始め、作詞やプロデュース業、俳優も行うなどマルチな活躍をしているが、中国では2021年1月に抖音のアカウントを開設。これまでに約7600万人のフォロワーを獲得していた。

同2月には自身の主演映画のPRのため、初のライブ配信を行ったところ、配信開始60分後に約3000万人が視聴したことが注目されたが、今回の3億5000万人の視聴者数には中国メディアも驚き、多数の記事で「さすが、大御所だ」と取り上げられた。

抖音は2016年に中国でバイトダンス社によってリリースされており、日本ではTikTok(ティックトック)として知られている。ショート動画やライブ配信などを行うアプリとして急速に利用者が増えており、2021年、中国で1日当たりのアクティブユーザーは6億人を超えた。

昨今は多数の著名芸能人も抖音のアプリ上で次々とオンラインコンサートを開催している。中国にはほかにも快手(Kuaishou)などいくつものショート動画アプリがあり、ライブ配信でしのぎを削っているだけに、3億5000万人が視聴したアンディのコンサートは「驚異的だ」として波紋を呼んでいる。

ジャーナリスト

なかじま・けい ジャーナリスト。著書は最新刊から順に「中国人が日本を買う理由」「いま中国人は中国をこう見る」(日経プレミアシリーズ)、「中国人のお金の使い道」(PHP研究所)、「中国人は見ている。」、「日本の『中国人』社会」、「なぜ中国人は財布を持たないのか」「中国人の誤解 日本人の誤解」、「中国人エリートは日本人をこう見る」(以上、日経プレミア)、「なぜ中国人は日本のトイレの虜になるのか?」、「中国人エリートは日本をめざす」(以上、中央公論新社)、「『爆買い』後、彼らはどこに向かうのか」、「中国人富裕層はなぜ『日本の老舗』が好きなのか」(以上、プレジデント社)など多数。主に中国などを取材。

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